Close yet far

月織

読切(脚本)

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〇カフェのレジ
  近所のカフェで働く様になって半年。
  だいぶ仕事にも慣れてきた。それに、
彼「こんにちは」
「今日も来てくださったんですね!」
  顔見知りの常連さんも出来た。
  と言っても、彼の名前は知らないけど。
彼「はい、ここのカフェ美味しいんで! アイスティーとスコーンお願いします」
「かしこまりました! お会計750円になります」
  彼とカフェで話すようになって半年。
  名前も職業も年齢も知らないのに、
  いつの間にか心惹かれてしまっていた。
彼「はい、これで」
  トレーに小銭が置かれる。
「750円丁度お預かりいたします こちらレシートでございます 隣にずれてお待ち下さいませ!」
彼「ありがとう、春音ちゃん」
  彼が私の名前を呼ぶ。
  初めて名前を呼ばれた時はびっくりしたっけ。
  「名前、なんで知ってるの?」
  私が尋ねると、彼は自分の胸の辺りをトントンしながら「名札」と言って笑った
  そういえば名札付けてたんだ、なんて
  恥ずかしくなったのが思い出される。
  ちらっと目を見やると、
  スマホを触りながら商品を待つ彼の姿が。
  彼の一挙手一投足は、
  私の胸を高鳴らせるのには充分なのだ。
(次はいつ会えるかな)
  私は既にそんなことを考えていた。

〇遊園地の広場
  ある日のこと、私は1人で遊園地に来ていた。1人でなんて寂しい人だと思われるかもしれないけれど寧ろ好都合。なぜなら、
  モフリンが目当てだから!
「今日も来たよ!」
  私がそう言いながら駆け寄ると、
  モフリンは嬉しそうに身体を揺らす。
  定期的に私はモフリンに会いに行く。友達にはあんまり可愛くないって言われちゃったけど・・・・・・。
  いつ来てもモフリンの周りにはあまり人が居ない。そのお陰で時間を気にせず話せるから嬉しくはあるんだけどね。
「モフリンと一緒に色んな所に行けたらな。 ここでしか会えないの、ちょっと寂しい」
  なんて言ってみたらモフリンは
  申し訳なさそうに掌を合わせた。
  その仕草も愛おしい。
「ごめんね、こんなこと言って。 私何回でも会いに来るからね! だから、これからもずっと会ってくれる?」
  モフリンはブンブンと身体を揺らした。
「嬉しい、ありがとう!あっ、そうだ! モフリンにプレゼント持ってきたんだった」
  私は鞄の中を漁る。
「はいっ、赤いバンダナだよ!」
  そう言ってバンダナを見せた後、
  私はモフリンの右腕にバンダナを巻いた
  モフリンはしばらくバンダナを見つめていたけれど、やがて嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる。
(持ってきて良かった〜)
  モフリンが喜んでくれて嬉しくなっていたその時、園内に正午を知らせる音楽が流れ始めた。
「あっ、モフリンお散歩の時間か。 行ってらっしゃい、また後で来るね!」
  モフリンは12時になると決まってお散歩しにバックヤードへ戻っていくのだ。決して休憩などではない。
  私に両手で大きく手を振ると
  そのままモフリンは去っていった。
(さて、ご飯でも食べに行こうかな〜)
  私はその場を後にし、
  園内のレストランへと足を運ぶ事にした

〇メリーゴーランド
  お昼ご飯を食べ終わった私はモフリンが帰ってくる迄の時間をどう過ごそうか悩んでいた。
(乗り物にでも乗ろうかな? ん〜、でもショーを観に行くのもいいな)
  と、その時だった。
「ひゃっ!」
  死角から出てきた人とぶつかってしまったのだ
「す、すみません!大丈夫ですか?」
  慌てて声をかける。けれど
  相手の顔を見るや否や私は驚いてしまった
「あっ・・・・・・!」
彼「春音さん?」
  なんと、そこに居たのは
  いつもカフェに足を運んでくれる彼だったのだ
「ど、どうしてここに? あっ、遊びに来られたんですか?」
彼「いや、遊びに来た訳じゃないんです」
「えっ、じゃあどうして?」
  そう言いかけた私は、彼の手に見覚えのある赤いバンダナが握られているのを見つけた。
彼「あっ、いや、これは・・・・・・」
  慌てて彼はバンダナを隠す。
  しかしその後彼は観念したように
  話し出した。
彼「・・・・・・実は僕、ここでアルバイトしてて。その、モフリンの中に入ってるの僕なんです」
「えっ!?」
  ということは、さっき話をしていたモフリンは彼、ってこと?
彼「いつも、来てくださいますよね。あんまりモフリンに話しかけてくれる人居ないんで、覚えちゃって」
「さっきだけじゃなくていつもモフリンの中に入ってらっしゃったんですか?」
彼「実はそうなんです」
  なんと、ずっとモフリンへの愛を
  見られていたなんて、恥ずかしい・・・・・・。
  私があたふたしていると、彼が話し出した。
彼「あの僕、彰斗って言います」
(彰斗さん、素敵な名前)
彼「その・・・・・・こんなこと言うつもりなかったんですけど。今逃したら、後悔すると思うんで」
  彰斗さんはしばらくモジモジしていたが、
  やがて真剣な表情で私の目を捉えた。
彼「僕、春音さんの事が好きです」
「へ?」
  突然の事に思考が停止する。
彼「いきなりすみません。 でも、カフェと遊園地でいつも会ってる内に 好きになってしまってました」
彼「得体の知れない奴かもしれないですけど、 良かったらお友達からどう、ですか?」
  そんなの決まってる。
「喜んでっ」
彼「本当!ありがとう」
  そうやって笑う彼に
  また1つきゅんとした。

コメント

  • 中の人…などいない!
    でもこんな形で会えて、伝えられて、いいことづくめですね!
    そして好きなものが二つも手に入った忘れられない日になりそうです!

  • 王道の恋愛もので大好きです。春音はカフェや遊園地でいろんな表情を彼に見せていて、そしてそれを好きといってくれる彼。読んでいて笑顔になりますね!

  • モフモフの中の人と赤いバンダナきっかけで進展していく恋、きづかないうちに実は何度も会っていて愛を伝えていたりだとか、すべてが神展開で読んでいてワクワクしました。好きです、こういうの。

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