ターゲットは超絶ラッキー男!?

HALPIN

凄腕アサシンVSラッキーマン(脚本)

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〇街の全景

〇渋滞した高速道路
桐畑雪乃「・・・」
桐畑雪乃「見つけた!」
桐畑雪乃「あいつが獄堂会の若頭ね」
  ズギュン

〇走行する車内
工藤祐二「・・・」
  ドンッ・・・
工藤祐二「ぐあっ!!」
須田人志「兄貴っ!」
工藤祐二「・・・」

〇タワーマンション
エージェント「・・・」

〇空きフロア
エージェント「おはよう」
桐畑雪乃「何しに来たの?」
桐畑雪乃「仕事はちゃんとやり遂げたでしょ」
エージェント「ああ、よくやった」
桐畑雪乃「だったら」
エージェント「次の仕事だ」
桐畑雪乃「だって、昨日の今日で・・・」
エージェント「これを見ろ!」
桐畑雪乃「この男は?」
エージェント「瀬川だ。探偵事務所をかまえている」
桐畑雪乃「こいつを殺せって?」
エージェント「話が早くて助かる」
桐畑雪乃「私立探偵ごときに私の出番ってわけ?」
桐畑雪乃「組織も焼きが回ったものね」
エージェント「こいつは運がいい男でな」
桐畑雪乃「はぁ?」
エージェント「三人もヒットマンを送り込んだが」
エージェント「ずっと命拾いし続けているんだ」
桐畑雪乃「そいつらにもう一度やらせたら?」
エージェント「それは無理だな」
桐畑雪乃「どうして?」
エージェント「役立たずどもは始末した!」
桐畑雪乃「・・・」
エージェント「だが、君にならできるはずだ」
桐畑雪乃「・・・分かった。 その代わり、これが終わったら」
桐畑雪乃「組織を抜けさせてくれる?」
エージェント「考えておこう」
桐畑雪乃「・・・」
  組織を抜ける
  それが叶わぬ望みであることは
  もちろん雪乃にも分かっていた

〇駅前広場
  雪乃は瀬川の事務所近くの道で座り込み
  彼が通りがかるのを待った
???「大丈夫?」
???「よかったらこれを」
桐畑雪乃「あなたは?」
瀬川隼太「瀬川って言います。よろしくね」
桐畑雪乃「どうも」
瀬川隼太「うわっ、ずぶ濡れだ!」
桐畑雪乃「・・・」
瀬川隼太「うちの事務所に来ますか?」
瀬川隼太「そうだ。それがいい!!」
瀬川隼太「シャワーもあるし」
瀬川隼太「着替えもありますよ!」
瀬川隼太「変装用だけど・・・」
桐畑雪乃「変装用?」
瀬川隼太「いえいえ」
瀬川隼太「とにかく来てください」
瀬川隼太「すぐ近くなんで」
桐畑雪乃「でも」
瀬川隼太「変なことなんて考えてないですから」
桐畑雪乃「・・・」
瀬川隼太「こっちです」
桐畑雪乃(調査通りのお人好しね)
桐畑雪乃(上手く引っかかってくれたわ)

〇オフィスビル
瀬川隼太「ここだよ」
  瀬川はビルを指さした
  瀬川探偵事務所と看板が出ている
瀬川隼太「驚いた?」
瀬川隼太「じつは探偵事務所なんだ」
桐畑雪乃「えっ!」
桐畑雪乃「探偵さんなんですか?」
瀬川隼太「こう見えて、いちおう所長だよ」
桐畑雪乃(知ってるけどね)

〇応接室
瀬川隼太「奥にシャワーがあるから温まってきなよ」
桐畑雪乃「ありがとうございます」
瀬川隼太「タオルはこれね」
瀬川隼太「服は壁の棚に入ってるの適当に着て!」
瀬川隼太「心配しなくても、ちゃんとクリーニング してあるからキレイだよ」
桐畑雪乃「はい」

〇異世界のオフィス
瀬川隼太「僕も今のうちに着替えよう」
瀬川隼太(動きやすい服装がいいよな)
瀬川隼太(こんなもんか)

〇白いバスルーム
桐畑雪乃(シャワーの音はさせておかないとね)
  キュッキュ
  シャアァァ・・・
桐畑雪乃(ちゃんと準備しておかないと)
桐畑雪乃「昼のオフィス街だし・・・」
桐畑雪乃「これは最後の手段ね 服の下に隠しておいて・・・」
桐畑雪乃「これと・・・」

〇応接室
瀬川隼太「・・・」
桐畑雪乃「シャワーありがとうございました」
瀬川隼太「温まったかい?」
瀬川隼太「カワイイ服を選んだね!」
桐畑雪乃「変装ってもっと地味だと思ってました」
瀬川隼太「質素な服だけじゃ変装できない」
瀬川隼太「TPOにあった服装じゃないと かえって目立っちゃうからね」
桐畑雪乃「勉強になります」
瀬川隼太「社会じゃ役に立たないかもしれないけどね」
瀬川隼太「そうだ。温かい物でも用意しよう」
瀬川隼太「コーヒーは飲めるかい?」
桐畑雪乃「給湯室の場所を教えてください」
桐畑雪乃「私が用意します!」
瀬川隼太「君は座っててよ」
桐畑雪乃「いろいろお世話になって」
桐畑雪乃「お茶くらい淹れさせてください」
瀬川隼太「そうかい?」
瀬川隼太「なら、お願いするよ」
桐畑雪乃「はい」

〇システムキッチン
桐畑雪乃「ここに・・・」
桐畑雪乃「・・・」

〇応接室
瀬川隼太「・・・」
桐畑雪乃「どうぞ!」
瀬川隼太「ありがとう」
瀬川隼太「って、うわぁ!」
  ガシャーン
桐畑雪乃「きゃっ!」
瀬川隼太「かからなかった?」
桐畑雪乃「私は平気です」
瀬川隼太「手が滑って」
瀬川隼太「ごめんよ、せっかく・・・」
桐畑雪乃「何か拭くもの」
瀬川隼太「自分でするよ」
桐畑雪乃(くっ、運のいいやつ)
桐畑雪乃(次は、どうしたら?)
桐畑雪乃(・・・)
桐畑雪乃「あっ、スカートに飛んじゃってる」
桐畑雪乃「洗ってきます」
瀬川隼太「いいよ別に」
桐畑雪乃「いえ。今ならまだ」

〇白いバスルーム
桐畑雪乃(この毒を塗った刃で)
桐畑雪乃「今度こそ!」

〇システムキッチン
  瀬川はカップを洗っている
  背後の雪乃には気づいていないようだ
桐畑雪乃「今だ!」
瀬川隼太「おっと」
  ふいに瀬川がよろけ
  ナイフの切っ先は虚しく空を切った
瀬川隼太「あっ、いたんだ」
桐畑雪乃「はい」
瀬川隼太「どうしたの?」

〇応接室
桐畑雪乃(どうして殺せないの?)
桐畑雪乃(こんなに、すきだらけなのに)
エージェント「心してかかれ」
エージェント「やつは恐ろしく運のいい男だ」
桐畑雪乃「・・・」
桐畑雪乃「こうなったら」
瀬川隼太「あっ、靴紐が!」
  ズギューン
桐畑雪乃「なんで!」
瀬川隼太「んっ?」
瀬川隼太「どうして銃を向けるんだい?」
桐畑雪乃「さっきから何度も殺そうとしてるのに!」
瀬川隼太「知ってるよ」
桐畑雪乃「えっ」
瀬川隼太「君は桐畑雪乃 ここいらに根を張る組織の殺し屋」
瀬川隼太「だろ?」
桐畑雪乃「バレてたのね」
桐畑雪乃「なら、なおのこと!」
瀬川隼太「もうよせ!」
桐畑雪乃「くっ」
瀬川隼太「銃は没収だ! 毒とか、他の凶器も出すんだ」

〇異世界のオフィス
桐畑雪乃「どうするつもり?」
瀬川隼太「何もしないさ」
桐畑雪乃「・・・」
瀬川隼太「”ノロマのハヤタ”って覚えてない?」
桐畑雪乃「ハヤタ?」
瀬川隼太「これなら分かるかな?」
桐畑雪乃「あっ!」

〇広い公園
瀬川隼太(幼少期)「・・・」
瀬川隼太(幼少期)「ハヤタのくせに」
いじめっ子「お前チビでノロマだよな」
桐畑雪乃(幼少期)「やめろよ!」
桐畑雪乃(幼少期)「弱い者イジメなんて!」
いじめっ子「なんだ!」
桐畑雪乃(幼少期)「やんのか?」
  瀬川と雪乃は幼馴染だった
桐畑雪乃(幼少期)「もう大丈夫だぞ!」
  小柄で非力だった瀬川はよくイジメられた
  だが、雪乃がそのたびに助けてくれた

〇異世界のオフィス
瀬川隼太「昔はよく遊んだよね」
桐畑雪乃「ハヤタくん?」
瀬川隼太「驚いたよ。君がこんな・・・」
桐畑雪乃「仕方なかったの」
瀬川隼太「凄腕の暗殺者なんだってね」
瀬川隼太「でも、そろそろ潮時だ」
瀬川隼太「辞めたほうがいい」
桐畑雪乃「私だってそうしたい!」
桐畑雪乃「でも、無理なの」
桐畑雪乃「私は組織を抜けられない」
  いろいろなことを知り過ぎてしまった雪乃は、組織を抜ければ確実に殺される
瀬川隼太「大丈夫。僕がなんとかする」
桐畑雪乃「無理よ」
瀬川隼太「できるさ」
瀬川隼太「あの日、突然いなくなった君を探すため 僕は探偵になった」
瀬川隼太「そして、強くなったんだ!」
桐畑雪乃「だとしても・・・」
瀬川隼太「あんな組織くらい思いのままさ」
桐畑雪乃「・・・」
瀬川隼太「君が僕を殺しに来たのも偶然じゃない」
瀬川隼太「ヒットマンたちを返り討ちにして 君が派遣されるように仕組んだんだ」
瀬川隼太「組織にいる君を放っておけなかったから」
桐畑雪乃「・・・」
瀬川隼太「僕なら、組織をつぶすことだってできる」
桐畑雪乃「本当に?」
瀬川隼太「ああ」
瀬川隼太「昔はいっぱい助けてもらった」
瀬川隼太「今度は僕が助ける番だ!!」
桐畑雪乃「・・・」
瀬川隼太「いままで怖かったよね?」
瀬川隼太「でも、もう安心していい」
瀬川隼太「僕が君を守るから」
桐畑雪乃「・・・」
桐畑雪乃「・・・分かった。信じてみる──」
瀬川隼太「約束する」
瀬川隼太「僕は必ず、君を守り抜くよ!」

コメント

  • 全てを知っていてこんな態度されてたら、自分なら思い返して恥ずかしくなってしまいそうです笑
    でも一人じゃなんともならない問題なら二人でなんとかしちゃえばいいんですよね!簡単に言えば!

  • 超絶強運なのか超絶危機管理能力なのか、どちらかと思いながら読んでしまいました。それにしても、暗殺屋とターゲットが幼馴染って狭い世界ですねw

  • 凄腕の彼女でもやはり標的を殺すことができず被害者に成り代わっていくのかと思っていたら、壮大なストーリーに展開していって圧巻でした。愛、ってこういうことをいうんでしょうね。

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