読切(脚本)
〇清潔な浴室
事件発生
え、なんで私はここにいるんだろう
なんで、見知った男の家でシャワーを浴びているんだろう
ことは遡ること30分前――
私はバイトを終えて帰宅するところだった
〇店の入口
女「はあ。バイト疲れた〜〜 今日はこのまま映画館に行こうかな 見たい新作あるし」
???「待って!!」
女「あ、お疲れ。 走ってきたの?」
男「うん。さっきシフト終わったんだ 後ろ姿が見えたから」
女「だからって走らなくてもいいのに ・・・息切れてるじゃん」
男「質問したいことがあって 今日さ・・・」
男「え、雨? 今ポツッてきた」
〇店の入口
女「・・・どんどん強くなるね ゲリラかな どうしよ、折り畳み傘持ってないよ」
男「あのさ、 俺の家ここからすぐだけど、 来る?」
男「俺はちょっと走れば帰れるけど、 お前が一人になっちゃうし、 どんどん寒くなるし」
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
いきなり来たのに、
綺麗に整理整頓されてるな
もしかしてだけど、
こういうの慣れてるのかな?
その・・・
女の子を「連れ込む」ってこと
男「ごめん、先に シャワー浴びちゃった」
男「どうした?」
女「な、なんでもない!!」
男「よかったらシャワーどうぞ ゆっくり体温めて」
女「あ、あああありがとう!! お借りします!!」
〇清潔な浴室
ってことで冒頭に戻る
どうしよう
いきなり緊張してきた
友達とはいえ、
家でふたりきりなんて
しかも、あんな無防備な格好
女「あいつって、案外筋肉あるんだな」
だめだめだめ、平常心平常心。
女「あ、このシャンプー 女性向けの高級シャンプーだ」
もしかして、
ここで女の人が髪を洗ったことが
あるのかな
バイト内でも
「あいつはチャラい」って
先輩が言ってたな・・・・・・
誰とでも仲良くなれる性格が
いいところだって思ってたけど
あいつって私のこと
どう思ってるのかな?
私は、少しいいなって思ってたんだけどな・・・
〇白いバスルーム
「そこのタオルとパジャマ、適当に使って」
ぴったりの、
ピンク色のパジャマ。
なんでこんなのが家にあるんだろう
女「これが彼の洗面所か こ、これは・・・?」
私は見つけてしまった
爽やかなグリーンの歯ブラシの隣に、
威圧感を放つピンクの歯ブラシ──
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
男「コーヒー飲む?」
女「あ、ありがとう ・・・美味しい!」
男「でしょ? 最近バリスタの勉強始めたから、 家でも淹れてるんだ」
女「ねえ、ここって一人暮らし?」
男「そうだよ。美味しいコーヒー入れても 飲んでくれる人がいないから 寂しいよ」
だったらなんで歯ブラシを?
男「DVDつけようか?」
もし本当にチャラかったら、
いい雰囲気の映画をつけて、
そのまま・・・のつもりかもしれない
女「全然!大丈夫! DVD嫌いだし!!」
男「へー・・・」
女「あのさ・・・みんなにこういうことやってるの?」
男「みんなって?」
女「私、家に連れ込める女だと思った?」
男「違うよ 雨がひどかったから雨宿りしてるだけじゃん」
男「それに・・・・・・」
男「好きなやつしか家にあげねーよ」
女「だったら、 このパジャマはなに? 歯ブラシはなに?」
男「ああ、あれ?妹の!」
女「妹がいるんだ」
男「そう、17歳! 時々泊まりに来るんだ」
男「本当に可愛いやつなんだ この前は一緒に原宿に行ってクレープ食べた」
男「あいつ、 「お兄ちゃん大好き」ってうるさいから 色々買ってやってるんだ」
な、なんだ。よかった
でも、こいつめちゃめちゃシスコンだな
男「俺も、さっき質問したかったことの 続き・・・いい?」
女「あ、質問あるって言ってたよね 雨に遮られちゃったけど なに?」
男「俺のことどう思ってる?」
女「え・・・ 大切な仲間だと思ってるよ」
男「好きか嫌いかで言って欲しいんだけど」
女「好きか嫌いかで言ったら、好き」
男「めっちゃ仕方なく言ってるじゃん」
女「だってそっちがそう言えって」
男「言ったけどさ 俺は、俺は今日すごく・・・」
男「嫌だった」
女「え?」
男「今日、客がお前に 連絡先渡したの、見てたんだ」
・・・・・・?
あ、確かに、トレーにLINE I Dが書いてある紙が載ってた
女「大丈夫だよ」
男「付き合うの?」
女「普通に、捨てた 知らない人怖いし」
男「よかった」
女「嬉しい?」
男「え、あ、えーっと バイト先でカップルができると気まずいから嫌だったんだよ!!!!」
〇住宅街の道
気づくと、
雨が上がって空には虹がかかっていた
私の不安も、
雨と共にどこかに消えていった
それにーーあいつのことにも少し、
近づけた気がする
女「おじゃましました」
男「もう、傘忘れるなよ!!」
突然のお家訪問でも異性に手慣れた対応をされると、ちょっと色々と考えてしまいますよね!主人公のそういった感情が精緻に描かれていて、物語に引き込まれました。
雨のある描写って、よみながらとても落ち着くというか、より想像力が働きます。ストーリーがこの雨によって強弱がついてとても読後感がいいです。二人共なにか決定的な言葉を発したわけではないけど、この先の展開がわかるような気がします。
彼の部屋に招かれて女物の品物があれば普通は彼女がいると思うものですよね。雨が上がって彼は少し晴れやかになっかな?雨に感謝しましょう。