読切(脚本)
〇大学の広場
上村理子「美里はさ、どんな人がタイプなの?」
田淵美里「イケメン以外」
上村理子「これはまた大きくでたね」
田淵美里「イケメンにはもう懲りたの」
田淵美里「私は普通の顔の人と普通の恋愛をして、普通の家庭を築きたいの」
上村理子(こりゃ傷が深いな・・・)
「ねえ、これからカフェ行かない? 駅前に可愛いパンケーキのお店できたの!」
「ちょっと、私が先に誘ってたんだけど?」
向こうで女の子達が群がってなにやら騒いでいる
上村理子「なんだろ、あの集まり」
橘隼人「俺、甘いの苦手なんだよね」
上村理子「ん?真ん中にいるのってサークルの後輩くん、橘隼人じゃない?」
上村理子「いやー、さすがイケメン 人気者だねぇ ね、美里」
上村理子「あれ?美里?」
いつの間にか美里の姿はない
女の子達をかき分けて橘が理子に駆け寄る
橘隼人「上村先輩、美里先輩は?」
上村理子「うん、さっきまでいたんだけどね 第二校舎の方じゃないかな」
橘隼人「くそっ、逃げられたか・・・ ありがとうございます」
上村理子(かんばれ橘!)
〇大学
橘隼人「ちょ・・・、先輩、はぁっ、 なんで、逃げるんですかっ、」
橘隼人「ムダに足はえーし・・・!」
田淵美里「言ったでしょ、ゼェッ、ゼェッ 私、イケメンがダメなんだって・・・!! イケメン恐怖症なの!」
橘隼人「俺だってイケメンに生まれたくて生まれた訳じゃないです!」
田淵美里(自分で言ったよ、この子・・・)
橘隼人「先輩が好きなんです! 俺と付き合って下さい」
田淵美里「イケメンとは付き合わないから!」
田淵美里「女の嫉妬とか陰口にもみくちゃにされるわ、どこぞの女どもが湧いてくるわ、全く安心できないし!」
田淵美里「もううんざりなの!」
橘隼人「俺、先輩にそんな思いさせません」
田淵美里「あんたがどう思おうと周りは放っておかないの」
橘隼人「分かりました・・・」
田淵美里(やっとあきらめたか)
橘隼人「じゃ、無人島へ行きましょう! それならいいでしょ?」
田淵美里「なんでそうなる!? いやいや、よくないから、私が!」
橘隼人「そんな・・・ 先輩、好きなんです ね、お願い」
彼が物欲しそうな目で覗き込んでくる
田淵美里(うっ、イケメンの魔力が・・・ いかん、気をしっかり持て! 前回と同じ轍を踏むつもりか田淵美里!)
田淵美里「そんな顔しても無駄だから!」
〇説明会場(モニター無し)
今日はクリスマスイブ──
田淵美里「イブの日に備品整理って・・・ 私、悲しくなってきた」
橘隼人「俺は先輩と一緒にいられて嬉しいです」
上村理子「あれ〜?備品が足りないね」
上村理子「美里、悪いんだけど橘くんと買い出し行ってきてくんない?」
田淵美里「えっ!わたしが!? 橘と!?」
橘隼人「はいっ!行ってきます!!」
〇繁華な通り
橘隼人「先輩! これ見て!可愛くない?」
無邪気に笑う彼の姿は確かに輝いて見える
でも、私は・・・
橘隼人「イブの日にこうしてるとデートみたいですね」
田淵美里「デートじゃないから! 備品の買い出しだから!」
橘隼人「・・・わかってますよ」
彼はむくれたようにそっぽを向いた
田淵美里「もうそろそろ帰ろっか 買い出しも終わったし」
橘隼人「あーあ、あっという間だったなぁ 時間が止まればいいのに」
田淵美里「何言ってんの 早く行くよ!」
橘隼人「は〜い」
「見てあの人、カッコよくない?」
「ほんとだ、あれ彼女かな」
先程から感じる好奇の視線
そう、この感じがめんどくさかったんだよね
橘隼人「先輩、今なに考えてた?」
田淵美里「え?」
彼が顔を近づけ目を覗き込んでくる
橘隼人「よそ見してないで、俺のこと見てよ」
田淵美里「ちょっ、何言ってんの、 顔、近いっ・・・!」
橘隼人「先輩が周りばっか気にしてるから」
田淵美里「当然でしょ! イケメンと歩いてたらそうなんの! こういうのが疲れるから嫌なんだよ」
橘隼人「それ、先輩が気にしてるだけじゃないですか」
田淵美里「なによ・・・ あんたに私の気持ちなんてわからない!」
私は思わず走り出していた
〇イルミネーションのある通り
はぁ・・・
やってしまった・・・
わかってる
一番気にしてるのは私だってことは
彼から言われたことは図星で、だからこそカッとなってしまったってことも
田淵美里「あ、マフラーがない」
どこかで落としたのだろうか
田淵美里「あれお気に入りだったのになぁ」
イルミネーションで彩られた繁華街は幸せそうなカップルで賑わっている
田淵美里「私何やってんだろ」
自己嫌悪に視線を落としたその時だった
「あれ?田淵さんじゃない?」
名前を呼ばれ思わず振り返り──
後悔した
そこにいたのは元同級生と元カレだった
元同級生「え!ほら、やっぱりそうじゃん! めっちゃ久しぶりー!」
元カレ「美里・・・ 久しぶり、」
田淵美里「あ、うん・・・ 久しぶり・・・」
元同級生「ここで何してたの? あ、もしかして誰かと待ち合わせ?」
田淵美里「・・・」
田淵美里「ちょっと買い物に来てただけ」
元同級生「あっ、ごめん そうなんだ〜」
あぁ、ほんと今日はツイてない
「美里」
えっ・・・
この声は
橘隼人「ごめん、待った? ほら、マフラー忘れてたぞ 風邪ひくだろ」
彼が優しく私の首にマフラーを巻く
橘隼人「美里の知り合いですか?」
元同級生「あ・・・えぇ、まぁ あなたは?」
橘隼人「初めまして、美里の彼氏です」
元同級生「そ、そうなのね」
元カレ「・・・」
橘隼人「じゃ、俺たちはこれで」
そういうと彼は私の手を握り、歩き出した
〇川沿いの公園
橘隼人「あーあ、美里センパイの彼氏役、幸せだったなぁ」
田淵美里「じゃ、ホントの彼氏になる?」
橘隼人「え?」
ちゅっ
驚いて顔を上げた彼の頬にキスをする
橘隼人「ちょっ・・・先輩っ・・・ ほんとずるい・・・」
街頭に照らされた彼の顔は真っ赤だ
橘隼人「・・・今の言葉マジですか? 冗談だったらほんとへこみますよ」
田淵美里「私がこんなこと冗談で言うと思う?」
橘隼人「先輩・・・ これ、夢じゃないですよね・・・?」
田淵美里「バカ言ってないで、ほら行くよ! 初デート!」
橘隼人「あ、待って」
手を引かれ、振り返る
ちゅっ
私の唇に彼の唇が重なる
橘隼人「お返しです」
イケメン男子はお断りです!
彼以外は、ね
イケメンで素直で裏表なくストレートで、しかもポジティブって最高ですね。しかも、偶然彼らとばったり会ったことも手伝って急展開しましたね。特に「彼以外は、」って言うのが可愛かったです。
とてもかわいい二人にドキドキしました。
イケメンにいい思い出がなくて、自分から遠ざかってましたが、「彼以外は」になっててよかったです。
彼女がいう今までのイケメンは外見だけだったということでしょうか。このイケメン後輩君はその情熱や素直さが他のイケメン達と違ったから彼女が本気になったのかなあと思いました。