シュガー×スパイス

結川

シュガー×スパイス(脚本)

シュガー×スパイス

結川

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〇ケーキ屋
「いらっしゃいませ〜! ・・・って、翔斗!」
翔斗「よぉ、来てやったぞ」
  放課後、アルバイト先であるケーキショップに彼氏の翔斗がやって来た。
  彼はいつも私がバイトの日に、こうして遊びに来てくれるんだ。
「来てくれてありがとう。 今日は何にしますか?」
翔斗「そうだな・・・当ててみろよ」
「もう、またそうやって意地悪する・・・」
翔斗「そういじけんなよ。 じゃあ、モンブランで」
「かしこまりました。 お席でお待ちください」
  翔斗の注文を聞き、彼が席に向かう背中を見つめる。
  私の口元には小さく笑みが浮かんでいた。

〇街中の道路
  バイトが終わった頃には、空がすっかり茜色に染まっていた。
「待っててくれてありがとう。 はい、これ。お土産!」
翔斗「またか・・・いつもいいって言ってんのに」
「ふーん? じゃあ、私がもらっちゃおうかな〜」
翔斗「・・・仕方ねぇから、今回ももらってやる」
  そう言って私の手からケーキの入った箱を受け取る
  相変わらず素直じゃないなぁ、と一人で笑っていると、左手が大きな温かさに包まれる
翔斗「今日もお疲れさん。頑張ったな」
「!・・・うんっ!」
  私が返事をしたのと、握った手にキュッと力が入ったのはほぼ同時。
  その瞬間、彼の顔が綻んだのも一緒だった。

〇教室
  翌日。
  4時間目終了のチャイムが鳴り響き、昼休みの時間が訪れる。
男子生徒「翔斗〜! 昼飯買いに購買ついて来てくれ!」
翔斗「はぁ?なんでだよ。 めんどくせぇ・・・」
男子生徒「頼むよ〜!どうせ暇だろ?」
翔斗「暇じゃねぇし・・・あーもう、分かったよ」
  翔斗は渋々承諾すると、一度私に向き直る。
翔斗「悪りぃ・・・ちょっと行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
  友達と教室を出ようとする翔斗に手を振ろうとしたその時だった。
「おーい、翔斗。 お前にお客さんだぞー」
  今度はまた別の生徒が彼を呼んでいた。
  教室の入り口の前に目を向けると、そこには他クラスの女子生徒が立っている。
  胸に手を当ててどこか緊張感を漂わせる彼女。
  その様子をひと目見ただけで、私の胸は少しだけ騒ついてしまう。
翔斗「あ?あー・・・分かった。 今行く」
男子生徒「えっ、俺の昼飯は!?」
翔斗「バーカ。 ンなもん、一人で行ってこい」
  すると私の方にチラッと目線をやった後、今度こそ翔斗は教室を出て行った。
女子生徒「・・・ねえ、大丈夫?」
  私に声を掛けてきてくれたのは、仲の良い女友達の一人。
  少しだけ気まずそうなのは声色と表情ですぐに分かった。
「全然大丈夫・・・と言ったら、嘘になるけど・・・」
「でも、信じてるから。翔斗のこと・・・」
  やっぱりいつまで経っても慣れないのは仕方ない。
  今頃翔斗はあの子に・・・と思うと、胸が締め付けられるのは当たり前だ。
  だけど、それ以上に信じている気持ちが大きいのは確かなんだ。
  きっと・・・あと数分後には、いつもの彼が隣に居てくれるから。

〇体育館の裏
「あの・・・翔斗君。 私、翔斗君の事・・・ずっと好きでした!」
  何度目かの自分に向けられた好きだという言葉。
  その言葉に出せる答えは・・・最初から決まっている。
翔斗「・・・そうか。ありがとう」
翔斗「でも、ごめんな。 俺・・・好きな奴がいるんだ」
  決定的な言葉を聞いた目の前の彼女は、やはり悲しげに眉を下げる。
「・・・やっぱりあの子じゃないと、ダメなんだよね?」
翔斗「ああ・・・もう、あいつ以外考えられないんだ。 だから・・・」
  すると納得してくれたのか、彼女は俯かせていた顔を上げると笑って口を開いた。
「はっきり言ってくれてありがとう。 私、彼女を大事にしてる翔斗君が一番好きだから!」
  正直内心驚いたが、俺も笑って頷き返す。
翔斗「!ああ・・・ありがとうな」
  先にこの場を去っていく彼女の背中を見送ると、俺も教室への道を歩き出す。
  折角抱いてくれた想いに応えられないのは、何度経験しても心が痛む。
  だが、あの傷付いた顔をして欲しくない人は・・・ただ一人しかいないんだ。
翔斗「・・・腹、減ったな」
  今一番会いたい人の顔を思い浮かべながら、俺は足早に教室へと戻って行った。

〇学校脇の道
翔斗「あ〜今日も疲れたな」
  放課後、いつものように隣同士並んで帰路を歩く。
  大きく伸びをして首を回す翔斗を横目に、ふと今日の昼休みでの事を思い出した。
  彼はやっぱり何事もなかったかのように戻って来た。
  でも、何があったのかはちゃんと説明してくれる。
  今回も告白を断った事・・・
翔斗「・・・安心しろよ。 この先何があっても、俺にはお前だけだから」
  無意識のうちに俯かせていた顔を反射的に上げる。
  すぐ目の前には真剣な表情をした翔斗が。
翔斗「だから、お前は余計な事なんか考えずに、俺だけを見てればいいんだ」
「翔斗・・・もう、折角途中までカッコよかったのに」
翔斗「バーカ。 俺はいつでもカッコいいっての」
  笑って私の頭を撫でる大きな手。
  一瞬で私を安心させてくれる、大好きな魔法の手。
「やめてよ〜髪が乱れちゃう!」
翔斗「俺しか見てねぇんだからいいだろ、別に」
  サラッと恥ずかしい事を言ってのけるから、おかけで私の顔はすぐに熱を帯びていく。
「き、今日もあそこ行くでしょ? 新作のケーキ、出たんだよ!」
翔斗「新作・・・仕方ねぇから付き合ってやるよ」
  大きな手の温もりが、頭から左手へと移る。
  自然と繋がれた手にはお互いの力が込められていた。

コメント

  • イケメンで一途で、二人っきりの時にはちょっとイジワルながらも素直にデレる、女の子の好きな要素がたっぷりですね!とっても魅力的な彼です。

  • タイトル通りの彼ですね、彼女にだけ見せるシュガーな感じがとても愛おしいですよね、うまくシュガー×スパイスをコントロールしてる彼が素敵です。

  • モテモテな彼だと心配になりますよね。でもそんな彼女の気持ちを彼自身がわかっていて、隠さずにすべて話してくれるなんて誠実で優しい彼ですね。甘党なのもちょっとギャップがあって可愛いです。

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