桜が恋をした

ひでよし

読切(脚本)

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〇見晴らしのいい公園
私「ん~」
私(あれ、私なんでこんなところで寝てたんだっけ)
  目の前には満開の大きな桜の木が立っている。
私(春の陽気が気持ちいいな。それで寝ちゃった・・・ん?)
  何かにもたれかかっていることに気づき、横を見ると
私「わあああ、ごめんなさい!」
???「目が覚めましたか。おはようございます」
私「おはようございます・・・」
私「って、吞気なことを!」
私「見ず知らずの方の肩を借りて寝るなんて・・・本当にすみません」
???「全然気にしなくていいですよ。慣れてますから」
私「えっと、あなたは?」
桜太(おうた)「初めまして。僕、桜太っていいます」
真白「私は灰崎真白っていいま・・・」
  ふと、男の子の肩に目をやるとそこには・・・
(あーー! 肩によだれが!? 私ってば、なんてことを!)
真白「私はなんということを・・・。どうお詫びをしたら・・・」
桜太(おうた)「それじゃあ、僕とデートをしてくれませんか?」

〇渋谷のスクランブル交差点
  後日、桜太くんとデートをすることになった。
  人気の多いところを選んでくれたり、優しく微笑む桜太くんの笑顔をみていると
  その笑顔に懐かしさを覚えたせいか、不思議と警戒心はなかった。
  私はデートを自然と楽しむようになっていた。
  楽しい時間はあっという間に過ぎ、スマホを見ると、18時になろうとしていた。
真白(この待ち受け、いつ撮ったんだっけ)
  その時、向こうの方から女の子の泣き声が聞こえた。
  考えるよりも先に体が動いていた。
真白「どうしたの・・・?」
女の子「パパとママと、はぐれちゃったの・・・」
真白「それは怖かったね・・・。ここは危ないからお巡りさんのところに行こうか」
女の子「うん!」

〇渋谷駅前
  交番に連れて行くと、そこでご両親と会うことができた。
真白「無事見つかってよかった・・・」
桜太「真白さんのそういうところ本当に素敵だと思います。好きです」
真白(これは、そういう人が好きっていうことだよね・・・?)
真白「あ、ありがとう! もう行こうか・・・!」
桜太「真白さん、待って」
  桜太くんは私の手を握った。
桜太「困った人を見つけるとすぐ動いちゃうから、はぐれないようにね」
真白「ご、ごめんなさい!」
桜太「それじゃあ、そろそろ帰りましょうか。家まで送ります」
  春の陽気のような笑顔に心が暖かくなるのを感じた。
  そのデートの後も、桜太くんと頻繫に会うようになった。

〇ゆるやかな坂道
  桜太くんと出会って、1年が経とうとしていた。
  私は体調がすぐれなくて早退をして家に向かって歩いていると、
  家の近くの公園で、桜太くんが意外な人と一緒にいるのを見つける。
真白(なんで私のお母さんと一緒にいるの!?)

〇田舎の公園
真白母「桜太くん、本当に毎年ありがとう。でも、もう大丈夫だからね」
桜太「いつも気にかけてくださりありがとうございます。でも、僕はやめるつもりはありませんから」
真白「ねえ、どういうこと」
真白母「真白!?」
真白「今の会話どういうこと? 説明して・・・!」
真白母「真白、これは・・・」
桜太「僕から説明させてください」
桜太「真白さん、明日4/7の7時に中央病院前の公園に来てくれませんか」
桜太「そこですべてお話します」

〇見晴らしのいい公園
  行くかどうか迷ったが、大事なことを忘れている気がして、そして桜太くんに惹かれていたから、
  私は桜太くんと出会った中央病院前の公園に向かった。
  ベンチに座る桜太くんと目があう。私を見つけると、桜太くんは安心したように微笑んだ。
  私は、桜太くんの隣に腰を下ろした。
真白「桜太くん、知ってることを全部話してくれる?」
  桜太くんはゆっくり頷いた。
桜太(おうた)「真白さんは4年前の4/7の8時30分にある少年をかばい事故にあい、」
桜太(おうた)「その事故以来、その日時を境に1年間の記憶がリセットされるようになったんです」
真白「どうしてそれを桜太くんが知ってるの? 桜太くんは私とどういった関係なの・・・?」
桜太(おうた)「それが、僕なんです」
桜太(おうた)「自分はケガをしながらも「ケガがなくてよかったね」と僕に言ってくれたあなたをみて、」
桜太(おうた)「生きることをやめようとしていた自分が恥ずかしくなりました」
桜太(おうた)「それから、あなたに恩返しがしたいと、あなたの傍にいるようになりました」
真白「それって・・・私、桜太くんの人生を縛り付けてたってこと? 4年間も・・・」
桜太(おうた)「真白さん、それは違うよ。僕は助けてもらったんだ。僕があなたと一緒にいたくているんだ」
桜太(おうた)「だから、そんなこと言わないで」
桜太(おうた)「真白さんのおかげで、勉強する意味も、医者になるっていう将来の夢をもって、生きる意味も知った」
桜太(おうた)「あなたは、僕の大切な人なんです」
桜太(おうた)「だから、あなたが迷惑じゃなけば、これから先も一緒にいさせて?」
真白「でも、私、桜太くんのこと忘れるんだよね? それでもいいの?」
桜太(おうた)「そんなの、何回だって出会えばいいよ」
桜太(おうた)「だから、そばにいさせて」
桜太(おうた)「ダメ・・・?」
真白(そんなこと言われたら・・・)
真白「ダメ・・・」
真白「なんて言えないよ」

〇見晴らしのいい公園
  時計の針は、8時30分を指そうとしていた。
真白「そうだ」
  私はスマホを取り出して目の前の桜の写真をとり、待ち受けに設定した。
真白(桜太くんとの思い出の桜だから)
  春の陽気に誘われるままに、抗えない睡魔が襲う。
桜太(おうた)「眠たくなりましたか?」
真白「うん・・・。ごめんね」
桜太(おうた)「仕方ないですよ。事故の後遺症ですから」
桜太(おうた)「僕の肩を使って」
真白「ありがとう・・・」
桜太(おうた)「真白さん」
桜太(おうた)「大好きだよ」
桜太(おうた)「あなたの新しい一年が始まるその瞬間も、そばにいますから」
桜太(おうた)「おやすみなさい」
  私は、大きな桜が見守る下のベンチで、桜太くんの肩に頭をのせて、ゆっくりと目を閉じた。

コメント

  • 記憶のリセット…想像したら恐ろしい…。
    でも新しい自分も好きになってくれるなんて、とてもロマンチックで嬉しいことだなあと私は感じました!

  • 一年ごとに記憶がリセットされるというと普通なら絶望感すら覚えるところですが、この二人がこうして想いあっていて、彼は償いどころかそれを糧にして生き続けることができていることから大きな希望を感じました。大好きな人の胸で夢からさめることって本当に幸せですね。

  • 彼の名前も、小説のタイトルとシナリオも、どれも絶妙にリンクさせてあって、始終綺麗な桜のイメージに包まれながら読みました。美しくも切ない愛の形ですね。

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