完璧男子『結城勇大』(脚本)
〇田舎の学校
結城勇大「よっ!」
結城勇大「はいこれ。差し入れ」
結城勇大「もうすぐ夏休みも終わりだな」
結城勇大「来年は、卒業か」
結城勇大「寂しく、なるな」
結城勇大「・・・」
結城勇大「あっ、あのさ。もし・・・」
結城勇大「もし、よかったら」
結城勇大「明日の花火大会、一緒に・・・」
甘酸っぱい恋をあなたに
青春炭酸飲料『スパーク』
初恋レモン味、新登場
結城勇大「弾けるような、夏にしよう」
〇渋谷のスクランブル交差点
女子高生「あれ、勇大の新CMじゃない!?」
女子高生「ホントだ!! カッコいい〜♡」
女子高生「勇大って言葉遣いも丁寧で周りのこともよく見てるし、話も面白いよね〜!!」
女子高生「顔も良くて、優しくて、喋りも上手いって、マジ完璧じゃね!?」
女子高生「それな〜。マジでクラスの男子達が子どもに見える・・・」
女子高生「私も出逢いた〜い、勇大みたいな完璧なイケメン!」
マネージャー「・・・」
『結城勇大』。18歳。
10歳の頃、ドラマ出演をキッカケに大ブレイク。以降、数々のメディアに引っ張りだこ。
更に演技力は勿論、柔らかな物腰と甘いルックスで『完璧男子』という二つ名で人気を博す、
今、注目の若手俳優だ。
マネージャー(本当、あんな『完璧男子』なら良かったんだけど)
「遅い・・・!!」
マネージャー(来た・・・)
結城勇大「このオレを待たせるとは、随分良いご身分だな」
結城勇大「マネージャー」
マネージャー「はいはい」
結城勇大「チッ」
結城勇大「全然反省してねぇじゃん!」
マネージャー「私に、一人のタレントばっかりお守りする暇はないんです〜」
結城勇大「ぐっ・・・うるせぇ!」
結城勇大「事務所ではオレが一番稼いでるし!」
結城勇大「イチバンのオレを一番大事に扱えよ!」
マネージャー「はいはい分かった。後でアイス買ったげるから」
マネージャー「次の現場行くよ」
結城勇大「クソッ、子ども扱いしやがって・・・」
結城勇大「この、年増ッ!!」
マネージャー「ちょっと誰が年増ですって!?」
そう。この傍若無人な口悪男こそ、世間が『完璧男子』と持て囃す注目の若手俳優──
『結城勇大』のウラの姿だ
〇川沿いの公園
結城勇大「おい、マネージャー!!」
結城勇大「腹減った。何か買ってこい」
マネージャー「腹減ったって・・・自業自得でしょ?」
マネージャー「現場で出たお弁当、食べたくないって言って食べなかったのはあなたじゃない」
結城勇大「あんなモン、食いたくないね!」
マネージャー「美味しいかったけど」
マネージャー「焼きナス弁当」
結城勇大「ナス・・・!!」
結城勇大「・・・オレがナス食えないことくらい、調べとくだろッ!!普通!!」
マネージャー「はぁ・・・」
マネージャー「好き嫌いしてたら大きくなれないわよ」
結城勇大「るせぇ!!」
結城勇大「第一もうそんなガキじゃねぇ!!」
マネージャー「そういうとこが子どもなの」
結城勇大「なっ・・・この、年増女!」
マネージャー「もっかい言ってみな!?」
〇撮影スタジオ
結城勇大「お疲れ様でした!」
結城勇大「・・・」
結城勇大「おい」
マネージャー「何?」
結城勇大「疲れた。飯」
マネージャー「ダメよ。もう夜遅いから」
結城勇大「無理。家まで持たない」
マネージャー「ダメです。車で送るから大人しくしてなさい」
結城勇大「たまにはいいじゃん」
マネージャー「子どもを夜遅くまで連れ回せません」
マネージャー「イチ大人として」
マネージャー「ほら、さっさと準備して帰る!」
結城勇大「クソッ・・・」
結城勇大(アンタはいつもそーやって)
結城勇大(オレを子ども扱いする)
結城勇大(早く、なりたい)
結城勇大(アンタと同じ『大人』に、早く──)
〇撮影スタジオのセット
数週間後──
結城勇大「宜しくお願いします!」
プロデューサー「こちらこそ宜しくね」
プロデューサー「・・・実は、折り入って君に頼みたい仕事があるんだ」
結城勇大「僕に?」
プロデューサー「ああ。でもまだ事務所にも言わないで欲しい」
プロデューサー「一旦君とぼくだけの契約ってことで」
プロデューサー「君のこと、頼りにしてるからさ」
結城勇大(オレを、頼りに・・・)
結城勇大(もし、オレだけの力で仕事を取ってきたら)
結城勇大(認めてくれる?)
結城勇大(『大人』だ、って)
結城勇大「あの。その話、もっと詳しく──」
マネージャー「すみません」
結城勇大「!? マネージャー・・・」
マネージャー「仕事の話は事務所経由でお願いします」
プロデューサー「ああ、わ、分かったよ・・・じゃ、これで・・・」
マネージャー「許可無しの仕事は厳禁」
マネージャー「契約解除もあり得る」
マネージャー「あなたなら分かってると思ってた」
結城勇大「わかってる、けど・・・」
結城勇大「でも、オレはただ・・・」
マネージャー「まぁいいわ。撮影終わったら話しましょう」
結城勇大(オレは、ただ認めて欲しかったんだ・・・)
結城勇大(・・・アンタに)
〇停車した車内
マネージャー「何故すぐ断らなかったの?」
結城勇大「・・・それは」
マネージャー「駄目だってこと、知ってると思ってた」
マネージャー「あなたも長く芸能界にいるんだから──」
「分かってたよ!! それくらい!!」
マネージャー「じゃあなおさら何で」
結城勇大「分かってた、分かってるけど」
結城勇大「それでもオレは」
結城勇大「大人だって認めて欲しかった」
結城勇大「マネージャーに」
マネージャー「え・・・私?」
結城勇大「な、何だよ!文句あるかよ!」
マネージャー「いや、文句というか」
マネージャー「あなたのことだから、てっきり『世間』からとか」
マネージャー「もっと上から目線な物言いしてくるかと・・・」
結城勇大「お、オレのことなんだと思ってやがる!!」
マネージャー「クソガキ」
結城勇大「なんッ・・・!!」
マネージャー「・・・冗談よ」
結城勇大「は、はぁ・・・!?」
マネージャー「我儘で子どもっぽいとこも沢山あるけど」
マネージャー「それ以外に頼りになるとこがいっぱいあるの、知ってるわよ」
マネージャー「何年マネージャーやってると?」
マネージャー「『結城勇大』を一番近くで見てきたのは私なんだから」
マネージャー「胸を張れ!!勇大!」
結城勇大「・・・」
〇花火
結城勇大「たーまやー!」
マネージャー「・・・」
月日が経ち、夏本番。
「花火行くぞ」
彼はそう告げ、強引に手を引いた。
結城勇大「今の見たか!? めっちゃデカかったな!」
マネージャー「そうね」
結城勇大「何だそのリアクション」
結城勇大「さては見てなかったな」
マネージャー「見てた見てた」
結城勇大「ぜってぇ嘘!」
本音は、彼の職業柄、人の多い場所に行くのは避けたい。けど──
結城勇大「あ、また来るぞ!」
結城勇大「今度はちゃんと見てろよ!」
この無邪気な笑顔に免じて
マネージャー「はいはい」
今日くらい大目に見てあげよう
「たーまやー!」
夜空に大輪の花火が咲く
・・・ちゅ
瞬間、花火の音と共に柔らかな熱が私の頬へ伝わる。
マネージャー「えっ・・・」
結城勇大「ふはっ!」
結城勇大「キレイだったな。今」
マネージャー「い、今・・・?アンタ・・・」
結城勇大「何のこと?」
マネージャー「は、はぁ・・・!?」
結城勇大「あ、もしかしてコレ?」
マネージャー「それってCMの・・・」
マネージャー「って冷たッ!」
マネージャー「急に頬に当てるな!」
結城勇大「ははっいいじゃん、別に♪」
結城勇大「なぁ、マネジャー」
結城勇大「弾けるような夏、しよう?」
芸能の世界で長くやっていくには、ただ礼儀正しくてというだけでは難しいでしょうね。彼の様に少し傲慢でとがっているというのが普通なのかもしれませんね。この姉のようになだめてくれる素敵なマネージャーのそばで、もっと良い仕事してほしいですね!
完璧男子の完璧じゃないところがまた可愛いんですよね。お互いに口では強くいったりしている背景には、揺るぎない信頼感があるということがよく伝わってきました。年下男子だとワガママなところさえも魅力に思えてくる不思議。
女性から見て、年下の男の子ってどうしても恋愛対象外というか、子供に見てしまうことありますよね。でも、年下の男の子からしたら、年上の女性に憧れる気持ちはあるんですね!
とても可愛いなーと思いました。