ほんとの姿(脚本)
〇体育館の舞台
──全校集会。
校長先生「・・・と、言うわけで今週もしっかりと勉強に取り組み・・・」
友人A「葵!あそこ!伊吹先輩・・・!」
花宮葵「伊吹?」
友人A「知らないの!? 伊吹柊(いぶきしゅう)だよ!みんなかっこいい先輩って噂してるじゃん!」
花宮葵「そうなんだ・・・確かにかっこいいかも・・・でもなんか・・・」
友人A「あぁ・・・確かにちょっと見た目は悪そうだよね・・・なんかヤバめの先輩達と仲良いらしいし・・・」
花宮葵「そうなんだ・・・」
〇明るいリビング
──花宮家、リビング。
葵の母「葵。ちょっとお願いがあるんだけど」
花宮葵「どしたのお母さん」
葵の母「田中さんとこのカフェあるじゃない?人が足りないらしいのよ。あなた、アルバイトで入ってみない?」
花宮葵「バイト・・・?」
葵の母「そう・・・同い年くらいの子が多いみたいだし、田中さんのところならお母さんも安心だから・・・どうかしら?」
花宮葵「まぁ、お母さんがそう言うならやってみようかな・・・」
葵の母「ほんと!?じゃあ、お母さんから田中さんに言っておくわね」
花宮葵(うちは過保護でなかなかアルバイトなんてさせてもらえなかったからなぁ・・・ちょっとわくわくするかも・・・)
〇テーブル席
田中「あなたが葵ちゃんね。店長の田中です。お母さんに似て美人ね。今日からよろしく」
花宮葵「はい!よろしくお願いします!」
田中「じゃあ・・・伊吹くん!今日から葵ちゃんについて教えてもらえる?」
花宮葵(伊吹・・・?)
伊吹柊「え!俺っすか!?」
田中「そ!かわいいからって手出すなよ〜」
伊吹柊「出しちゃだめなのかー!了解っす!」
花宮葵(この人って確か・・・噂の伊吹センパイ・・・)
伊吹柊「よろしくな!花宮・・・だっけ?」
花宮葵「はい!花宮葵と言います。よろしくお願いします!」
〇広い厨房
伊吹柊「へ〜じゃあ数学後藤先生?」
花宮葵「そうですね。後藤先生板書あまりしてくれないからテストの時大変で・・・」
伊吹柊「わかる!後藤雑だよな。俺も市川に変わってから数学できるようになったもん!」
花宮葵「そうなんですね!いいなぁ市川先生・・・優しそうだし・・・私数学苦手なのにさらにダメになりそうで・・・」
伊吹柊「なんなら今度教えてあげよっか?休憩の時とかノート持ってきたら全然教えるよ」
花宮葵「ほんとですか!助かります・・・」
田中「伊吹ー!3番オーダーお願い!」
伊吹柊「了解っす!あ!そこのパフェも一緒に持ってっちゃいますねー!」
花宮葵(伊吹先輩って見た目ほど怖い人じゃ無いんだ・・・なんか誤解しちゃってたかも・・・)
〇学園内のベンチ
不良A「伊吹ちゃん久しぶり〜!」
不良B「おう伊吹。久しぶりだな」
伊吹柊「お久しぶりっす!」
不良A「どうよ調子は〜!」
友人A「ねぇあれって伊吹先輩だよね・・・やっぱり不良の先輩達と仲良いんだ・・・」
花宮葵「そうだね・・・」
葵を見て微笑む伊吹。
友人A「え!今葵に笑いかけなかった!?」
花宮葵「え!?そ、そうかな・・・」
友人A「えー!なになにどういうこと!?」
葵の後ろ姿をじっと見つめる伊吹。
〇店の休憩室
花宮葵「おつかれさまです!」
田中「おーおつかれ葵ちゃん」
花宮葵「あれ?今日伊吹センパイは?」
田中「あー・・・今日はあいつ居酒屋の方かな」
花宮葵「居酒屋?」
田中「あれ?言ってなかったっけ・・・あいつ、うちの系列の居酒屋の方でもでもバイトしててさ」
花宮葵(そんなにたくさんバイトしてるんだ・・・)
田中「あいつの家、母親しかいなくて、下の兄弟達の面倒見ながら、あいつも家に稼ぎ入れててさ・・・まだ高校生なのに偉いよな・・・」
花宮葵「そうだったんですね・・・」
田中「居酒屋のバイトもほんとは高校生じゃダメなんだけど、あっちの店長に無理言って入らせてもらったんだよね・・・」
花宮葵(やっぱり、全然怖い人なんかじゃ無いんだ・・・)
〇店の休憩室
花宮葵「センパイあの・・・」
花宮葵(寝てる・・・)
花宮葵(きっと昼も夜も働いて疲れてるんだろうな・・・)
ブランケットを持ってきて伊吹にかける葵。
花宮葵(ふふ。気持ちよさそうな寝顔・・・)
寝ながら葵の腕を掴む伊吹。
花宮葵(え!?お、起きてる?)
伊吹柊「はなみや・・・」
花宮葵「センパイ・・・」
伊吹柊「・・・zzz」
花宮葵(うふふ。寝ぼけてるのかな?)
伊吹柊「・・・ハッ!!・・・寝てた・・・」
伊吹柊「って花宮!?・・・あ!え!ごめん!!」
手を離す伊吹。
花宮葵「うふふ。センパイ、私が夢に出てきてました?」
伊吹柊「な、なんで・・・バレて・・・」
花宮葵「名前呼ばれてびっくりしちゃいました」
伊吹柊「そっか、俺、声に出して・・・はず・・・」
花宮葵「ふふ・・・センパイ、店長に聞きました。居酒屋でもバイトしてるって・・・」
伊吹柊「え!?あぁ・・・田中さんすぐ言うじゃん・・・ほんとは花宮の前ではカッコつけたかったんだけどね」
花宮葵「え?」
伊吹柊「あの悪そうな先輩達、居酒屋の近くのクラブによく来てるんだ。それでたまに話すようになってさ」
花宮葵「そうだったんですね・・・」
伊吹柊「正直、花宮に誤解されてるんじゃないかってちょっとビビってた・・・」
花宮葵「センパイ・・・」
伊吹柊「いや・・・!あの!花宮に誤解されたくないってのはその変な意味じゃなくて・・・」
花宮葵「うふふ。センパイって意外とかわいいですよね」
伊吹柊「え?か、かわいい?」
花宮葵「かわいいです。頑張り屋さんな所も、みんなに優しいところも」
伊吹柊「そうかなぁ・・・」
伊吹柊「俺は花宮の方がかわいいと思うけど」
花宮葵「え!?」
伊吹柊「花宮だけには誤解されたくなかったんだ・・・」
花宮葵「私、だけ・・・?」
伊吹柊「ねえ!今度さ、二人でどっか出かけない?」
花宮葵「え!?」
伊吹柊「普段バイト中しか話せないし、もっと花宮のこと、知りたいんだ」
花宮葵「・・・センパイが良ければ・・・」
伊吹柊「やった!」
会話が読んでて楽しいです。先輩が実は優しくて親切で、怖い人じゃないということがしゃべり方でも伝わってきましたし、葵ちゃんが話しかけやすい素直な雰囲気の子なんだろうな〜というのも感じました。素顔が分かるっていいですね〜。学校の外で、二人だけ急接近するのもキュンポイントです!
すっごくかわいい彼ですね。
そりゃ好きな人には誤解されたくないですよね。
バイトも楽しそうで、読んでてこっちまで楽しい気分になってきました。
見た目と中身のギャップがあっても、こういう可愛いギャップなら大歓迎ですね。相手の中身を知れば知るほど素敵だなぁと思える部分が増えていく、こんな恋愛っていいなぁと思いました。