17

ももん

エピソード1(脚本)

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ももん

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〇アパートのダイニング
  秒針が刻むたびに鬱になる。
  17,16、
  15,14,13,12,11、
  10、9、8、7、6、
  5、4、3、2、1
  0時になった。
  17歳の誕生日まで、
  あと、7日17時間17分17秒。
君塚一七「あと、七日かぁ。 時間止まってくんないかなぁ……。」

〇教室
  12時17分17秒。
  生徒たちの唯一の楽しみとも言える時間。
  お昼時間。
  教室にいる生徒たちは、
  ご飯を食べ始めている。
  一七も、クラスメイトの原田綾と、
  お弁当を食べている。
原田綾「ねえ、今日ずっと時計ばっか見てない?」
君塚一七「心の準備よー。17歳への。」
原田綾「7月17日17時17分17秒に 生まれたから、漢字で“いちなな” って書いて一七だっけ?」
君塚一七「うん。 はー、17歳なんて小学生から見たら オバサンだよ。」
君塚一七「それに17歳になったら、男子からは 十七(じゅうなな)ってあだ名で 呼ばれるようになって苛められるの。」
君塚一七「そして、いつの間にか女子も便乗して 私のことを苛めるんだよ。」
君塚一七「そうなったら、 綾ちゃんが私のことを助けてね。 お願いよ。」
原田綾「うん……助けてあげる……ね。」
君塚一七「あー、秒針が刻まれる度に鬱になるー。」
原田綾「ねえ。」
原田綾「一七って中学時代は演劇部だったよね?」
君塚一七「え、うん、やってたよ。」
原田綾「実は今、 役者が足りなくて困っているんだけど、 助っ人で来てくれない?」
君塚一七「えー、面倒くさーい。」
  一七は、教室の時計を見ながらご飯をほお張った。

〇教室
  15時。
  この授業が終われば、今日の授業は
  終わりだ。
君塚一七(時間よ止まれ。時間よ止まれ。)
先生「では、一ノ瀬君。 この問題を解てください。」
君塚一七(よし、今日は回ってこなそうな雰囲気ね。 時間を止めることに集中!)
君塚一七(時間止まれ。時間止まれ。 時間止まれ。時間止まれ。止まれ……)
君塚一七(あー、目が疲れてきちゃった……。 ちょっと休憩……。)

〇教室
君塚一七(むにゃむにゃ……。 むにゃむにゃ……。)
君塚一七(ん?)
君塚一七「わ、寝ちゃってた!」
  17時17分17秒。
君塚一七「止まる所か過ぎちゃった。 てか、何で誰も起こしてくれないのよー。」
君塚一七「ん?」
  演劇部員たちの発声練習が聞こえてくる。
「あめんぼ赤いなあいうえお。 浮き雲に小えびも泳いでる。」
  一七も小さな声で思わず合わせてしまう。
君塚一七「柿の木栗の木かきくけこ。 きつつきコツコツ枯れけやき。」
  窓からはテニス部の練習が見えた。
君塚一七「毎日演劇練習しても、 観客が少ないのなんて当たり前だから、 空しいだけだし……。」
君塚一七「うちのテニス部だって 別に強い訳じゃないし……。」
君塚一七「みんな、そんなに頑張っちゃって どうすんだろ。」
君塚一七「時間勿体無いじゃん……。 帰ろ。」

〇アパートのダイニング
  7月11日7時17分17秒。
  一七は、ぴったりの時間でため息を吐いた。

〇教室
  12時17分17秒。
  生徒たちはお弁当を食べ始めている。
  一七もいつも通りに綾と食べ始める。
原田綾「一七、今日ずっと変な顔してたよ。 大丈夫?」
君塚一七「綾ちゃーん。 私、あと6日と数万ほにゃらら 55秒で17歳になっちゃうよ!」
原田綾「ほにゃららって何よ……。」
原田綾「ねぇ。」
原田綾「思ったんだけど、 良いことが起こるんじゃない?」
原田綾「一七って名前で 7月17日17時17分17秒生まれだよ。」
原田綾「何か運命的じゃん。」
君塚一七「運命的って例えばー?」
  綾は、一ノ瀬光輝の方へと目をやった。
  つられて一七も目をやってしまった。
原田綾「幼馴染に告られるとか?」
君塚一七「えー、別に光輝のこと 好きって訳じゃないしー。」
原田綾「でも、保育園から高校まで 一緒ってのも運命的じゃん。」
原田綾「きっと17日に告られるんだよ。」
  一ノ瀬が目の前にやってきた。
一ノ瀬光輝「一七、もうすぐ誕生日だろ?」
一ノ瀬光輝「絶対17日に何か運命的なことが起きるぞ。」
君塚一七「ひゃ!?」
君塚一七「う、運命的ってなによ!」
一ノ瀬光輝「んー、何だろ。」
君塚一七「あ、光輝。」
君塚一七「小学3年生のとき、 光輝に誕生日プレゼント上げたよね。」
君塚一七「でも、私今まで何も、 何にも貰ってないんですけど。」
一ノ瀬光輝「え!? まだ覚えてたのかよ……。」
一ノ瀬光輝「分かったよ。 何かあげりゃいいんだろ。」
  一ノ瀬は男子グループの方へと行ってしまった。
原田綾「やるじゃん!」
原田綾「これで決定だね。 一ノ瀬君が告白して、付き合う!」
君塚一七「そんなことないってー。」
  意外にも満更でもなかった。
  恥ずかしさを隠すために、
  お弁当を頬張ったが、
  綾は更にニヤニヤしてしまった。

〇アパートのダイニング
  7月17日7時17分17秒。
  ため息ではなく、深呼吸だった。
君塚一七「ついに、この日が来た……。」

〇教室
  12時17分17秒。
  いつも通り、生徒たちはお昼休みで、
  お弁当を食べ始めている。
  一ノ瀬はいつもどおり男子数人と一緒に
  お弁当を食べている。
  一七と綾も、いつも通り一緒に食べている。
君塚一七「今の所、何も無いんですけどー。」
原田綾「んー、告白と言ったら放課後でしょ?」
君塚一七「んー、そうなの?」
原田綾「そうよ。」
  一七は時計を見ながらご飯を食べた。

〇教室
君塚一七(むにゃむにゃ。 むにゃむにゃ。)
君塚一七(ん?)
君塚一七「うひゃ!?」
  17時0分0秒。
  教室は寝ていた一七だけだった。
君塚一七「また誰も起こしてくれなかった。 てゆうか、あと17分で17歳だし。」
  演劇部員たちの発声練習が聞こえる。
「あめんぼ赤いなあいうえお。 浮き雲に小えびも泳いでる」
  一七も思わず小さな声で合わせてしまう。
君塚一七「柿の木栗の木かきくけこ。 きつつきコツコツ枯れけやき。」
  窓からテニス部の練習が見える。
  テニス部員たちの中に一ノ瀬がいる。
君塚一七「光輝、絶対忘れてるよー。 もう、一人寂しく誕生日むかえまーす。」
  一七は夕日を見続けた。
  17時15分。
君塚一七「うー、あと2分。」
  教室のドアが勢い良く開いた。
君塚一七「わひゃ!?」
  一ノ瀬が教室に入ってきた。
一ノ瀬光輝「グラウンドから教室見たら、 黄昏てる一七がいたから、急いで来たよ。」
君塚一七「へ!? あ、いや、どしたの?」
一ノ瀬光輝「ほら、プレゼント。」
一ノ瀬光輝「放課後、起こそうとしても 起きなかったから。」
一ノ瀬光輝「ほら。」
君塚一七「あ、ありがと。」
  一七は一ノ瀬を見つめると、
  沈黙が流れた。
一ノ瀬光輝「あ、まだ部活の途中だから。 じゃあな。」
  一ノ瀬は教室の外に出て行った。
君塚一七「私、バカみたい……。 何期待してたんだろ……。」
  一七はプレゼントを開けた。
  プレゼントはダサい腕時計。
  腕時計をつけた。
君塚一七「うーん、やっぱりダサい。」
  腕時計を見ると、
  17時16分43秒。
君塚一七「あと17秒。」
  腕時計の秒針が止まる。
君塚一七「あれ、時計が止まった。 最悪、光輝ちょっと勘弁してよ……。」
君塚一七「光輝に文句を言わないと……」
  窓から外を見ると、
  光輝と女の子が、手を繋いでいた。
  光輝は女の子にキスをして、
  テニス部員たちの方へと走っていった。
君塚一七「え!? ちゅー!?」
君塚一七「あの人、 女子バスケのキャプテンだっけ……。」
  演劇部員たちの発声練習が聞こえる。
「わいわいわっしょいわいうえを。 植木屋井戸変えお祭りだ。」
君塚一七「そうだよね。」
君塚一七「私のことを好きになる要素なんて あるわけないか。」
君塚一七「時間なんてとっくに止まってたんじゃん。」
君塚一七「何で私だけ頑張ってないんだろ。」
  腕時計を見る一七。
君塚一七「ダサいね……。」
  腕時計の秒針は止まったまま。

〇大学
  一七は秒針が止まった腕時計をしている。
  たぶん、8時17分くらい?
  生徒たちが、どんどん高校に入っていく。
「一七、おはよー。」
君塚一七「おはよ。」
原田綾「一七、昨日はどうだった?」
君塚一七「光輝、付き合ってる人がいたみたい。」
原田綾「嘘!?」
原田綾「あ、運命的とか言っちゃってゴメン……。」
君塚一七「んーん、別に構わないよ。」
君塚一七「私、時間を止めることが出来たし。」
原田綾「え、何それ? 超ファンタジーじゃん!」
  止まった腕時計を見る一七。
君塚一七「ねえ……。」
君塚一七「それより演劇部の役者足りないんでしょ?」
君塚一七「やってもいいよ。」
原田綾「え、本当?」
君塚一七「うん、何か体動かしたい気分だし。」
  腕時計の秒針が動き始める。
  17時17分17秒。
  Thank you for playing!
  
  
  
  
                  End

コメント

  • ゾロ目の時間とか、子供の頃すごい意識していたことを思い出しました。
    時間に囚われていた、そして自分がまた前に進めていなかった、そして次のステップに行けたから、時間は進み始める。

  • 17という数字に縛られていきてきたような彼女が、実際17歳になっても特に何の変化もなかったことによってやっと解放されていく様が感じ取れました。誰でも思い込みってありますよね。成長した彼女が、17という数字を前向きにとらえる事ができたらいいなあと思います。

  • 刻一刻と運命の時間が近づいてくる緊張感に引き込まれました!放課後に眠ってしまいいつの間にか教室に誰もいないという状況もミステリアスでした。いざ運命の時を迎えたときに新しいことを始めてみようという心の変化は一七を毎年成長させていくんだろうな。

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