スクラロース&アセスルファム

西瓜頭

スクラロース&アセスルファム(脚本)

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西瓜頭

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〇シンプルな一人暮らしの部屋
ツバサ001「起きて、僕のお姫様」
ツバサ001「違うな」
ツバサ001「もっと甘やかさないと」
ツバサ001「息して──僕のお姫様」
  スー
ツバサ001「吸い尽くしたい程可愛い寝息だ♡」
  ハー
ツバサ001「ナイスだね 吸ったら吐く」
ツバサ001「その当たり前がこんなにも尊い」
  うぅう~ん
ツバサ001「生きてるだけでありがとうなのに」
ツバサ001「起床──しちゃうのかい?」
  う、う、うぅ〜んンン!(怒)
ツバサ001「なんてことだ」
ツバサ001「眠り姫が──今、目覚めるっ♡」

〇黒
「うぅるせええ!」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
マツリ「ばかにしてんのか!?」
マツリ「してるよ息は! オギャーとうまれたその日からずっとな!」
ツバサ001「そっか!」
ツバサ001「マツリはうまれた日からずっと偉いね!」
  どうしてこうなったのか

〇オフィスのフロア
  昨晩
男性社員「じゃあ」
男性社員「全部一人でやればいいだろ」

〇ネオン街
  エナドリだけを相棒に仕事を片付けた帰り道
  ふと思い出してしまったのだ
マツリ「明日──誕生日だ」
マツリ「・・・」

〇大衆居酒屋
  次の瞬間、私は居酒屋にいた

〇電器街
  酩酊状態で街へ繰り出した私は
「イケメンロボ ツバサ001 セール中でーす」
「安いよ安いよー」
  彼と出会ったのだった

〇シンプルな一人暮らしの部屋
マツリ「昨日の私 しね!」
マツリ「うぉぉ クソみたいな買い物してしまった」
ツバサ001「月々〇万円で40年ローンだよ」
マツリ「いや聞いてねーわ」
マツリ「ってはぁ!?」
マツリ「40回じゃなくて40年!?」
ツバサ001「うん」
ツバサ001「マツリ、また寝た」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
  ツバサ001
  昨日、コイツを持ち帰り
  私は言ったらしい
  「際限なく甘やかして」
  「明日は誕生日だから」
  よくそんなこっ恥ずかしい命令をしたもんだ

〇シンプルな一人暮らしの部屋
マツリ「返却かな、現実的に考えて」
ツバサ001「ねぇマツリ」
マツリ「なに」
ツバサ001「会社に行く時間だよ」
マツリ「ヤベッ」
マツリ「あーもう誕生日なのに」
マツリ「学生ならお母さんが休みの連絡してくれたのにな」
ツバサ001「いいよ」
マツリ「えっ」
  トゥルルル
  ピッ
ツバサ001「アッ TN商事ノ方 デスカァ」
ツバサ001「ムスメハ キョウハ ヤスマセマスゥ」
ツバサ001「エッ? トニカクヤスマセマスゥ ハイィ」
  ピッ
マツリ「お、お前」
マツリ「なにしてくれてんの?」
ツバサ001「僕、電話の機能あるんだ!」
マツリ「そんな」
マツリ「そんな、甘やかしはなぁ」
マツリ「サイッコーだよ!」
マツリ「ヤッター!休みだぁー!」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
マツリ(コイツ、意外と使えるかも)
マツリ(返却の前に1日位いいよね)
マツリ「どんな風に甘やかしてくれるんだ?」
ツバサ001「何でもするよ」
ツバサ001「掃除も洗濯も」
ツバサ001「お風呂も仕事もしなくていいよ」
ツバサ001「お金は僕が稼ぐから」
マツリ「ダメ人間製造機じゃん」
マツリ「こっわ」
ツバサ001「あと」
ツバサ001「エッチな事もできるよ」
マツリ「それは」
マツリ「ほ、保留で」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
マツリ「じゃあ飲み物買ってきて!」
ツバサ001「オッケェ!命に代えても!」
マツリ「軽いな命が」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
ツバサ001「ただいま!」
マツリ「どれどれ〜?」
マツリ「レッドベル モーニングエナジー オロロロンC」
マツリ「リアルシルバー リポポピンD どデッカみん」
マツリ「わ〜!」
マツリ「全部エナドリじゃねーか!」
ツバサ001「マツリ、好きでしょ?」
マツリ「まぁ、私好みのノンシュガーを選んできたのは褒めてやるよ」
ツバサ001「それに、人口甘味料の甘さはね?」
マツリ「砂糖の約600倍」
マツリ「そういう事じゃないんだよなぁ」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
マツリ「イチから教えるわ 甘やかすっていうのはな」
マツリ(あれ)
マツリ(甘やかすって何だ?)
マツリ(男に甘えた事ないからわからねぇ)
ツバサ001「大丈夫?」
ツバサ001「マツリはそのままでいいよ? 何にもわからないままでいいよ?」
ツバサ001「嫌な事は、全部僕がやるからね」
マツリ「う、うるさい!」
マツリ「甘やかす位私だってわかるわ」
マツリ「いいか──甘やかすっていうのはなぁ!」
マツリ「赤ちゃんプレイの事だよ!」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
ツバサ001「マツリちゃん♡」
ツバサ001「赤ちゃんだねぇ かわいいねぇ」
マツリ「ば・・」
マツリ「ばぁ〜ぶぅ〜」
ツバサ001「お返事できたね よしよし♡」
マツリ「キャッキャッ」
  ばふばぶしながらイケメンロボにお姫様だっこされてる成人女性
  それが私だ
マツリ(どうしてこうなった!)
ツバサ001「あれれ、どうしたのかな? オムツかな〜マンマかな〜?」
マツリ「・・ま」
マツリ「マンマぁ・・」
ツバサ001「すぐミルク用意するからね♡」
マツリ「だぅ〜」
マツリ(悔しい、でも)
マツリ(抗いがたし!)
ツバサ001「人肌に温めたよ」
マツリ(哺乳瓶でミルク飲むなんて)
マツリ(ホントに赤ちゃんになっちゃうよ♡)
ツバサ001「チュッチュちようね〜」
マツリ「ムッ」
マツリ「ちゅっ」
マツリ「ちゅっ」
マツリ「ぢゅっ」
マツリ「・・・」
マツリ「ブッフォオオ!!」
マツリ「なまぬるいエナドリだコレ!」
ツバサ001「大変だ ゲップさせなきゃ!」
マツリ「出ねえよ! 炭酸が抜けてるから!!」

〇シンプルな一人暮らしの部屋
ツバサ001「ゴメンね、うまくできなくて」
マツリ「いや」
マツリ「私が悪いわ」
マツリ「なんだこの誕生日」
マツリ「なんか疲れちゃった」
マツリ「甘え方一つわからない ひねた大人になっちゃった」
マツリ「昨日の私しね 一昨日の私もしね」
マツリ「みんなしんじゃえ」
ツバサ001「マツリ」
ツバサ001「僕 旧式の売れ残りで しっかりしてなくて、ごめんね」
ツバサ001「でも、マツリが買ってくれた時 すっごく嬉しかったんだ」
ツバサ001「この人の役に立ちたい、って思った」
ツバサ001「だから、僕しぬね」
マツリ「は?」
ツバサ001「これ、使って」
ツバサ001「新しい僕と仲良くしてね」
ツバサ001「さよなら」
マツリ「これ──」
マツリ「保証書!」

〇開けた景色の屋上
マツリ「ばかっ! どういうつもりだよ!」
ツバサ001「見送りに来てくれたの?」
ツバサ001「ありがとう でも」
ツバサ001「あんまり見られたくない 多分、ぐちゃぐちゃになっちゃうから」
マツリ「何言ってんだよ」
マツリ「戻れよ・・・」
ツバサ001「だって、これ以上何もできない」
ツバサ001「僕は君を泣かせてばかり」
マツリ「違う」
マツリ「違うよ」
マツリ「何もできないのは私」
マツリ「お前が私に教えてくれよ」
マツリ「人への甘え方って奴をさ」
マツリ「ツバサ!」
マツリ「ほら、こっちへ」
マツリ「ぅわ!」

〇黒
マツリ(あ しぬ)
マツリ(なんだ しぬのは 今日の私じゃん)
マツリ(ううう)
マツリ(こんなマヌケな最期 ヤダ!)
マツリ「助けて!」

〇黒
ツバサ001「マ ツ リ───!」
  ズダダダダ──ダッ!
マツリ「!」
マツリ(壁を──走って・・・!)
  ガシッ!
ツバサ001「つかまえた!」
マツリ「わわっ」
マツリ「本日2回目のお姫様だっこ・・!」
マツリ「でもっ!」
ツバサ001「まかせて!」

〇マンション前の大通り
ツバサ001「着地成功」
ツバサ001「マツリ、大丈夫?」
マツリ「うん!」
ツバサ001「うっ」
ツバサ001「ゴメンね、僕」
ツバサ001「この高さから落ちても壊れないみたい」
マツリ「ばか」
マツリ「返却なんかしないよ」
マツリ「40年分、ドキドキしたよ」

〇宇宙空間
マツリ「もう少し このまま抱っこして」
ツバサ「じゃあ僕は」
ツバサ「マツリの大好きな甘い言葉 今日が終わる前に 君にあげる」
マツリ「──」
マツリ「なあに?」
  機械とは思えない
  でも、造り物の美しさを持つ唇が
  私の耳に囁く
ツバサ001「──スクラロース」
ツバサ001「アセスルファム」
マツリ「・・・」
マツリ「お前、ホントばか」
マツリ「でも そうだな」
マツリ「好きだよ」

コメント

  • 甘い!
    そして最高🤣
    赤ちゃんプレイとか甘やかしてくれる彼氏素敵すぎ
    これはキュンとしてしまいますね

  • 誕生日の前日を自覚すると自棄になりますもんね…
    こんなロボットが居るのなら独身のままでも頑張れそうです(^ω^)

  • コンテスト予選通過おめでとうございます✨読もうと思っていて未読の作品でした💦
    笑いあり、涙あり、切なくて、キュンとする。なんかね、感情がジェットコースターでした!そして、オチが最高ですね。人工物とのキュンだから、人工甘味料の甘さってところが良きでした!
    とっても面白かったです〜☺

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