〇通学路
　　人を殺したので自首しようと思う。
　　三年付き合った恋人、たか子に振られむしゃくしゃし、通りすがりの人を刺してしまった。
　　まさか自分が通り魔になるなんて思ってもみなかった。
　　しかし自首しようにも一人で自首するのはちょっと心細い。
　　仲間を集めることにしよう。
　　私は胸に人殺しワッペン（人殺しです、と書いてあるワッペン）をつけ、仲間探しの旅に出た。
　　まずお隣の村上さんのとこに行こうかな。

〇一戸建て
　　ピンポーン!!
　　村上さん宅のチャイムを押すと、旦那さん、村上たかおさんが出てきた。
たかお「はい、ああお隣の佐藤さん。なんか用ですか？」
たかし「はい、私先ほど人を殺しまして人殺しになったんです」
たかし「だからまあこれから自首しようと思うんですが、一人で自首するのは心細くてね、一緒に自首する人を探してるんですけど、」
たかし「たかおさんは人殺しではありませんか？」
たかお「うーん、そう言えば小学校のときにいじめてたさとしってやつが、この前こじらせて人を殺したらしい」
たかお「だからまあ、俺も人殺しかもしれんな」
たかお「よし、一緒に自首しよう」
　　やった!!早速仲間ができたぞ
　　私はたかおさんに人殺しワッペンを一つあげました。
たかお「ありがとう」
　　たかおさんは喜んでワッペンを受け取った。
たかし「二人だとまだ少し心細いので、一緒に仲間探しの旅に出ましょう」
たかお「ちょっと待って、もしかしたら妻のまつこも人殺しかもしれない」
たかお「まつこ〜、ちょっとこっちおいで〜」
　　はーーーい!!
　　ドタドタドタドタ
　　まつこさんがドタドタ階段を降りてやって来た。
たかし「こんにちは」
たかし「私は先ほど人を殺してしまったので自首しようと思うのですが、一人だと心細くて仲間探しをしています」
たかし「まつこさんは人殺しですか？」
まつこ「うーん、そうねぇ」
まつこ「あ、そういえば昔大学教授をしてて、入試を採点してたんだけどね、どうせバレないと思って適当に採点してたのよ」
まつこ「そしたら、結構ミスってて、そのせいで大学に落ちた子が気を病んで自殺しちゃったみたいなの」
まつこ「だからまあ、私も人殺しかもね。一緒に自首、しましょうか」
　　やった、仲間が増えたぞ。私はまつこさんにもワッペンをあげた。
まつこ「まあ素敵。ありがとう」
　　三人も集まればまあいいだろう。
　　私は二人を引き連れ交番へ向かった。

〇市街地の交差点
　　横断歩道、信号を待っている途中ふと隣を見ると、たか子がいる。
　　もしかしたらたか子も人殺しかもしれない。
たかし「やあたか子」
たかこ「まあ、たかし。どうしたの」
たかし「俺さっきお前に振られてむしゃくしゃして人を殺しちゃったんだ」
たかし「それで今自首しに行くところ。もしたか子も人殺しだったらさ、一緒に行かない？」
たかこ「そうなんだ」
たかこ「ああ、うーん、」
たかこ「私がふったせいであなたがむしゃくしゃして人を殺したのだから、私もきっと人殺しだわ」
たかこ「一緒に自首しましょ」
　　私は喜んで彼女にワッペンを差し出す。
　　耳にかかった髪を掻き分けながら、彼女はそれを受け取った。
　　四人で一列に並び、警察へ向かって行く。
　　ズンドコズンドコ、ズンドコズンドコ

〇街中の交番
　　ズンドコズンドコ歩いて行くと、あっという間に交番についた。
　　早速みんなで自首しよう。
　　ガラガラー

〇交番の中
たかし「ごめんくださーい!!」
警察「はい、どうしました？」
　　清潔感のある若々しい警察が対応してくれる。
たかし「私、人を殺したので自首しようと思うのですが」
警察「はあ、そういうことなら私もご一緒させて下さい」
　　そう言った警官の胸には、人殺しワッペンが付いていた。
　　これは予想外。まさか警官も人殺しだったとは。
たかし「わかりました。ではご一緒しましょう」

〇渋谷のスクランブル交差点
　　私は警察官を仲間に加え、交番を出た。
　　しかし困ったものだよ。一体どこに行けば自首できるのだ。
　　街を歩き回る。なんか知らんが、その辺を歩いている人はみな例外なく人殺しワッペンを付けている。
　　どんどん私の列に加わって行くのだ。
　　上空にはヘリコプター。
　　きっと中に乗っている人物が人殺しなのだろう。
　　車もどんどんついてくる。
　　ゆっくり歩く速度でだ。あっという間に大名行列のように。
　　ニョーンニョーンニョーン
　　突然スマホが鳴った。
　　緊急飛行機警報。世界中の飛行機が〇〇市に向かっています。このままだと墜落します。早く逃げましょう。
　　大変だ。パイロット達も自首するためにこちらに向かってきているようだ。
　　このままだとみんな死んでしまう。