バナナはゴリラが好き!

さめしま

バナナはゴリラが好き!(脚本)

バナナはゴリラが好き!

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〇学園内のベンチ
麻里「あれ?悠人くん?」
  サークルの活動場所である部室棟へ向かう途中。同じサークルの悠人くんに遭遇した。
  どういうわけかぽかんと口を開けてこちらを見つめ、驚いた顔をしている。
麻里「ど、どうしたの悠人くん。私の顔になにかついてる?」
悠人「バ・・・」
麻里「バ・・・?」
悠人「バナナはゴリラが好き!!」
麻里「へ!?」

〇学園内のベンチ
悠人「あっ、いや・・・」
麻里「は、悠人くん急にどうしたの!?バナナはゴリラが好き・・・って逆じゃない?」
  ゴリラはバナナが好き、ならまだしも、バナナはゴリラが好きは意味不明だ。まるでバナナに意思があるみたい。
  いや、そもそもなんで急に悠人くんがこんなことを言い出したのかの方が気になるんだけど。
  私の困惑をそのまま読みとったかのように、悠人くんの顔にも焦りが浮かんでいる。
悠人「いやっ、じゃなくて!小澤は、俺が・・・」
麻里「え?私?」
悠人「お・・・」
麻里「お・・・?」
悠人「リマたんは親父が好き!!」
麻里「誰!?」

〇学園内のベンチ
  本気で分からない。リマたん・・・リマたん?たしか最近テレビで話題のアイドルの子だと思うが・・・
  リマたんって子がおじ様好きでも公言しているのだろうか?でもどうして今それを私に・・・?
  何故か満面の笑みの悠人くんは、その後もマシンガントークでよくわからない言葉を言い続けた。
悠人「仏像は岡村先生が好き!」
麻里「ぶ、仏像が!?解脱出来てなくない!?」
悠人「ムダ毛は明彦が好き!」
麻里「明彦くん毛に好かれてるの!?なんで昔流行ったギャグ漫画みたいなことに!?」
悠人「激怒はメロスした!!」
麻里「確かに激怒には政治が分からないだろうね・・・」

〇学園内のベンチ
  この辺りからだんだん私も慣れてきた。と言うより、何かがおかしいと気づき始めた。
  心無しか悠人くんの笑顔も引きつっているように見える。
  何か、何かが彼の身にあったのだ。困惑を通り越し、私は彼のことが心配でならなかった。
麻里「悠人くん、何があったの?もしかしてまた伊吹先輩が・・・」
  途端、悠人くんがはっと顔を引きしめた。
麻里「また伊吹先輩!?もー!あの人は!」
  憤慨して声を上げる。悠人くんもどこかほっとしたような表情で私を見つめていて、
悠人「そう、そうなんだよ・・・!小澤は俺が好き!!」
麻里「・・・・・・・・・・・・・・・へ?」

〇学園内のベンチ
  たっぷり三秒は間が空いたと思う。慣れてきた、なんて言葉をぶっ飛ばすほどの衝撃だった。
麻里「私が、悠人くんを、好き・・・」
悠人「そうそう!小澤が俺を好き・・・・・・・・・」
悠人「好・・・」
悠人「わぁぁぁぁ!?」
悠人「違っ、その、小澤が俺をじゃなくて俺が小澤をっ・・・あああー!!」
  もう一気に大混乱だ。悠人くんは顔を青くしたり赤くしたり大忙しした後、一言。
悠人「クソ野郎は伊吹先輩!!」
  と、言い残して去った。

〇学園内のベンチ
  沈黙。
  呆然と立ち尽くす私。今、何を言われたっけ。私が悠人くんを好きとかなんとか・・・
  ガサガサ、と背後の木陰から音がした。
伊吹先輩「うんうん、効果は上々。悠人に感謝だなー」
麻里「・・・伊吹先輩!!また悠人くんに変なもの飲ませましたね!?」
伊吹先輩「変なものとはなんだ。俺の偉大なる研究成果だぞ」
  だからそれが変なものなんだ、と私は胡乱な目付きで伊吹先輩を見つめた。
  この人──伊吹先輩は私と悠人くんの入っているサークルの先輩である。
  大変に優秀な方で学生の身にして既に数々の研究を成功させているのだが──
伊吹先輩「聞け小澤。先程の悠人の尊い犠牲──じゃなくて、殊勝な献身のおかげで新薬の名前が決まったぞ」
麻里「今犠牲って言いましたよね?」
  そう。この通り人を許可なく実験台にする悪癖がある。かく言う私もこの人には散々してやられてきた。
  今回の悠人くんの奇妙な様子からしてこの人の仕業だろうと思っていたが──やっぱりそうだったらしい。
伊吹先輩「新薬の名前はあべこべ薬だ。主語と目的語が倒置した状態で脳内が垂れ流しになる」
麻里「ああ、それで・・・」
  バナナはゴリラが好き、ではなくゴリラはバナナが好き。親父はリマたんが好き、明彦くんはムダ毛が好き・・・と言ったところか。
  ・・・こんな所で明彦くんの性癖を知りたくなかった。ごめんね明彦くん。
麻里「でもそんなもの何に役立つんですか。ただ変な事言う人が増えちゃうだけですよ」
伊吹先輩「言っただろ、主語と目的語が倒置した状態で脳内が垂れ流しになるって。これは変則的な自白剤だよ」
伊吹先輩「自分の言動に混乱してるうちに、自分の本心を全部吐き出してしまうというわけだ」
麻里「はあ。自分の本心を全て・・・」
  ん?
伊吹先輩「しかし、さっきの悠人のように、余計なことを考えることである程度自白を阻害できるようだ」
伊吹先輩「気が緩んだ時には結局本心をポロリとしてしまっていたがな。もう少し改良が必要か・・・」
  ブツブツ言いながら先輩はどこかに言ってしまった。また研究室にでも戻ったんだろう
  いや、それよりも。
  主語と目的語が倒置した状態で本心を自白してしまう。伊吹先輩は悠人くんに飲ませた薬の効果をそう言っていた。
  ある程度余計なことを考えて自白を阻害していたが、気が緩んだ時には結局自白してしまっていたと。
  気が緩んだ時・・・

〇学園内のベンチ
悠人「小澤は俺が好き!!」
  の、逆は。
悠人「俺は小澤が好き!!」
麻里「・・・・・・・・・えっ?」

コメント

  • 焦る彼と、頭に?が浮かんでそうなヒロインとの掛け合いがとっても面白かったです~!
    そして、逃げ出しちゃった彼が可愛くて可愛くて。ヒロインはもう彼のこと意識しざるをえないですね!
    もしここから恋が始まったのなら、あの先輩はキューピッドになるのか……?笑

  • 二人のやりとりがすごくおもしろかったです!
    逆になってたんですね。
    でも、こんな強力な自白剤ってすごいですよね。
    それを飲まされて告白とは…キュンしますね。

  • 自白剤を開発するなんて。凄い先輩がいたもんだ。これがあれば警察の取り調べも簡単でしょう。ノーベル賞ものです。彼の愛の告白を彼女は素直に喜ぶべし。

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