或る日 或る時

勿忘草

エピソード1(脚本)

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〇図書館
  図書委員日誌
  11月30日(木)天気(雨)担当(沢村)
  今日はあいにくの大雨。
  普段より図書室に来る人が少ない。
  本当はもう1人当番いるはずなのに
  今日は私だけ。嫌になっちゃう。
  でもなんか落ち着いた雰囲気が好き。
  しっかり今日も当番の仕事をする。
沢村澪「ま、こんなもんでいいかな。」
柊木周「・・・・・・」
沢村澪(あ、今日も来てくれてる・・・)
  あの人は1つ上の先輩。
  名前は知らないけど、毎週放課後に図書室に来てこうして読書している。
柊木周「・・・♪」
沢村澪(今日はミステリー小説か・・・ ってあれ、私も読んだことある本!)
沢村澪(せっかくだし、今日は話しかけてみようかな)
  実は、そんな彼に私は密かに恋をしている。
柊木周「あ、すみません。 返却をお願いします。」
沢村澪「はい!お預かりします。」
沢村澪「あ、あのっ この小説、面白いですよね! 私このシリーズ大好きなんです。」
柊木周「へ〜 これ、シリーズ物だったんだ。」
沢村澪「そうなんです! 良かったら他のも借りていきませんか?」
柊木周「じゃあ、お言葉に甘えて。 君のおすすめの本を借りたいな。」
柊木周「あ、そういえば自己紹介がまだだったね」
柊木周「僕は柊木周(ひいらぎあまね)。 君は?」
沢村澪「沢村澪(さわむらみお)です! よろしくお願いします」
柊木周「それじゃあ、澪ちゃん。 君のおすすめの本を教えて?」
沢村澪「私のおすすめの本は──」
  その日から、私は柊木先輩におすすめの本を紹介するようになった。

〇図書館
  1月12日(木)天気(晴れ)担当(沢村)
  今日はとても寒い日。
  手が乾燥してなかなか本がめくりにくい。
  ちなみに、あと2ヶ月で3年生が卒業する。
  ちょっと寂しいな・・・
沢村澪「よし、書けた。」
沢村澪「ていうか、もうそんなシーズンか。 早いなー。」
沢村澪「柊木先輩、3年生だし今年で卒業か・・・」
沢村澪(自分の気持ち、伝えなきゃだけど・・・)
柊木周「どーも。こんにちは。」
沢村澪「あ、柊木先輩!こんにちは。 今日は貸し出しですか?」
柊木周「今日は、僕が本をおすすめしようと思って。」
沢村澪「えっ?」
沢村澪「ぜひぜひ! 先輩のおすすめの本、知りたいです!」
柊木周「ありがとう。 澪ちゃんならそう言ってくれると思ったよ。」
沢村澪「・・・この本は?」
柊木周「「或る日 或る時」って本。 ミステリーでは無いんだけど、メッセージ性が素敵で好きになってね。」
沢村澪「へー! どういうメッセージがあるんですか?」
柊木周「今、この瞬間は「或る日」でも、「或る時」でもあるわけだよね?」
沢村澪「はい。」
柊木周「こうして澪ちゃんと本の紹介をし合っているのも、「或る日 或る時」。」
柊木周「だから、僕はこの本を読んでね、これからの「或る日 或る時」を大切にすることにしたんだ。」
沢村澪「「或る日 或る時」・・・」
沢村澪「先輩、この本借りてもいいですか? 読んでみたいです!」
柊木周「もちろん。貸すつもりだったから、いいよ。」
沢村澪「ありがとうございます。」
  初めて柊木先輩から本を紹介された。
  「或る日 或る時」という本、とても楽しみ。

〇図書館
  1月19日(木)天気(晴)担当(沢村)
  今日は夕日がとても綺麗。
  空がオレンジ色だったり紫色だったり・・・
  たまには委員会の仕事をサボって
  ぼーっと夕日を眺めるのもありだな。
沢村澪「・・・」
柊木周「こんにちは。」
柊木周「あっ──」
柊木周「読んでくれてるんだ・・・」
沢村澪「あ、せ、先輩!? ごめんなさい!気づかなくて!!」
柊木周「大丈夫だよ。 その本、読んでくれてるんだね。」
沢村澪「はい。 とても素敵な本でした。」
沢村澪「先輩の言っていたことが この本を読んでより理解出来ました・・・」

〇図書館
柊木周「今、この瞬間は「或る日」でも、「或る時」でもあるわけだよね?」
柊木周「だから、僕はこの本を読んでね、これからの「或る日 或る時」を大切にすることにしたんだ。」

〇図書館
沢村澪「夕日をぼーっと眺めているのも、 私が読書をするのも。」
沢村澪「こうして先輩と本の紹介をし合っているのも 全部「或る日 或る時」なんですよね。」
柊木周「・・・うん。そうだね。」
沢村澪「私、「或る日 或る時」に後悔したくない。」
柊木周「ん?」
沢村澪「先輩。伝えたいことがあります。」
沢村澪「私──」
沢村澪「私、先輩のことが好きです。」
柊木周「えっ・・・」
沢村澪「先輩が、好きです。 付き合ってくれませんか?」
柊木周「・・・」
柊木周「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
沢村澪「えっ?!良いんですか?」
柊木周「実は僕も澪ちゃんのこと気になってたんだ。」
柊木周「だから今、すっごく嬉しい!」
沢村澪「ではまた、改めまして・・・ よろしくお願いします!」
柊木周「よろしくお願いします。」

コメント

  • 共通の趣味から話が広がり意気投合。
    恋愛の鉄板ですが、鉄板だからこそ心に感じますねえ。
    こんな良い青春を過ごしたかった…(後悔)

  • 本との出会いは偶然だったりしますが、先輩から借りた本は必然だったような気がします。
    彼女の思いが届いて本当によかったです。
    卒業式までカウントしていって、どうなるのかな?って思ってたので。

  • 一冊の本が誰かの背中を押すことってこういうことなんだなあと、澪ちゃんの勇気に感激しました。何気に過ごす一日、一瞬をもっと尊い時間と意識すると毎日が充実しますね。

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