『キュン』ってしたらお前の負け!

天りょう

読切(脚本)

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〇居酒屋の座敷席
  それは、突然始まった遊びだった。
一条 誠「キュンってしたら、負けのゲーム」
一条 誠「せえへん?」
「・・・はい!?」

〇居酒屋の座敷席
  都内某所でセッティングされた合コン。
「ずいぶん相手も居ないんだし、参加するのもありじゃない?」
  という友人の誘いに、数分迷って参加の意思を示した。
  だが・・・。
(やっぱり苦手だな・・・)
  もともと飲み会が苦手な私。
  だが、御年26歳にもなって彼氏の一人もいないとなると、さすがに焦りも出てくるわけで。
モブ男「玉木ちゃん、飲んでる?」
「あはは、はい・・・」
(もうすでに帰りたい)
  参加したことを軽く後悔し始めていたその時、壁を隔てていた襖がガラ・・・と開いた。
一条 誠「悪い悪い。遅れてもうた」
一条 誠「って、あれ・・・」
  顔を出した男は、こちらに視線を向けている。
(ま・・・まずい!)
  向けられた視線から逃げるように、思いっきり顔を背ける。
「どうした?」
一条 誠「・・・や、何もない!俺の席どこや?」
  遅れてやってきた男はそう言って、上着を脱いで席へと移動していく。
(び・・・びっくりした!)
  この男、一条誠は、大学時代の同期だ。
  関西からの上京組で、社交的でよく友達に囲まれていたのを覚えている。
(よりによって、何でこんなところで・・・!)
(とりあえず、極力顔を合わせないように・・・)
  知り合いがいる合コンが、いかに気まずいことか。
  こうして私のドキドキの合コンがスタートした。

〇居酒屋の座敷席
  一時間経過──。
「そろそろ席替えする?」
  という幹事の言葉に、男性陣が席を移動し始める。
(よかった・・・。さっきの人、やけに近くて苦手だったんだよね)
  ホッと胸を撫でおろしていたその時。
「隣ええ?」
「あ、はい・・・あ」
一条 誠「あ、って(笑)明らかにゲッて顔したやん」
  そう笑いながら、一条君は腰を下ろす。
一条 誠「久しぶりに会うたのに、えらいよそよそしいなぁ」
一条 誠「玉木ちゃん?」
「なっ・・・気づいてたの!?」
一条 誠「そらあんだけ目ぇ逸らされたらな」
一条 誠「まぁせっかく再会したことやし、ちょっと遊ばへん?」
「遊ぶ?」
一条 誠「合コンって出会いの場やん?」
一条 誠「でも俺らは昔っからの知り合いやし」
一条 誠「普通に喋っとってもおもろないやんか」
一条 誠「せやから──」
  一条誠は、私の耳元に口を寄せ、吐息交じりにこう言う。
一条 誠「キュンってしたら、負けのゲーム」
一条 誠「せえへん?」
「・・・はい!?」
  素っ頓狂な提案に、思わず体を引いて怪訝な表情を浮かべる。
一条 誠「そない距離取らんでもええやん」
「いや・・・いきなり何を言い出すのかと」
一条 誠「いきなりちゃうよ?」
一条 誠「さっきも男と話してるん見て」
一条 誠「何仲良く話してるんやろな思て」
一条 誠「気が気じゃなかったわ」
「んぐっ!!!?」
  危うく飲んでいたカシスオレンジを盛大に吹き出すところだった。
「そういうの心臓に悪いんだが!?」
一条 誠「お、キュンてした?」
「~~!!してない!!」
一条 誠「ほんまに?顔赤いで」
(誰のせいだと!)
  揶揄われているのか、なんなのか。
モブ男「すげー親し気じゃん。俺も混ぜてよ」
  間に入ってきたのは、私とさっき話してた男だった。
一条 誠「昔馴染みやねん」
モブ男「まじか!」
モブ男「こんな美人と知り合いだとか、紹介しろよ誠!」
一条 誠「嫌やわ~俺かて狙ってんもん」
モブ男「お前にはほら、あっちにいっぱい女居るから」
  そう言って、男が指さす方向へ視線を向けると・・・・・・。
「うわ・・・」
  ジトッとこちらを見ている、複数名の女の子。
モブ男「大本命の誠が玉木ちゃんにべったりだから妬いてんだよ」
モブ男「モテる男はこれだから!」
一条 誠「そない言われてもなぁ」
モブ男「俺が玉木ちゃんの相手するから、お前はあっち行った!」
  そう言って男が私の肩に手を乗せようとしたその時──
一条 誠「ごめんけど、俺んやから」
  男の手首を掴み、淡々と言う一条君。
一条 誠「他の男にはやれへんわ」
モブ男「お・・・おう」
  凄みに圧倒された男は、そそくさと席を立って行ってしまった。
一条 誠「・・・・・・」
「・・・・・・」
(何だこの重い沈黙は・・・)
一条 誠「あー、玉木ちゃん、この後時間ある?」
「いや、真っすぐ帰るけど」
一条 誠「ほな、今からちょっとだけええ?」
  そう言って、一条誠は私を外へ連れ出した。

〇店の入口
  私たちは、幹事に一言告げて外に出た。
  夜風がひんやりと気持ちいい。
一条 誠「外は冷えるなぁ」
一条 誠「玉木ちゃん大丈夫?」
「うん、平気」
一条 誠「さよか」
一条 誠「・・・あのさ」
一条 誠「俺と付き合わへん?」
「え・・・」
一条 誠「黙っとこ思てんけど」
一条 誠「今日合コン参加したんも玉木ちゃんおるいうから来てん」
一条 誠「ほんまは行く気無かってんけど」
一条 誠「参加するメンツ聞いたら知っとる子おるし」
一条 誠「なんならずっと好きやった子やし」
一条 誠「運命やろって思たわ」
(それって・・・)
一条 誠「・・・でも誰かさんは目ぇ合うたら思っきり逸らすし」
一条 誠「挙句の果てには他の男と仲良う話してるし」
「いや、それはあっちが無理やり・・・」
一条 誠「なぁ、俺やアカン?」
  少し先にいた一条誠がくるりと振り返り、こちらを見つめる。
「一条君モテるのに、なんで私なの?」
一条 誠「アホ」
一条 誠「好きに、理由なんかいらんやろ」
  そう言って、一条誠は私の頬を包み込み、まっすぐ瞳を見つめた。
  吐息がかかるその距離に、顔が火照る。
一条 誠「・・・好きや」
  近づいてくる唇に、そっと目を閉じる。
一条 誠「チュ・・・」
  辺りが静かなせいか、リップ音がやけに耳に残る。
一条 誠「もう、合コンなんか参加せんといて」
  懇願するように、少し眉を下げて言う一条君。
「・・・ふふ」
一条 誠「なに笑てんねん」
「今のキュンってした」
一条 誠「え・・・」
「私の負け」
一条 誠「・・・わっせとったわ」
  そう言って呆れた顔を見せて、一条君はもう一度私にキスをした。

コメント

  • めっちゃキュンキュンしました!ゲームは彼の作戦だったのですね。方言ってのもめっちゃ好きでした!こんなに愛しい「アホ」って一言あります?
    あー、言われたい!
    素敵なキュンをありがとうございました!このお話大好きです!!

  • か、かっこいい...!ゲームから告白までの流れがスムーズで、モテる男はすごいなぁと思いました。

  • 甘いっすね、きゅんを普段から気づかずやってる、きゅん族は、あたたたたたたってきゅんを繰り出せるんですね。
    イケメンか数打ちゃ死にまっせ。

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