月夜の告白

れいか

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〇学園内のベンチ
東雲葉月「あ、おはよう慎也!」
水上慎也「ん、おはよう東雲!」
  私はどこにでもいる普通の大学生、東雲葉月。
  水上慎也は高校生の頃からの友人であり、同時に私の片思いの相手でもあった。
  告白する勇気もない私は接点を持っておこうと思い同じ大学に入ろうと決意した。
  しかし、慎也はとても真面目な上、学校一の成績優秀者だったため、同じ大学に入るのにはとても苦労した。
  せっかく同じ大学に入れたので、何とかして在学中に告白したいものだ
水上慎也「どうした?さっきから俺の事ガン見して? あ、もしかして顔になんか着いてる?」
東雲葉月「あっ、いや・・・そうゆう訳じゃないの。 ちょっとぼーっとしてただけ」
水上慎也「そっか。ならいいんだけど」
水上慎也「──あ、そろそろ授業始まる時間じゃないか?」
東雲葉月「え、あほんとだ! じゃあ私行くね。ばいばい!」
水上慎也「おう。気をつけて行けよ!」

〇学園内のベンチ
  ──授業後
東雲葉月「あー!終わったぁ!」
桐崎結衣「ちょっと葉月。 声が大きいわよ」
東雲葉月「ああ、ごめんごめん」
  彼女、桐崎結衣は大学からの友人だ。
  しっかり者でとても優しいので、相談者が後を絶えないという。
  そんな私も、以前恋愛相談を持ちかけたことがあるため片想いについてはよく知っている。
桐崎結衣「わかったならいいわよ」
桐崎結衣「あ、そうだ! これから一緒にカラオケでも行かない?」
東雲葉月「お!いいね!いこいこ!」
  と、歩き出した時、正門近くに慎也と大学生が話しているのが見えた。
大学生「よぉ、慎也!」
水上慎也「おーお疲れ!どうした?」
大学生「今から一緒に飯でもどうかと思ってよ!」
水上慎也「お!いいな!いこうぜ!」
水上慎也「・・・」
東雲葉月「──え?」
東雲葉月(──今、一瞬苦しげな表情になったような・・・気のせいかな?)
桐崎結衣「葉月?どうしたの? ──ああ、もしかしなくても慎也君見てたの?」
東雲葉月「え! ──まぁ、そうなんだけど・・・」
桐崎結衣「──なんか気になることでもあったの?」
東雲葉月「なんか、一瞬慎也が苦しげな表情をしたような気がしたの。 気のせいだといいんだけど・・・」
桐崎結衣「そう・・・ とりあえず、様子を見てみたら?葉月の思い違いかもしれないし」
東雲葉月「わかった。そうしてみる」

〇学園内のベンチ
  翌日
東雲葉月「おはよう慎也!」
水上慎也「ん?ああ、東雲か。おはよう」
水上慎也「そういや、昨日は授業間に合ったのか?」
東雲葉月「うん!大丈夫だったよ!」
水上慎也「そっか、ならいいんだけど 次から気をつけろよー」
東雲葉月「うん!」
東雲葉月(うーん、特に変わった様子はないな・・・ やっぱり私の見間違いだったのかな?)
水上慎也「・・・」
東雲葉月(!!)
東雲葉月(今、苦しげな表情になった・・・ やっぱり何かあったのかな・・・)
東雲葉月「ねぇ、慎也・・・」
水上慎也「ん?どうした?」
東雲葉月「大丈夫?」
水上慎也「・・・え?」
東雲葉月「今、辛そうな顔してたから。 何か悩みでもあるのかと思って」
水上慎也「あー、まぁな・・・」
東雲葉月「・・・良かったら、話聞くよ?」
水上慎也「でも・・・」
東雲葉月「お願い。力になりたいの」
水上慎也「──わかった。じゃあ、授業後に大学近くの公園に来てくれ」
東雲葉月「わかった」

〇広い公園
  ──授業後、公園にて
  公園に着くと、既に慎也はベンチに座っていた。
  その背中は、別人かと疑うほどに弱々しく見えた。
東雲葉月「慎也」
水上慎也「ああ、東雲か。 来てくれたんだな」
東雲葉月(!?)
  振り返った慎也の顔は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
東雲葉月(あのいつも笑顔を浮かべている慎也がこんなに辛そうにしてるなんて・・・)
  私は率直な感想を悟られないよう、必死に表情を取り繕った。
東雲葉月「もちろんだよ」
東雲葉月「──ねぇ、隣座ってもいいかな?」
水上慎也「──ああ、いいよ」
  少しの沈黙の後、慎也は口を開いた。
水上慎也「──なぁ、東雲」
東雲葉月「──?」
水上慎也「──俺が本当は、本心の通りに生きてないって言ったら幻滅するか?」
東雲葉月「──え? それって、どうゆう事?」
水上慎也「言葉通りの意味だ。 俺は本当は、自分から進んで勉強していた訳じゃない。周りから好かれたいってだけで色々やってきたんだ」
  それから慎也は、視線を地面に落としぽつぽつと語り出した。
水上慎也「俺は、昔から両親や親戚なんかにいい点数をとる度に『慎也はいい子だね』といつも言われてきた」
水上慎也「周りが言う『いい子』は頭が良くて愛嬌がある子のことだと分かっていた。だから俺はいい子でいようと努めた」
水上慎也「でもある時、テストで点を落としてしまったんだ」
水上慎也「家に帰ってテストのことを報告したら、家族の目が一瞬で冷たくなった」
水上慎也「その時、俺は悟ったんだ。 家族は、”いい子の水上慎也”を求めているんだって」
水上慎也「いい子じゃない”水上慎也”は求められていないんだって」
水上慎也「それから俺は愛されたいがために必死で『いい子』を演じてきた。したくもない勉強をしたり、面白くないのに笑ったりね」
水上慎也「でも最近、笑うのが辛くなってきててさ。 だから東雲が見た通り、たまにああなっちゃうんだよ」
東雲葉月「そうだったんだ・・・」
水上慎也「・・・これが俺が抱えていたことだ。 それを踏まえた上で、東雲に聞きたいことがある」
東雲葉月「?」
水上慎也「東雲は、本当の俺を知った上でまた俺と仲良くしてくれるか?」
  慎也は今にも崩れそうな表情で私の目を見て聞いてきた。
  そんなの、何年も前から答えは決まっている。彼がどんなことを抱えていたとしても私の気持ちは変わらない。
東雲葉月「もちろんだよ!」
水上慎也「!!」
水上慎也「・・・ありがとな”葉月”」
  そういうと慎也は私を腕の中に引き寄せた。
東雲葉月「わっ!ちょっと慎・・・!」
  抱きしめられた瞬間、慎也の体が少し震えているのがわかった。
東雲葉月(何か言うのは野蛮かな・・・)
  私は慎也の背中に腕を回した。
  2人が抱き合う公園の空の上には、丸い月が浮かんでいた。

コメント

  • 一瞬の表情も見逃さず、微妙な心情の変化も気づいてくれる友人、恋人、家族が一人でもいたら幸せですね。そういう人に全てを打ち明けたくなる気持ちとてもわかります。彼女によって彼の疲れた心が癒されますように。

  • いつか大切な思い出として二人で振り返ることができそうな、瑞々しくて素敵なお話ですね。夜はこういう打ち明け話をしちゃうな〜って、なんだか分かる気がしました。

  • 彼のことが好きでいつもそばにいる彼女だからこそ彼の悩みに気づいたんでしょう。彼の苦しみや悲しみは誰が解決してくれるのか。それは彼女かな?

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