今日こそ好きって言わせて!(脚本)
〇シックなカフェ
篠崎 花「ふう・・・ 今日もがんばったぞー!」
ここは私の大切な場所
おばあちゃんから引き継いだ『大安吉日カフェ』
ありがたいことに今日も大盛況だった
綾戸 瞬「花さーん、フロア掃除終わりました」
篠崎 花「あ、瞬くん、ありがとう・・・! 今日もお疲れさまでした!」
綾戸 瞬「春休みあけてから、女子高生どっと増えましたね」
綾戸 瞬「せっかくだから花さん、映えるメニューもっと増やしたらどうっすか?」
篠崎 花「うん、そうだね! 瞬くん・・・また味見役してくれる?」
綾戸 瞬「もちろんっす! 花さんの頼みならいつでも!」
彼の名前は綾戸瞬くん
大学二年生
一年前から、『大安吉日カフェ』で働いてくれているアルバイトさんだ
正直に言うと・・・一年前、面接に来てくれた彼はとてもチャラくて、あまり期待していなかった
綾戸 瞬「うっわ!お姉さん、可愛いっすね! 俺、あなたと一緒ならマジでバイト頑張れそうです!」
あのときはちょっとびっくりしたけれど、瞬くんの働きっぷりは本当に素晴らしかった
やっぱり人は見た目じゃないよね。
今では一番頼りにしている仲間だ
篠崎 花(それにしても瞬くん)
篠崎 花(女子高生にキャーキャー言われてるし、最近瞬くん目当てにくる子も多いんだよね)
篠崎 花(出会った時よりも背が伸びて、もっと格好よくなったな)
篠崎 花(大学でもきっとモテてるんだろうな)
綾戸 瞬「あの花さん、今朝から気になってたんすけど、それわざとっすよね?」
篠崎 花「え?」
綾戸 瞬「靴下、右と左違うの穿いてるの」
あっ!?
し、しまった~~~~!?
篠崎 花「あ、あのこれは最先端のオシャレを兼ねたおまじないなの! 右と左を違う靴下にすると、人生大吉! 大安吉日!」
篠崎 花「なぁんて、あははっ!」
篠崎 花「しゅ、瞬くんもやってみる?」
・・・
・・・
ち、沈黙が痛い!!
綾戸 瞬「ぷっ・・・・・・あはははっ!」
綾戸 瞬「それいいっすね! 俺も大吉になるように明日から違うの履いてきます! あはははっ!」
篠崎 花「もう、瞬くん笑いすぎ!!」
篠崎 花「ていうか、ごめんなさい。ただ間違えただけです」
綾戸 瞬「素直でよろしい! 俺、ほんと花さんそういうとこすげぇ好──」
篠崎 花「んっ?」
綾戸 瞬「じゃなくて、最高だと思います!」
篠崎 花「いつもフォローしてくれて、ありがとね、瞬くん・・・・・・」
綾戸 瞬「いえいえ、こちらこそどうも。 ・・・・・・はぁ」
〇海岸線の道路
篠崎 花「わざわざ送ってくれてありがとう」
綾戸 瞬「お礼なんていいんすよ、花さーん」
綾戸 瞬「それよりバイトの時給一億円に上げてくれれば──」
篠崎 花「却下します」
綾戸 瞬「あはっ! 花さん、きびしー!」
篠崎 花(まったく 瞬くんはいつもからかうんだから)
篠崎 花(でも、そうやっていつも笑っている瞬くんが私は・・・・・・)
綾戸 瞬「冗談はこれくらいにして・・・ あの、花さん、いつもの相談いいっすか」
ずきっと胸の奥が痛んだ気がした
篠崎 花「も、もちろんいいよ!」
篠崎 花「恋のお悩みは、『花お姉さん』にどーんと任せて!」
強がりも慣れたものだ
篠崎 花(かれこれ一ヶ月前から、瞬くんの恋愛相談にのってるもんね)
篠崎 花「え、えーと 瞬くんが好きな女の子は、鈍感で、素直で、おっちょこちょいで、笑顔が可愛くて・・・あとなんだっけ?」
綾戸 瞬「それに、いつも一生懸命な人です」
瞬くんの本気な気持ちが伝わってくる
今すぐここから逃げ出してしまいたい
綾戸 瞬「俺、その人に軽い態度ばかりとっちゃってて あんま真剣に受け止められてないみたいなんです」
篠崎 花「そ、そっか」
綾戸 瞬「だから、今日告白しようと思ってます」
篠崎 花「今日?!!?!?」
綾戸 瞬「はい」
篠崎 花「きょ、今日かぁ・・・・・・」
篠崎 花「今日は仏滅だし、明日がいいんじゃないかなぁ!?」
篠崎 花「明日は大安吉日だよ!」
綾戸 瞬「・・・」
綾戸 瞬「・・・」
綾戸 瞬「マジで言ってます?」
篠崎 花「は、はい」
綾戸 瞬「はぁああ・・・・・・」
篠崎 花「瞬くん?」
綾戸 瞬「了解っす 大安って大事ですよね 出直してきます」
篠崎 花「う、うん! 頑張ってね! 応援してるから!」
〇シックなカフェ
篠崎 花(はぁ)
モブ従業員「花さん、お疲れっした! お先に失礼します!」
篠崎 花「あ、お疲れさまでした!」
篠崎 花(ふう)
篠崎 花(昨日は瞬くんに変なこと言っちゃった)
篠崎 花(今頃、告白してるのかな?)
篠崎 花(あれだけ優しくて格好良くて笑顔が素敵な 瞬くんなら、きっとうまくいくよね)
篠崎 花(次に会ったら、笑っておめでとうって言ってあげよう)
篠崎 花(私の気持ちは胸の奥のほうにしまい込んで・・・・・・)
綾戸 瞬「こんばんは 花さん」
篠崎 花「しゅ、瞬くん!? どうして?」
篠崎 花「今日はシフトがない日なのに・・・」
綾戸 瞬「今日、大安吉日ですよね?」
篠崎 花「えっ?」
綾戸 瞬「俺、ちゃんと靴下も右と左で違うの履いてきました これでもっと人生大吉、大安吉日ですよね?」
まるで怒ってるみたいに瞬くんが言う
私は戸惑いながら、瞬くんを見上げた
篠崎 花「あの、瞬くん?」
綾戸 瞬「俺、花さんが好きです」
一瞬、何もかも聞こえなくなった
心臓が痛いくらい鳴って、息すらできない
篠崎 花「今・・・・・・な、なんて?」
綾戸 瞬「会った時から外見が好みだった でも花さんの中身を知ったら、もっともっと好きになった」
綾戸 瞬「年下で頼りないかもしれないけど、俺は真剣です」
綾戸 瞬「答えはいつまでも待ってますって言いたいところだけど・・・・・・ できれば今すぐほしい」
篠崎 花(まるで夢みたい 瞬くんも私を好きだなんて)
篠崎 花「わ、私も!」
篠崎 花「私も瞬くんが好き!!」
綾戸 瞬「マジで?」
篠崎 花「うん」
瞬くんが私の手に触れる
綾戸 瞬「俺の事好き?」
篠崎 花「うん」
綾戸 瞬「俺も好きだよ、花さん」
綾戸 瞬「・・・キス、してもいい?」
篠崎 花「そ、それは次の大安吉日でお願いしますっ・・・・・・!」
綾戸 瞬「あはは!」
綾戸 瞬「おっけ!」
瞬くんが耳元で囁く
綾戸 瞬「次の大安吉日、覚悟しておいて」
綾戸 瞬「ね、花さん♪」
篠崎 花(こんなの・・・・・・心臓がもたないよ〜!)
大安吉日ってあらためて素敵な言葉ですね。チラッと登場したモブ従業員に二人のことをインタビューしたくなりました。気づいてなかったのは本人たちだけで、周りの人は二人が両想いなことをとっくに知ってて、「あの二人またイチャイチャしてら」とか思ってたはず。
花さんの鈍感さが可愛いだけでなく、始終ふたりのやりとりの中に、もどかしさと優しさとなかなか言い出せない恋心が混ざり合っていてほんわかした世界観がありました。何度もリピしたいお話。靴下のおまじない、私もやろうかな♪
すれ違っている間の花の心情が切なくて、健気に『お姉さん』を演じる花に泣けてきました。
ああ、違うんだよ!瞬くんが好きなのは~!!と老婆心で声をかけてあげたくなっちゃいました😭
瞬くんが怒りながら靴下色違いで履いてくるラストが可愛かったです~✨
とっても素敵なキュンをありがとうございました!もうね、最高でした!私このお話大好きです!!