失恋の先で待っている人(脚本)
〇見晴らしのいい公園
湊人「はぁ、はぁ、 ・・・・・・やっぱりここにいた」
湊人「予想を裏切らないひでー顔だな。 とりあえず、これで涙拭け」
湊人「何で場所がわかったかって?」
湊人「わかるよ。 お前落ち込んだら、 いつもこの高台に行くだろ」
湊人「昔から変わらない習慣だよな。 お陰で連絡つかなくても、 一発で見つけられた」
湊人「伊達に20年近くも、 お前の幼馴染してないからな」
湊人「てか、こんなに遅い時間に、 一人でいると危ないだろ」
湊人「一応女なんだから、気を付けろよな」
湊人「あと、携帯の電源まで落とすな」
湊人「お前が帰ってこない上に、 連絡がつかないって、 おばさん心配してたぞ」
湊人「・・・お前が素直に謝るなんて珍しいな。 明日は嵐か?」
湊人「ははっ、ツッコミの声ちっさ」
湊人「いいよ。 おばさんには、俺が連絡しておく」
湊人「『失恋で傷心中の娘さんを見つけました。 後で送り届けるので、ご心配なく』」
湊人「――よし、送信!」
湊人「泣くか怒るか驚くか、 どっちかにしろよ。 忙しい奴だな」
湊人「おばさんに連絡したのは本当だけど、 失恋云々は抜かしたから怒るなって」
湊人「お前が落ち込んでる理由、 俺が知ってることに驚いたんだろ」
湊人「・・・俺さ、知ってたんだ。 先輩に彼女がいること」
湊人「話そうかどうか、ずっと悩んでた」
湊人「お前の傷つくとこ、 あんまり見たくないしさ」
湊人「意外って・・・。 失礼な奴だな」
湊人「たしかに俺はお前と違って、 他人に対して淡白な方だよ」
湊人「でも―― 大事に思っている奴は別」
湊人「え・・・? じゃねーよ。 絶対聞こえてただろ」
湊人「耳まで真っ赤にすんの止めろ。 ・・・お前のそれ、俺にも移る」
湊人「・・・・・・・・・・・・」
湊人「・・・はぁ。 もっといいムードで、 言う予定だったんだけどな」
湊人「先輩が原因で、 泣いてる姿を見せつけられるの スゲー腹立つから、路線変更」
湊人「俺、お前のことが好きだ」
湊人「ずっと前から、 お前のことだけを見てた」
湊人「・・・お前が俺のこと、 幼馴染としか見てないのは知ってる」
湊人「お前が好きになる男と、 俺のタイプ全然違うし」
湊人「やたらキラキラした、 爽やか風な男にばかり惹かれるの いい加減止めろ」
湊人「俺とタイプが違い過ぎて、 お前の好みに寄せようにも、 無理があるわ」
湊人「そろそろお前が好みを俺に寄せろ。 そうすれば全部解決する」
湊人「・・・だから、照れるの止めろって」
湊人「いつも騒がしいくせに、 黙られると調子狂う」
湊人「は? ズルい?」
湊人「弱っているときに、 告白してくるなんて、 ズルいって・・・」
湊人「・・・ばーか」
湊人「弱っているからこそ、 攻めるんだろうが」
湊人「ズルい手なんて、 いくらでも使ってやるよ」
湊人「お前が少しでも 俺を気にかけてくれるなら、 ・・・何だってしてやる」
〇見晴らしのいい公園
湊人「・・・なぁ、俺なら絶対にこんな風に、 一人で泣かせることなんてしない」
湊人「お前を傷つけて、 高台へ行かせるようなことなんてしない」
湊人「俺のこと淡白だなんて、 二度と言えなくなるほど、」
湊人「今までよりもずっと近くにいて、 甘やかしてやる」
湊人「だから―― 真剣に考えてほしい」
湊人「少しでも可能性があるなら、 俺はそれに賭けたい」
湊人「すぐに答えを出せとは言わない」
湊人「俺はお前に関することは、 気が長いほうなんだ」
湊人「年季入ってるから、 信頼していい」
湊人「・・・お、やっと泣き止んだな」
湊人「おばさん待っているだろうし、 そろそろ帰るぞ」
湊人「立てるか? ほら、手貸してやる」
湊人「よっと・・・。 おし、じゃあ帰──」
湊人「・・・・・・・・・」
湊人「・・・あのさ、」
湊人「このタイミングで手を離されないのは、 少し・・・いや、結構期待すんだけど」
湊人「・・・ん。 なら家着くまで、このままで」
湊人「はぁ。お前の前だと、 調子が狂ってばっかりだ」
湊人「さっき気が長いとか、 言ったばっかりだけど ・・・前言撤回」
湊人「いい返事なら、なるべく早くな」
湊人「・・・待ってる」
湊人「・・・・・・――っ」
湊人「あー! もうこの空気限界!」
湊人「な、お前もそうだろ?」
湊人「はは、やっぱり。 こういうところは、気が合うよな」
湊人「おし、家まで走るぞ」
湊人「安心しろ。 途中でべばったら、俺が引っ張ってやる」
湊人「置いて行ったりしねーよ」
湊人「よっしゃ、行くぞ!」
〇土手
湊人「お・・・」
湊人「月・・・綺麗だな」
会話の内容が素直に頭に入ってきて自分の中でイメージが膨らみながら最後まで読ませて頂きました。あんな風に素直になれたらいいな、、、うらやましいですよね。
会話調だとまるで自分に話しかけられているようでドキドキが増しますね。自分をいつも気にかけてくれる幼なじみ兼未来の恋人?がいて彼女は幸せものですね。幸せは案外身近にあるってこういうことを言うのでしょうね。
自分語りというか、自意識を相手に伝えるのが上手だなぁと思いました。ここまで自分を曝け出すというか、素直に気持ちが言えるのも、若い子の特権なのかもしれません。