エピソード6『赤い炎の中に』(脚本)
〇洋館の一室
【2033年、イバラキ。『ヒト腹創』】
『ジョーカー』は良い男だった。そこに憧れを抱いだいたのは、たぶんボクだけじゃないはずだ。
楽々「お~いみんなぁ~! 『ババ抜き』しよ! 『ババ抜き』!」
タタミ「わたしもやる」
みれい「『祈ねぇ』も一緒にやろう! ほらほら、『ジョーカーさん』も!」
祈「はいはい!」
ジョーカー「ババ抜きか。懐かしいね」
手を掲げ、札を投げ合い、数少ない娯楽をボクらと『ジョーカー』は共有した。春の高い空の下、笑い、歌い、皆と一緒に。
〇荒廃した街
その日『ジョーカー』は、所用のため街を離れた。外せない用事だと言い、ヘリの中へ消えていく。そんなタイミングだった。
陽が落ちようとする中、空を舞う船から火器を持った兵隊たちが一斉に降りてきた。
足で戸を蹴り、手に持った火炎放射器が街へ、建物へ次々と火を点けていく。
『みれい』『楽々』『タタミ』、『化けクリ』メンバーが各個撃破に向かう。その火を抑え込もうと皆が奔走する。
ボクは言い知れぬ予感を覚え自宅へ急いだ。ものすごい不快感が胸を締め付けてくる!
それがコレだった。戻ってきたボクの前でソレは行われた。
〇荒廃した街
崩れ落ちた我が家の上、その踏み抜かれた瓦の中心で『祈姉ちゃん』の胸に剣が突き立てられていた。
死に逆らうように、祈姉ちゃんの命のしぶきが辺りへほとばしる。
歯車フォーチュン「脆いねぇ。軽くチカラを加えただけで、ヒトは簡単に命を垂れ流す」
姉ちゃんを刺したのは、鳥仮面の男――『フォーチュン』――だった。
姉ちゃんは目をむきビクリ、と地を跳ねた。
ツクル「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「覆水盆に返らず。命とはそういうモノだよ。溢れた命は決して元に戻らない」
遠く何処かで『フォーチュン』が笑う。『フォーチュン』はボクたち、死に、一方で泣きわめく姉弟を嘲け笑い倒した。
全てが燃えてしまった。こんなたった一瞬の事で全てが、ボクたちの全てがこの世界から果てようとしていた。
嘘だと思った。そんなひどい事は無いだろう。と。
ツクル「――ボクたちはナンデ、何の為に生きてきたんだ? 歳を重ねても許されないのか?」
ツクル「――何でボクタチバカリガ・・・・・・」
終わりを告げる世界、その先から独りの影が歩んでくる。一歩ずつその、チカラに満ちた身体を、ボクの前へ進ませていた。
彼はその鋭い刀を上段に構える。
気迫とその太刀筋でこの街を滅ぼした『フォーチュン』を追い払った。
その力強い、でも繊細に動く指、引き締まった腕は幼い頃から憧れていた『父さん』のモノ!
──ボクの顔の前へ、『父さん』はその逞しい腕を伸ばした──
ジョーカー「私を父と呼ぶなら、・・・・・・おいで私の元へ」
『父さん』はキメラの血を浴び緑色に染まったボクを見て、こう言ったんだ。
ジョーカー「緑色のキミ。新しい私の家族。その名を、・・・・・・『グリーン・ブラザー』とする」
〇荒廃した市街地
【2033年、イバラキ。『言霊 みれい』】
赤赤く、火の粉を散らし私たちの街が燃えていく。
今まで守ってきたモノが、ほんの数時間前まで人の居た街が、その全てを赤に染めていく。辺りには逃げ惑う人の姿すら無かった。
『創』の姿も、『祈ねぇ』の姿も見当たらない。
『ヒタチナカ』の皆を救おうと燃え盛る街を奔り、声をかけこの手を伸ばした。けれど救えたのは数人で、数匹で、
それでも疲れきり帰ってきた我が家の上に居たのは、『創』でも、『祈ねぇ』でも無かった。
歯車フォーチュン「『創くん』はアノ男が連れていったか。なら仕方ない、私はこれで我慢するとしよう」
クマ型のキメラが『剛おじさん』を運んでいく。
あの、『歯車フォーチュン』が大小のキメラたちにおじさんと私たちの家財を運ばせている。
歯車フォーチュン「ついでに、『サンプル』もモラッテいこうかな?」
奴は冷凍保存された『奈久留』にまで手を掛けようとした。
『化けクリ』に属する全てのキメラは、『フォーチュン』のキメラと交戦し、傷ついていた。
黒マスクの軍勢によって、『楽々』も『タタミ』も傷を負い、疲弊している。誰も動けなかった。
みれい「・・・・・・助けて」
縋った。世界に居る、何処かの誰かと同じように、私は無様に命を乞うた。
みれい「助けてよ」
そして自分自身分からないけど、思わずその名を叫んでいた。一番のヒーローを私は呼んだ。
みれい「助けてよ、『ひいろぉぉぉぉ』!」
おぼろげに、でも徐々にはっきりと紅い炎に影が映る。
『フォーチュン』の高い背に引けを取らないそのヒトが『フォーチュン』の厳つい肩に手をかけていた。
緋色「帰って来た早々なのに、俺のオンナに気安く触れないでくれないか?」
それは『ジョーカー』ではなかった。炎から現れたヒトは、右肩の付け根から完全に腕を無くしている。
義手すら持たないその片腕のヒトを私は知っていた。
歯車フォーチュン「――オマエは何者だ?」
自身を押し退けたそのヒトを見上げ、『フォーチュン』が言い放つ。
そのヒトは語った。炎の赤に負けない優しさを浮かべて。その背に担いでいたのは農業用の鍬だった。
緋色「俺は『泉《いずみ》緋色《ひいろ》』。 大した者じゃない。ただの、――『泉《いずみ》奈久留《なくる》』生涯の伴侶だよ」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
切ない感じが胸にしみました。
BGMも良かったですね!!
やはり安息の時は短いのですね(`;ω;´)🍀前を向いてしっかりお話の顛末を見届けたいと思いますm(_ _)m🍀
いつも楽しく読ませてもらってるよ❗(๑º º๑)ドキドキ💓
みんなにななちゃんの作品よ❗ひろがれー❗❀.(*´▽`*)❀.