コイカツ

見山みかん

本編(脚本)

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〇コンビニの店内
(はぁ・・・・・・。 いくらバレンタインだからって、チョコを一桁多く発注するなんて私のバカ!)
(どうやって売り切ろう・・・・・・)
ハヤト「すみません、いいですか?」
「あっ、はい! どうぞ」
(あ、この人・・・・・・。 一ヶ月くらい前から来てる人だ。 かっこいいから店員の中でも噂になってるんだよね)
ハヤト「レジ袋はいらないです。レシートも」
「かしこまりました。えっと、2点で360円になります」
ハヤト「じゃあこれで」
「はい、ちょうどお預かりします。 ありがとうございました!」
ハヤト「ありがとう、がんばってね」
「は、はいっ!」
「・・・・・・行っちゃった」
(名前も知らない人だけど、いい人だっていうのはわかる)
(あんなに優しく笑ってくれるんだもん)
「・・・・・・さて、店長に怒られて来るかなぁ。はぁ・・・・・・」

〇街中の道路
「お疲れさまでした〜」
「うーん、売る方法かぁ。 普通に店頭に並べてたんじゃ、消費期限に間に合わないし・・・・・・」
「SNSで助けを求める手もあるけど、それは最終手段にしたいし。どうしようかなぁ。まずは店頭でのアピールを・・・・・・、」
「あれ?」

〇公園のベンチ
(あそこにいるの、あの男の人だ)
(女性が・・・・・・、平手打ち!?)
(あ、女の人は行っちゃった)
ハヤト「・・・・・・いってぇな」
(痛そうにしてるけど、あの表情・・・)
「あ、あの!」
ハヤト「? あ、君は・・・・・・」
「すみません、さっきの、偶然見ちゃって。 大丈夫ですか?」
ハヤト「・・・・・・ああ。カッコ悪いところ、見られちゃったな」
「そんなこと・・・。よかったら、これどうぞ」
「冷やして当てていれば、赤いのもおさまるかも」
ハヤト「いいの?」
「はい。いつもお店に来てくれるお礼です」
ハヤト「・・・借りるね」
「・・・・・・何があったんですか?」
ハヤト「・・・・・・彼女に二股してたことがバレて、平手打ちされた」
「えっ・・・」
ハヤト「引くでしょ? ・・・これ、あげる」
「え、お、お金?」
ハヤト「このハンカチ、返されても気まずいでしょ。それで新しいのでも買って」
「でも」
ハヤト「勝手でごめんな」
「あっ・・・」
「・・・本当に二股なんてしてたのかな」
「だって、平手打ちされたあと、少し泣いてるように見えたのに」

〇コンビニの店内
(新しい常連さんとなりつつあった彼は、一週間お店に来なかった)
(・・・まあ、いいんだけど。見なかったフリしてれば、今も通ってくれてたかな)
「って、ぼーっとしてちゃだめだ。 チョコを売りきらないといけないんだから・・・!」
ハヤト「こんにちは」
「いらっしゃ・・・、あ。お久しぶりですね」
ハヤト「・・・うん。さっき、ここの前を通りがかったら、山のように積まれてるチョコが目に入ってさ」
「私が間違えて多く注文しちゃって・・・」
ハヤト「消費期限、まだ平気?」
「かろうじて」
ハヤト「ふっ、そうなんだ。全部買っていい?」
「え? ・・・本当に、買うんですか?」
ハヤト「うん」
ハヤト「スタッフに渡したいんだけど、100人はいるからさ。1人に1個じゃ物足りないと思うし」
「大きなイベントでもされるんですか?」
ハヤト「まあね」
ハヤト「・・・ていうか、知らない? 今週末、あそこのライブ会場でやるインディーズバンドのこと」
ハヤト「メトロポリスっていうんだけど」
「・・・えっ、もしかしてボーカルの方ですか!?」
ハヤト「やっと気付いた」
「だ、だって、そんな人がこんなところにいるなんて思わないですよ!」
ハヤト「そうか?」
「そうです」
ハヤト「ごめん。いやさ、俺、これでもチヤホヤされるのには慣れてるんだ」
「はぁ・・・」
ハヤト「それで、会場近くのコンビニだし、ちょうどいいなと思って来たら、君だけ俺のことを知らなかった」
「遠い世界だと思っていたもので・・・」
ハヤト「はは。知名度がまだまだだなと思って、いつ気付いてくれるか通うようになったら、この前のアレを見られるし」
ハヤト「・・・本当は、二股かけられてたのは俺の方」
ハヤト「帰る彼女を引き留めようとしたら、離してって言ってビンタ食らったってわけ」
「だから、嘘をいったんですか?」
ハヤト「そう。隠そうとして。でも、ハンカチくれるしさ」
ハヤト「その後は、準備で忙しくて1週間来れなくて、やっと今日・・・」
ハヤト「・・・って、話しすぎだね、俺たち」
「平気です、この時間帯は混まないので」
ハヤト「よかった」
ハヤト「彼女とはもう別れたしさ。 君が良ければ、自己紹介させてくれないか?」
「え?」
ハヤト「俺は、城沢ハヤト。メトロポリスのボーカルやってる。年は29、誕生日は12月12日」
ハヤト「これ、俺のプライベート用番号。君の連絡先、教えてくれない?」
「あ、えっと、いいですよ」
ハヤト「よかった。君の自己紹介も聞かせてほしいな」
「ふふっ、わかりました!」
「これが恋になるかはわからない。でも、見栄を張る彼のことを、かわいいと思ってしまったのは、私だけの秘密」
  End.

コメント

  • コンビニの店員さんって、偏見かもしれないけど、言動が全部マニュアル化していて苦手な方が多いんですが、きっと彼女は自分の言葉で接客する感じの良い方なんだろうなあと想像しました。

  • 見栄っ張りなのかな〜?
    たぶんプライドとかも絡んでそう…。
    恋になるかはわからないけど、二人は良好な関係を築きそうですね!

  • いつもコンビニに来てくれる彼のことがとても気になっていたところ、彼から連絡先を教えてくれるのは、もしかして店員さんに惚れたのかな?ハッピーだね。

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