40 獅子は我が子を千尋の谷へ落とすが、尊大な龍は姉を戦場へと捨てる(脚本)
〇黒
大型ドーカに覆い被さられてから、2分が経った──
マリリン「よし、何しても無駄だ──」
マリリン「寝て待とう」
マリリン「・・・・・・すぴー」
マリリンは潔く、図太かった
〇海岸の岩場
フリードリヒ(マリリンはドーカに呑み込まれた・・・)
フリードリヒ(魔女さんとドラゴンは動く気配が無い──)
フリードリヒ(マリリンを見棄てた訳では無いんだろうね──視線を感じる)
フリードリヒ「俺がやれ──と 力を示せとでもいう事なのかな?」
フリードリヒ「確かに、今日はそういう日だ 互いの力を見せ合い、はかる日だ」
フリードリヒ(マリリンの気配、魔力は地表の位置のまま この大型ドーカですら彼女のあの異質な聖殻を持ち上げる事が出来ないのだろうね)
フリードリヒ「ならば、上半分は大丈夫だろう」
フリードリヒ(これで魔女さんが納得すれば良いのだけれども──)
フリードリヒの銀髪と青目が光る──
聖樹から力を与えられた者が見せる、聖樹に似た光だ
剣を水平に振りかぶり、構えた体で膨大な魔力が練られる──
フリードリヒ「ふっ──」
いくらか遠い間合いを埋める為、フリードリヒはドーカへと駆ける
大きなドーカが人に放つ粘液は、下に打ち降ろす向きになる
古来より高所からの射撃は圧倒的な有利となる──
しかし、ドーカが粘液を放つ位置はフリードリヒの速さを完全に見誤っており、彼は高い天井をくぐる様に悠々とドーカに迫る
フリードリヒ(マリリンに当たらない高さは、これならば問題無いはずだ──)
フリードリヒ「『枝延─しえん─』」
フリードリヒの内より水平に振りかぶった剣へと魔力は流れ、それは切っ先より溢れ、長大な魔力の剣となる
フリードリヒ「ハアッ!」
その魔力の剣は、巨大なドーカの体の半ば過ぎまでに一息で食い込み──
フリードリヒ「『折薙─おりなぎ─』──」
そこから直上へと、軌道を変え──
ドーカの切れ込みより上の体は、引きちぎられる様に持ち上がり──
フリードリヒ「『散華─さんげ─』ッッ!!!!」
上空へと向かって炸裂した魔力の剣と共に──
粉々に吹き飛ばされた
フリードリヒ「さて・・・ マリリンを出してあげようか・・・」
フリードリヒが残ったドーカの身を掻き分けて、マリリンの聖殻があらわになる──
マリリン「う、うわあぁ・・・ 酷いよぉ・・・」
マリリン「ソレは最後の唐揚げなのに!」
マリリン「何でレモンの汁をかけたの!??」
マリリン「・・・むにゃむにゃ、すぴー」
フリードリヒ「・・・・・・え? なんで寝ながら聖殻を維持できるの?」
〇空
アデライーデ「あの大型を真っ二つにする枝延、埋まった剣をほぼ直角に捻って跳ね上げて、マリリンに衝撃の届かない所で散華──」
アデライーデ「とんだ馬鹿力に馬鹿魔力だねぇ アタシと同じ人間とは思えないよ・・・ それに──」
アデライーデ「ただの力任せじゃあ無い、高度な技術も備えている──」
アデライーデ「ああいうのを、天才って言うんだろうねぇ 嫌になっちまうよ、非才の身としてはさ」
ミスリル「グル、グルル(まぁ、及第点だな)」
アデライーデ「・・・アンタはブレないねぇ」
ミスリル「ガルルウゥ、グルゥ(人間にしては力は有るのだろうがな、俺が驚く程では無い)」
ミスリル「グル、グルルル(それに、姉貴が怯む程の差では無い)」
アデライーデ「・・・・・・そうかねぇ?」
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