Re:Happy Birthday(脚本)
〇幻想空間
目覚めなさい
颯斗「んん・・・っ」
目を覚ますのです
颯斗「もう少し寝かせて・・・」
起きて・・・
颯斗「もうちょい」
・・・・・・
天使「起きろーっ!」
颯斗「うわぁっ!?」
天使「おはようございます、颯斗さん」
颯斗「きみ、誰? どうして俺の名前・・・」
颯斗「それに、ここはいったい・・・」
天使「驚かれるのも無理ありません」
天使「貴方は先程、 交通事故に巻き込まれたのです」
颯斗「・・・そうだ。 俺、トラックの下敷きになって──」
天使「お亡くなりになりました」
颯斗「そっ・・・か」
颯斗「つまり、ここは──」
天使「ええ。この場所は──」
颯斗「異 世 界 !!」
天使「・・・はい?」
颯斗「いやぁー、ついに俺も異世界デビューか!!」
颯斗「お姉さんアレでしょ? 案内人的なポジションの人でしょ?」
天使「・・・・・・」
颯斗「え、違うの?」
天使「違います」
颯斗「じゃあ何?」
天使「見ての通りです」
颯斗「天使・・・」
天使「はい。死を司る天使〈アズリエル〉です」
颯斗「で?」
天使「で!?」
颯斗「天使様は俺にどんなスキルくれるの?」
天使「いや、あげませんよ?」
颯斗「なんで!?」
天使「私は案内人的なポジションの人ではないからです」
天使「そしてここは異世界でもありません」
天使「彼岸と此岸の狭間です」
颯斗「ひがんとしがん・・・?」
天使「隠世と現世・・・あなたは今、 あの世とこの世の間にいるのです」
颯斗「なんで!?」
天使「だからトラックに轢かれて死んだからだってば!」
颯斗「俺の異世界転生の夢が・・・っ」
天使「えーと・・・」
天使「続けますよ?」
天使「ともかく」
天使「私の仕事は、貴方の未練を少しでも減らして、心おきなく眠りについてもらえるようにすることなのです」
颯斗「・・・・・・」
天使「ここまでで何か質問あります?」
颯斗「ないです」
天使「よろしい」
天使「では、山本颯斗よ──」
天使「最期にひとつ、貴方の望みを叶えましょう」
天使「異世界転生以外でお答えください」
颯斗「待った」
天使「なんです?」
颯斗「今、山本って言った?」
天使「はい」
颯斗「俺、山木なんだけど」
天使「はい?」
颯斗「俺の名前、山木颯斗なんだけど」
天使「・・・・・・マジで?」
颯斗「マジで」
天使「・・・っ」
天使「すみませんでしたぁあああ!!」
颯斗「もしかして人違い?」
天使「人違いでした!」
颯斗「じゃあ俺、生き返られる?」
天使「たぶん・・・」
颯斗「たぶん!?」
天使「なんとかします!」
颯斗「すっげー不安なんだけど・・・」
〇大学病院
〇病院の待合室
〇病院の廊下
天使「──というわけで」
天使「颯斗さんが運ばれたと覚しき病院です」
颯斗「覚しきって」
天使「さあ、颯斗さんの身体を探しましょう! 早くしないと戻れなくなってしまいます!」
颯斗「なにそれ聞いてないし!」
〇病室(椅子無し)
〇病室
〇綺麗な病室
〇病院の廊下
颯斗「いないな・・・」
天使「いませんね・・・」
颯斗「もしかして、もう霊安室に・・・」
天使「あっ、このお部屋はまだ確認していませんよ!」
颯斗「ここは長期入院してる人の病室だから、俺の身体はないと思──っておい!」
天使「お邪魔しまーす」
〇近未来の病室
天使「・・・・・・」
颯斗「どうした?」
天使「この子・・・」
颯斗「うわ、アリエルそっくり!」
天使「アリエル?」
颯斗「アズリエルだから、略してアリエル」
天使「あまり略されていないうえに、どことなく潮の香りがする名前ですね」
颯斗「じゃあ、リエちゃんなんてどう?」
天使「リエ・・・」
天使「──ッ」
颯斗「どうした?」
天使「私の、名前・・・」
里絵「私・・・」
里絵「颯斗さん!?」
里絵「いない・・・」
里絵「夢だったの?」
里絵「ううん」
里絵「夢じゃない!」
看護師「失礼します」
看護師「谷川さん、回診の時間ですよ」
看護師「って、起きてるわけないかぁ」
里絵「看護師さん!」
看護師「えっ、起きてる!?」
看護師「目が覚めたんですか!?」
看護師「先生を呼ばなくちゃ──」
里絵「颯斗はどこ!?」
看護師「えっ?」
里絵「山本・・・じゃなくて、山木颯斗!!」
看護師「山木さん・・・?」
里絵「交通事故で搬送された男の人はいない!?」
看護師「さっき運ばれてきたばかりの人なら、手術中ですけど──」
里絵「行かなきゃ──」
看護師「谷川さん!?」
〇病院の廊下
〇手術室
里絵「颯斗さんっ!!」
医師「うわっ!?」
医師「勝手に入って来ちゃダメだよ!!」
里絵「ここにいたんですね・・・」
里絵「見つかってよかった」
看護師「谷川さんっ!」
医師「きみ、早くこの子をここから出して」
看護師「谷川さん、行きますよ」
里絵「待ってください」
「天使・・・!?」
天使「これでもう大丈夫」
颯斗「ん・・・」
颯斗「・・・・・・」
颯斗「ここは──」
颯斗「リエちゃん・・・?」
里絵「おはようございます、颯斗さん」
颯斗「いったいどうなって──ッ!?」
颯斗「痛ぇえええッ!!」
医師「動いたらいけません!!」
医師「これから手術・・・っていうか麻酔!!」
医師「起きたばかりで申し訳ないけど、もう一度眠って!!」
颯斗「あっ、はい」
里絵「またあとでね、颯斗さん」
颯斗「うん、あとでな」
医師(一瞬、天使の姿が見えたような・・・)
医師(まさか、この患者さんを迎えに!?)
医師「絶対に手術成功させてやる!!」
颯斗「よ、よろしくお願いします・・・?」
〇フェンスに囲われた屋上
──数日後──
里絵「手術、無事に終わってよかったですね」
颯斗「先生も驚いてたよ」
颯斗「内臓が何個かやられてたのに、 よく生きてたな〜って」
里絵「そりゃあ、颯斗さんには天使の加護がありますから・・・なんて」
里絵「すみません」
里絵「私が人違いをしなければ、颯斗さんは事故に遭わずに済んだのに・・・」
颯斗「いや」
颯斗「きみが間違えてくれたからこそ、目覚めることができたんじゃないかと思うんだ」
里絵「え・・・?」
颯斗「手術が成功しても、意識が戻るかは難しいところだったらしい」
颯斗「だから、もし事故に遭うのは必然だったとしたら・・・」
颯斗「俺の意識が戻ったのは、 きみが俺を見つけてくれたからだ」
里絵「颯斗さん・・・」
里絵「それを言うなら、私の意識を呼び戻してくれたのも颯斗さんです」
颯斗「俺?」
里絵「私、暖房器具の事故で一酸化中毒になって、意識不明だったんです」
里絵「その間、どうして天使になっていたのか記憶がないんですけど・・・」
里絵「あの時、颯斗さんが私の名前を呼び当ててくれたから、私は目覚めることができたんだと思うんです」
颯斗「リエちゃん・・・」
里絵「もしかしたら、神様的なポジションの人が、私たちを出会わせるために仕組んだことなのかも」
颯斗「・・・うん」
颯斗「そうだね!」
颯斗「Re:Happy Birthday!」
偶然の中に必ず必然がありますよね、2人はきっと必然の力で引き寄せられたんでしょうね。心が優しくなるいいお話しで楽しく読ませて頂きました。
ソウルメイトのような、ふたりの出会いも偶然のようで必然だったようで、神様のいたずらみたいですね。これからふたりの新たな人生がはじまるんですね。
先生のセリフがおもしろくてツボでした!笑
人間違いから始まった二人ですが、なかなかいい雰囲気になってて素敵です。
天使さんも元に戻れてよかったですね。