お嬢様は秘密を持っている

粟野比菜

第五話 「さらばお嬢様」(脚本)

お嬢様は秘密を持っている

粟野比菜

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〇港の倉庫
  星小路家の喝術を受けたら、私の制服が破れた。
本条美弥子「んぎゃあああ!?」
  まるで色気のない悲鳴をあげる私。
  だけど。
「きゃああああああああああ!!」
  それ以上の悲鳴が星小路側からあがった。
星小路優太郎「まさか・・・! あ、あいつは女だったのか!?」
星小路門下生「女だと!? このクラスにいるのは全員男のはずだ!」
星小路門下生「それより早く、だれか羽織るものを貸してやれよ!」
星小路門下生「む、無理です!」
星小路門下生「じょ、女性とお近づきになるなんて、そんな・・・!」
星小路門下生「ゆ、優太郎さん! ご指示を! ゆうた・・・」
星小路優太郎「・・・・・・」
星小路門下生「優太郎さんが気絶している・・・! もうダメだ!」
  てんやわんやの大騒ぎ。
  さっきまでのシリアスな空気はどこへやら。
  そして星小路家の過剰な混乱ぶりに比例して、私は達観ともいえるほど冷静になってしまった。
秋川玲衣「・・・あら? どこからかサイレンの音が聞こえるような・・・?」
本条美弥子「もしかしてパトカー! やっと警察来てくれたんだ!」
月ノ宮門下生「拓海さーん! 大丈夫ですかー!」
月ノ宮門下生「助太刀に来ました!」
月ノ宮拓海「ありがたい! 助かったぞ!」
  それから警察と月ノ宮家の人達が合流して、事態は呆気なく収束した。(ついでに私は羽織るものを貸してもらった・・・)
  完全に事件が解決したわけじゃないけど、少なくとも拓海が星小路家に狙われることはもうないだろう。
  うん、大変だったけど、終わり良ければすべてよし・・・なわけあるか!
本条美弥子「制服破れてから女に気づくとか失礼すぎるわ! なめとんのか!」
秋川玲衣「美弥子さん、落ち着いて・・・」
本条美弥子「そもそも、そこまで女性が苦手なら、なんで玲衣を誘拐できたのよ! おかしいでしょ!」
月ノ宮拓海「本条、そのことについてなんだが・・・」
月ノ宮拓海「先ほど、星小路家の門下生が、『このクラスは男しかいないはずだ』と言っていただろう?」
月ノ宮拓海「君は男性に間違えられやすいから誤解されていたとして、もしもその言葉が本当だとしたら・・・」
本条美弥子「・・・え?」
秋川玲衣「・・・・・・」
本条美弥子「え? え?? 玲衣、まさか・・・」
秋川玲衣「隠していてごめんなさい美弥子さん。 私は・・・いえ、私も女装男子ですの・・・」
秋川玲衣「もちろん星小路家とは何の関係もなくてよ。 私は私の意思で女装をしておりますの」
  今、明かされた玲衣の衝撃の事実に、私の頭は星小路家以上に混乱を極めた。
  そして、時間が経ってようやく口にできた言葉は・・・。
本条美弥子「わ、私より可愛くて女の子らしいのに・・・!」
  容赦のない、厳しい現実を嘆くセリフであった・・・。
  何はともあれ、これですべては終わったのだ。

〇名門の学校
  私と玲衣は別のクラスに移ることになった。
  私と玲衣をのぞいたクラスメイトが丸ごと退学してしまったからだ。
  (男子って判明した玲衣の待遇は一旦保留になった)
  (今、いっそ共学にしようかという話も出ているらしい・・・)
  (って、私が入学した意味は・・・!)
  拓海もしばらくしたら、本来入学する予定であった男子校に転入するらしい。
  紆余曲折を経て、私は元の平和な学園生活に・・・戻れなかった・・・。

〇明るい廊下
とある武術道場の門下生「頼もうー!かの星小路家を打倒した女子にお目にかかりたい!」
とある武術道場の門下生「ぜひとも手合わせを・・・」
別の武術道場の男「本条美弥子なるおなごはどこに! ぜひ我が当主のご子息に・・・」
月ノ宮拓海「喝術六十三段、『喝浮安全着地』! 喝ーーーっ!」
「うわああああっ!?」
  吹っ飛ばされた彼らは、はるか先で羽のようにゆっくりと舞い降りていった。
  怪我無く着地したのを見届けると、私たちはすぐにその場から逃げた。
本条美弥子「サンキュ、拓海・・・」
月ノ宮拓海「ああ。だがこれではキリがない」
秋川玲衣「日に日に、美弥子さんに会いに来る方が増えていきますわね・・・」
  そう、女ひとりで武術に名高い星小路家を成敗したなんて噂(というか誤解)が広まってしまい
  他の武術界隈から私と手合わせを願いたい、あるいは嫁にもらいうけたいといった類の要望が驚くほどやってきたのだ。
月ノ宮拓海「家の者にも頼んで、誤解を解いてもらっているが、なかなか捗らなくてな・・・収束には早くて1ヶ月ほどかかるだろう」
本条美弥子「1ヶ月も!」
  今の段階ですら辟易しているというのに、これがあと、1ヶ月だなんて、頭がおかしくなってしまいそう・・・。
月ノ宮拓海「これ以上騒ぎが大きくなれば、俺1人では対処できなくなるのも時間の問題だ」
月ノ宮拓海「そこで、ひとつ提案があるのだが・・・」

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コメント

  • 学ラン美弥子、カッコいいー!

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