キミだけに見せたいから(脚本)
〇公園のベンチ
京香(ここは都心から離れた緑豊かな町の公園♪)
京香(都会の喧騒の中で仕事をしている私の癒しスポット♡)
京香(休日になると、ゆったりした時間が流れるこの町に来ては、ひとりの時間を満喫しているんです)
京香(はぁー!やっぱり緑っていいなぁ。空気が美味し~♪)
京香(ここなら会社の人に会うこともないだろうし・・・ この後、映画を観て、それから──)
今日の予定を考えながら公園のベンチに座っていると
京香(ん?なんか見たことのある顔?でも、雰囲気が違うし、他人のそら似?)
会社の同僚、清水伊織(しみずいおり)にそっくりな男性が公園に入ってきた
京香(ああ、もう!休みの日まで仕事のことは思い出したくないのに!)
京香(はっ、こっちに歩いてくる!)
京香(まさかこんな場所で、本人なわけないけど、そっくりさんでもなんかイヤ!)
私は、そーっと公園を抜け出して、映画館へ向かった
〇映画館の入場口
京香(はぁ、なんか焦って道に迷っちゃった)
京香(ま、映画に間に合ったからいっか♡)
〇映画館の座席
席に座っていると、さっき公園で見た男性が入ってきた
京香(きゃ!なんて偶然!?)
京香(え・・・ウソ!隣の席~!?)
京香(信じられない・・・)
京香(まぁ、暗くなるし映画に集中しよっと)
〇映画館の座席
― 映画終了 ―
〇映画館の座席
京香(うぅ・・・感動しすぎて涙が)
京香(ハンカチハンカチ・・・)
「京香さん、どうぞ使ってください」
京香「あ、すみません」
隣の人から差し出されたハンカチで涙を拭う
京香(んん?京香さん・・・て)
隣の人を見る
京香「あなた、もしかして・・・伊織、さん?」
伊織「はい、そうですよ?京香さん」
京香「ちょ!なんで伊織さんがこんなところに?それに会社と雰囲気が・・・髪型も服装も、全然違うじゃない!」
伊織「それをいうなら京香さんだって」
伊織「・・・ちょっとここで話してると目立つんで場所を変えませんか?」
京香「え?あ・・・はい」
京香(注目浴びまくり・・・恥ずかし・・・)
〇店の入口
伊織さんについていくと・・・
そこは、行こうと思っていたレトロな喫茶店だった
〇レトロ喫茶
京香「あ、伊織さん。先に座っててください」
伊織「オッケー」
お手洗いに行ってから、伊織さんの前に座った
京香「えっと・・・伊織さん、なんでこの町にいるんですか?」
伊織「だって、ここ俺の地元だし」
京香「え!そうだったんですか?」
伊織「京香さんのこと、何度か見かけててさ、驚かそうと思って公園に行ったら逃げちゃうんだもんなー」
京香「ひぇ!」
京香「前から見られてたとか恥ずかしすぎる!」
伊織「だから、映画館に入るの見かけてついていったんだ」
伊織さんが、いたずらっぽい笑顔を向ける
京香「ちょっと伊織さん、さっきから俺って言ったりタメ口だったり・・・会社とキャラが全然違うんですけど・・・」
伊織「それは京香さんもでしょ?会社じゃピシッと髪をまとめてスーツに眼鏡で必要なこと以外はしゃべらないクールなできる女──」
京香「わー!わかったからもう黙って!」
伊織さんは、楽しそうに笑っている
京香「わ、私は!こんな素の私じゃ舐められちゃうからビジネスキャラを装ってるの!」
京香「伊織さんは、キャラを装う必要ないでしょ?」
伊織「わかってないなぁ。男の世界でもいろいろあるんだよ?」
京香「まぁ、伊織さんの場合は、どっちのキャラでもモテモテでしょうけど」
伊織「はは!そう?京香さんは、どっちの俺がいい?」
京香「え?そうね」
京香「・・・会社ではいっつもにらまれてる感じがしてたから、話しやすい今のキャラのほうがいいかな」
伊織「ええ?にらんでないよー!」
伊織「そんな風に思われてたなんてショックだー」
京香「ご、ごめん!」
京香「私、嫌われてると思ってたんだけど、違ったんだ。嫌われてなくてよかった」
伊織「むしろ、好きだよ?」
伊織「俺と似てるなーと思っててさ」
京香「・・・え?」
目の前にホカホカの分厚いホットケーキとオレンジスカッシュが置かれた
京香「これ・・・頼んでない、けど」
伊織「俺が頼んどいた。こういうの好きでしょ?」
京香「大好き!なんでわかるの?」
伊織「いつも見てたらわかるし、俺も甘いもの好きだし」
京香「いつも見てる・・・て」
伊織「会社で甘いお菓子食べるとき、嬉しそうにしてるよね?」
京香「よ、よく見てるね」
なんだか頬がほてって、私はオレンジスカッシュをひと口飲んだ
伊織「自然と目で追っちゃうんだ」
伊織「目つきの悪さでにらんでるように思われてたけど」
京香「それは・・・ごめんって!」
京香「伊織さん、絶対今のキャラのほうが会社でもっとモテると思うよ?」
伊織「そう?じゃあ、絶対キャラ変えない」
京香「え、なんで?」
伊織「素の俺は・・・好きな人だけに見せたいから」
私のことをじっと伊織さんがみつめる
伊織「だから」
伊織「これからの休日は、お互い素の自分で一緒に過ごさない?」
京香「え?えっと・・・」
伊織「一応、告白のつもり、なんだけど」
頬を赤らめる伊織さんにつられて、私も赤くなる
伊織さんがテーブルの上の私の指先を優しくにぎった
伊織「あのさ」
伊織「京香さんのこと、もっと知りたいし、俺のことも、知ってほしいんだ・・・」
京香(急な告白に頭が追いつかない!)
京香(でも・・・会社でのクールな伊織さんとは違う必死な彼から目が離せない)
トクトクと震える胸の鼓動と顔のほてりが
伊織さんへ引き寄せられている自分の気持ちを認識させる
私は静かにコクリ、とうなずいていた
Fin.
仕事とプライベートで全く別の顔の人って結構いますよね。両方を見たうえで、プライベートの自分も好いてくれるって嬉しくなりますよね。2人は、自然体で素敵な恋愛を楽しみそうですね。
自分が素のキャラでリフレッシュしてるときに、同じように素のキャラを出している人に出会えたら、それだけでなんだか親近感が湧きますよね。これからお互いをもっと曝け出していってほしいです。
オンとオフの切り替えが上手くできる人、もしそれを共有してくれる人がいたら最高ですね。彼女のように素敵な2面性を持っている女性なら、こういうシチュエーションもありですね!