エピソード1(脚本)
〇男の子の一人部屋
結人(ゆいと)「あのさ、先生」
先生「なに?」
結人(ゆいと)「先生が男とキスしてるの見ちゃったんだ」
先生(見られてた あいつが、迎になんかくるから)
あいつは独占欲が強くて
気まぐれに
迎えに来たりなんかする。
先生「生徒に手を出したりしないから安心して でも、もし君が気にするなら家庭教師を変えてもらっていいよ」
結人(ゆいと)「そ、そうじゃなくて」
先生「ごめんな 受験で大変な時期に」
結人(ゆいと)「ち、ちがくて」
結人(ゆいと)「お、オレ 先生が好きなんだ!」
先生「うん」
結人(ゆいと)「うん・・・って それだけ?」
先生「今はまず受験勉強だろ 俺は家庭教師を続けていいのか?」
結人(ゆいと)「はぐらかすなよ!」
先生「見たなら俺に恋人がいるってわかってるだろ?」
結人(ゆいと)「でも、全然幸せそうじゃなかった」
先生(そうだよ)
あいつは俺のことなんて見ていない
俺をあの人の代わりにしてるだけ
でも、俺はまだ、あいつのことが好きだから・・・
先生「君には関係ない 生徒と付き合う気はないよ」
結人(ゆいと)「じゃあ、大学に合格したら ご褒美にデートして?」
先生「いいよ 合格したら、お祝いしてあげようと思ってたし」
結人(ゆいと)「約束だよ、先生」
〇ショーの水槽
結人(ゆいと)「ありがと先生 デート付き合ってくれて」
先生「約束だからね 水族館でよかったの?」
結人(ゆいと)「うん ほら、イルカショーはじまるよ」
「うわぁ!!」
先生「一番前は迫力あるな」
結人(ゆいと)「濡れちゃったよー」
〇水中トンネル
結人(ゆいと)「先生、見て! でっかいエイがいる!」
先生「うん 下の方にサメもいるよ」
結人(ゆいと)「わっ、本当だ 他の魚食べちゃわないかなぁ?」
結人(ゆいと)「次、クラゲ見に行こクラゲ!」
先生(はしゃいじゃって・・・ かわいいな)
〇大水槽の前
結人(ゆいと)「先生と同じ大学行きたかったけど 頭が足りなかったな」
先生「頭? 努力じゃなくて?」
結人(ゆいと)「俺、頑張ったよ」
先生「うん、知ってるよ」
結人(ゆいと)「先生とデートしたかったから・・・」
先生(そんなに真っ直ぐ来られると 逃げたくなるよ 俺は臆病だから・・・)
手を繋ごうとする。
気づかない振りをして
その手を避ける。
〇水族館前(看板無し)
結人(ゆいと)「先生、コレ」
結人(ゆいと)「さっき買ったんだ 今日の思い出に お揃いだよ」
先生「ありがと 俺からもコレ 合格祝い」
結人(ゆいと)「やった! 開けるね」
結人(ゆいと)「わー、ピアスだ ありがと、先生 大切にするね」
先生「あ、ああ」
結人(ゆいと)「先生」
先生「なに?」
結人(ゆいと)「俺じゃダメなの? もう、生徒じゃないよ」
先生「俺が好きなんて、気の迷いだよ 大学行って色々経験したらかわるよ」
結人(ゆいと)「子供扱いするけど 2コしか違わないだろ」
先生「とにかく、君とは付き合えない ごめん」
結人(ゆいと)「あー 俺、完全にフラれたんだね」
結人(ゆいと)「さよなら・・・先生」
振り返り去って行く。
先生(これでいいんだ 君の未来を引き受けることなんて出来ないよ)
夕日に溶けていく後ろ姿をずっと見つめる。
〇桜並木
あれから2度目の春が通り過ぎようとしている。
1度目の春、俺を見てくれないあいつと別れた。
そしてこの春、社会人になった。
最近よく、あの日のことを思い出す。
後悔先に立たず
〇繁華な通り
夕焼けは特に、あの日のことを思い出させる。
先生(はぁー また思い出して・・・ どうしてあの日、結人の手を取らなかったんだ!? 俺のバカ!)
繁華街をトボトボと歩く。
先生「うわっ!」
腕を引っ張られ、倒れそうになる。
結人(ゆいと)「先生!」
先生「結人!?」
結人(ゆいと)「やっぱり、先生だ 今度は逃がさないよ」
先生(結人に会えた 俺の方こそ・・・)
先生「もう、先生じゃないよ 今から、時間ある?」
結人(ゆいと)「うん 八尋さん」
〇レトロ喫茶
先生「久しぶり」
結人(ゆいと)「うん、久しぶり スーツ似合うね」
先生「いいよ、そーゆー社交辞令は」
結人(ゆいと)「ほんとだよ メガネも似合ってる」
先生「よく俺だってわかったね」
結人(ゆいと)「いつでも探してたから」
先生「結人はちょっと大人っぽくなった」
結人(ゆいと)「そっかなぁ?」
結人(ゆいと)「着けてくれてるんだ そんな安物」
袖口から覗くブレスレットを指差す。
先生「結人がくれたやつだから・・・」
先生「結人もピアス・・・」
耳にそっと触れる。
結人(ゆいと)「当たり前じゃん 先生──じゃなくて 八尋さんから貰ったんだから いつも着けてるよ」
「あっ、」
先生「なに?」
結人(ゆいと)「まだ、あいつと付き合ってるの?」
先生「もう、別れた。今は誰とも・・・ 結人は? 恋人とか・・・」
結人(ゆいと)「今はいない」
先生「そうなんだ」
結人(ゆいと)「俺、あの時の八尋さんと同じ歳になったよ 色々経験した でも、やっぱり・・・」
先生「ま、待って 俺から言わせて!」
結人(ゆいと)「うん」
先生「お、俺 結人が好きだ!」
結人(ゆいと)「うん そんな怖い顔しないで」
先生「ごめん、緊張して ずっと、あの日のことばかり考えてた」
結人(ゆいと)「うん、俺も」
先生「えっと・・・ 付き合って欲しい所があるんだ」
〇水族館前(看板無し)
結人(ゆいと)「八尋さん、ココ!?」
先生「水族館、もう閉まっちゃってるけど・・・」
先生「もう一度、ココから始めたかったんだ」
結人(ゆいと)「うん」
先生「改めて・・・ 俺と付き合ってくれないか?」
結人(ゆいと)「えー いまさらー」
先生「えっ!?」
結人(ゆいと)「うっそ 前フラれた分の仕返し 待たされた分、幸せにしてよ」
先生(ここまで付いて来といて、仕返しって・・・ 結人かわいすぎ)
先生「ねぇ結人、腹減らない? 何か食べ行く?」
結人(ゆいと)「うん 八尋さん奢って❤️」
先生「もちろん」
結人(ゆいと)「やった♪」
好きだなぁ
その笑顔は
反則だよ
結人目線でも先生目線でも共感できる内容でした。水族館デートもすごくリアルでした。2人のピュアすぎる恋模様に終始キュンキュンしました!
時間が経てば忘れるとはよく言われますが、どれほど時間がたっても忘れることの難しい恋愛ってありますよね。とても爽やかな純愛で、先生もやっと素直になることができ、ふたりが進むことができてよかったです。
同性同士のストーリーだけど、異性同士に置き換えてみてもとても情緒のあって良いなあと思いました。相手を大切に思うあまり、急がず確信をもって受け入れる姿勢が、やはり先生ですね。