フラれ上手

希与実

読切(脚本)

フラれ上手

希与実

今すぐ読む

フラれ上手
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇田舎の学校
  NA「昔昔ある所に『フラれ上手』と云われる娘がおったとか」

〇女の子の部屋
萌音「はあ、10時か」
  萌音はベッドに腰かけバックから携帯電話を取り出してLINEする
萌音(果歩先輩。ご無沙汰してます。その後いかがでしょうか。もう判事になったのでしょうか?凄いな。憧れます。すいません突然)
萌音(今日フラれました。イイ感じだと自分では思っていたのですが。今日デートして別れ際に云われました)
萌音(一緒のシェアハウスの子で私より2つ下です。気づかなかった自分が情けないです)
萌音(なんか自分が期待してシェアハウスでキッカケ作って。でもいつも最後はフラれます。私って魅力ないのでしょうか)
  送信ボタンを押すと携帯をベッドの上に放り投げて寝ころぶ萌音。そしてため息をついて目をつぶる
  暫くして携帯の画面が明るくなり振動が。萌音はそれに気づいて上体を起こして携帯を手にする
萌音「果歩先輩」
果歩(萌音ちゃん、ご無沙汰。元気してる?おかげ様で先日司法試験の合格通知をもらいました。応援ありがと!)
果歩(で、まあ残念だけど次に期待ね。過去は引きずらない)
萌音(そうですけど、もう仲間には「フラれ上手」なんて云われたくないです。先輩はあんな素晴らしい旦那さんと出会えて)
萌音(私が先だったかも!)
果歩(そうね。でも萌音ちゃんがキッカケ作ってくれたから。感謝してます)
萌音(感謝しなくても良いですから良い人紹介してくださいよ。旦那さんみたいな人)
果歩(もうシェアハウスとかマッチングアプリとか要らないかも。もっと身近に、周囲を良く見たらどう?ねえ皆さん、そう思いませんか?)
萌音「えっ?」
  画面に次々と高校仲間からのメッセージが届く
  理久『次があるだろ』
  紗愛『もっと良い人いるよ』
  修也『職場とか居ないの?』
  香織『医者の先生で良くない?』
萌音「お前が云うな、お前が。えっ?なんで皆いるの?」
果歩(萌音ちゃん。いつから私もこのグループに入ったの?)
萌音「えっ?これ?あ!?やっちまったか」
萌音(すいません、直ぐに外します)
  萌音は高校仲間のグループから果歩を外し直ぐに果歩個人宛にLINEする
萌音(すいませんでした。いつやったのかも記憶なくて)
果歩(良い仲間が居て幸せね。もっと身近を見てみれば?良い報告待ってるわ。じゃ、また連絡ちょうだい)
萌音(ありがとうございました)
  萌音はまた高校仲間のグループLINEを開くと多くのメッセージが来ていた
  理久『まだまだ続くよフラれ上手』
  紗愛『今度はこっちからフッてやれ』
萌音「そりゃそうしたいけどさ」
  真守『またシェアハウス出るんでしょ?新しい所探しておきます』
萌音「おう、気が利くね真守」
萌音(真守、またよろしく頼む)
  真守『今日はやけ酒飲んで寝ろ』
萌音「なによ偉そうに。そう云われなくてもそうするわよ」
萌音(皆心配してくれてありがとう。また頑張ります。じゃ)
萌音「また頑張ります、って変だな」
  萌音は携帯をベッドの上に放り投げる
  冷蔵庫からビールの缶を出して勢いよく栓をプッシュするとその解放された出口から冷えた液体が萌音の口を通して体中に染み渡る
萌音「かあ~!おいしい」
  NA「『フラれ上手』は続くよどこまでも」

〇川に架かる橋
萌音「悪いね、また探してもらって」
真守「またご利用いただきありがとうございます。今年はこれで3度目です。須山様は当社のVIPでございますから」
萌音「ははは・・」
真守「ははは、じゃないだろ」
萌音「はい、おっしゃる通りです・・・」

〇高級マンションのエントランス
真守「ココ」
萌音「はあ~凄い。マンションみたい」
  出入口のセキュリティーロックを解除して中に入る二人
萌音「これシェアハウスじゃないみたいね」
真守「・・・・」

〇白い玄関
  ドアの施錠を解放して部屋の中に入る二人。靴を脱いで更に中を見る
萌音「うわ~凄い。キレイだし、なんか広い。大丈夫かな家賃」
真守「共益費・管理費込みで 5万円」
萌音「えっ?そんなに安いの?この設備で。だってバス・トイレ、キッチンだってあるし、これって一部屋じゃない」
萌音「シェアハウスって住人は?」
真守「おれ」
萌音「えっ?」
真守「だから、俺」
萌音「・・・冗談は顔だけにしてよ」
真守「何?結構モテるんだぞ俺」
萌音「知ってるよ。紗愛とはどうなのその後」
真守「いつの話を云ってるの?紗愛は理久ともう一緒に住んでる」
萌音「えっ?いつから?知らなかった」
  真守は萌音に抱きつく
萌音「真守・・・どうしたの?」
真守「お前はいつも鈍感で、真っ直ぐで、おっちょこちょいで。少しは身近の周りを見ろよ」
真守「ずーっとお前が好きだった」
萌音「・・・何云ってるの?もしかして『テッテレー』って」
  真守は萌音の口に自分の口を重ねて蓋をした。そして静かに距離を置く
真守「これが俺の答え。もうフラれ上手は卒業しろよ。俺の好かれ上手になって」
  萌音は驚き、そして顔を赤くした
真守「返事は?」
萌音「・・はい」
  萌音は真守の首へ両腕を回して引力を利用すると目を瞑る。次の瞬間その期待していた感覚が口、そして体中に染み渡る
  紗愛・香織『おめでと~』
  理久『3組で合同結婚式やろうぜ~』
  修也『もうプロボーズしたの?』
  理久『あ、まだ』
  一同『( ̄∇ ̄😉ハッハッハ』
  真守の携帯がグループトークで盛り上がった

〇田舎の学校
  NA「そして娘の『フラれ上手』は卒業したとさ。めでたし、めでたし」

コメント

  • ”フラれ上手”というワードセンスに脱帽です!自然体でいられる仲間と、その中で自分を好いてくれる男性、心温かくなる素敵な物語ですね。

  • ふられ上手…うまいことを考えますね〜!
    でもよくよく考えると友達にそんなこと言われたらむきーっとなりそう!割と心に刺さるのかも〜汗

  • とても説得力があるお話でした。灯台下暗しっていいますよね、ほんと人間って欲張りで自分の足元見ずに行動してしまいがちです。幸せは手の届く範囲にあるものがいいですね!

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ