episode 0(脚本)
〇オフィスのフロア
──私櫻井小春は、5年目を迎えた。今日は4月最初の華金。
今年は桜の開花が遅かったから、オフィスの窓からもまだひらひらと舞う花びらが見える──
今日は大きな商談があったけれど、想定していたような結果を得られず、正直凹んでいた。
〇オフィスのフロア
立花翔「お疲れ様です〜 もう20時半なのに誰かと思ったら先輩、まだ残ってたんですか!?」
──!! 後輩の立花だ。去年、彼が新入社員だった1年間、私は研修担当を務めていた。
櫻井小春「そっちこそまだ残ってたの?異動最初の華金なのに、飲み会は? こっちは大変な金曜日を過ごしてますけど・・・」
立花翔「今週疲れたんで飲み会はパスしました。 こんな時間までなんの仕事してるんですか?」
櫻井小春「本当は今日成約する予定だったんだけど、ミスがあって来週すぐ挽回できるように対応してたのよ」
立花翔「え・・・先輩でもそんなことあるんですね。珍しい。この前までだったら一緒に仕事できてたのに、なんか寂しいっすね」
櫻井小春「さすがにまだ後輩に尻拭いしてもらうほど落ちぶれてないわ。まあ、異動先でもがんばってね。早く帰りな〜」
〇オフィスのフロア
──立花も、しばらくしてフロアを去り、21時になったのでオフィスも消灯した。
立花が異動してからの1週間はなんとも言えない寂しさがあった。親離れしていく子どもを見送る気持ちとでもいうのだろうか。
櫻井小春「流石にそろそろ終わりにしようかな」
今オフィスを出れば、21時半からのレイトショーに間に合うかもしれない。久しぶりに一人でまったり映画の時間も堪能できる。
そう思って立ち上がろうとした時だった・・・
立花翔「もう帰りますよね?」
櫻井小春「え?まだ残ってたの?」
立花翔「はい、先輩さすがに21時の消灯には帰るかなって待ってました」
櫻井小春「まあ、帰るけど・・・」
立花翔「映画ですよね?レイトショー。今から出ればすぐそこの映画館の上映間に合うから」
櫻井小春「なんで知ってるの?怖いんだけど・・・」
立花翔「だって1年間ずっと一緒だったんですから、先輩の行動パターンくらい熟知してますよ。今日は一緒にいいっすか?」
櫻井小春「まあいいけど、別に一人で見るのと変わらなくない?」
立花翔「その後、感想言い合うところまでがセットっすよ!今から見れば23時過ぎには終わりますよね。流石に1杯付き合ってください」
櫻井小春「・・・!? いいけど、なんでわざわざ待ってたの?」
立花翔「え!?それ今聞きます?映画の後にしてください!!」
櫻井小春「わかった、じゃあとりあえず出よっか」
〇映画館の入場口
立花翔「面白かったっすね!!久々に映画見ました」
櫻井小春「とても良かったよね。感動した。あなた私の隣で映画中も独り言多すぎだったけど・・・」
立花翔「だって、思ったことすぐ先輩に聞いて欲しくて、このあとまだまだ聞いてくれますよね?」
櫻井小春「わかったよ。今から聞こう」
立花翔「そうこなくっちゃ。俺、この日を1年間待ってたんですから!」
櫻井小春「・・・!?」
立花翔「先輩!行きますよ〜早く!!」
──私と彼はこの日から関係が変わった。
続きが気になりますね~!この後はもちろん告白したのでしょうが、先輩はちょっと戸惑っている感じですね^^;でも告白されたら意識してしまうでしょう。
テンポ良く素敵な会話を楽しめました。
仕事が終わるまで待っててくれるって、優しい彼ですよね。
ワンコっぽくてキュンします!
なんとなく昭和を感じさせる内容で懐かしさを感じました。私も『華金』ときくだけで気分が踊ってしまいます。華金って言葉は現代も使われているのでしょうか。もしや作者様は同年代かしらとそんな背景も想像しながら読ませて頂きました。