フラれて始まる二人のシェア(脚本)
〇学校の校舎
その日私は昨日の出来事を引きずったまま登校しました。
「心音!」
天野心音「ナオちゃん、ミサキちゃんおはよう」
ナオ「昨日あれからどうなったの? 私たちヤバいと思って逃げたんだけど」
ミサキ「まさか私たちのことを話していないよね?」
天野心音「言ってないよ。それに許してもらえたから」
ナオ「ったく、ドジなんだから」
ミサキ「今日もう一度チャンスあげるから」
天野心音「う、うん」
〇教室
その日俺は久しぶりに学校へ向かった。俺が教室に入った時、昼食中の騒がしい教室が一瞬にして静まり返った。
クラスの連中の注目を浴びながら俺はアイツの席へ向かった。
真崎翔馬「天野心音!」
天野心音「えっ」
真崎翔馬「俺と付き合ってくれ」
天野心音「・・・」
真崎翔馬「俺の彼女になってくれ」
天野心音「・・・」
真崎翔馬「もちろんオッケーだよな」
天野心音「ご、ごめんなさい」
真崎翔馬「えっ」
真崎翔馬「ふざけんな!」
真崎翔馬「俺は諦めないからな! オッケーするまでお前に付きまとってやるから!」
天野心音「・・・」
ナオ「厄介な奴に目をつけられたわね、心音」
ミサキ「そう言えば心音、以前あいつに教科書見せてあげたことあったよね」
ナオ「なるほど。それで好意を持たれたわけか」
ミサキ「あいつ退学したんじゃなかったの?」
ナオ「1つ上の先輩に聞いたけど、あいつには関わらない方がいいって言われたわ」
ミサキ「留年したのも少年院入ってたからって噂だし」
この時私はまだ彼の意図には気づくことができませんでした。
〇学校の校舎
ナオ「わかってるわよね、心音」
ミサキ「私たち友だちだよね?」
天野心音「う、うん」
ナオ「友情の証、見せてもらうから」
天野心音「・・・」
ミサキ「ねえナオ、もし心音がドジったら罰ゲームじゃない?」
ナオ「それいい!」
ミサキ「決まりね。そうだ、坊主頭になるってのはどう?」
ナオ「うんうん! うちに父親のバリカンあるからそれ使って!」
真崎翔馬「悪いが俺が先約だ」
「!!!」
真崎翔馬「何ならおまけでお前らの相手もしてやってもいいけど」
ナオ「ミサキ、行こう」
ミサキ「う、うん」
真崎翔馬「相当な嫌われ者だな、俺って」
天野心音「あの」
真崎翔馬「何だよ」
天野心音「私が教科書を見せたのは、たまたま席が隣だっただけ」
真崎翔馬「もしかして教科書見せてもらったことで俺がお前を好きになったとか思ったのか?」
天野心音「えっ」
真崎翔馬「俺は万引きを強要された奴のことが気になっただけだ」
天野心音「・・・」
〇薬局の店内
昨日私は万引きをしてしまいました。
ドラックストア店長「うちの商品、カバンに入れただろ!」
天野心音「ご、ごめんなさい」
ドラックストア店長「奥の事務所まで来なさい!」
真崎翔馬「待ってくれ、俺がこいつを脅してその商品を盗ませたんだよ」
天野心音「えっ」
ドラックストア店長「あっ、君は!」
真崎翔馬「悪いのは俺だ。だからこいつのことは見逃してやってくれ」
〇学校の校舎
天野心音「昨日はありがとうございました」
真崎翔馬「気にすんなって」
天野心音「あの後どうなったんですか?」
真崎翔馬「許してもらえたよ」
天野心音「え、許してもらえたんですか」
真崎翔馬「何だよ、そのリアクション。俺が許してもらえるわけないと思ったのか?」
天野心音「あ、いえ」
真崎翔馬「学校では俺はとんでもない不良になっているみたいだな。留年したのも少年院入っていたからだって噂なんだろ?」
天野心音「違うんですか?」
真崎翔馬「違うよ。俺はあの店の常連客であの店長とも顔なじみなんだ。昨日もちょうど紙おむつを買いに来たところだったんだ」
天野心音「紙おむつ? 赤ちゃんがいるんですか?」
真崎翔馬「どうしてそうなるんだ?」
天野心音「あ、年の離れた弟か妹がいるんですね」
真崎翔馬「ばあちゃんのものだ。俺、ばあちゃんの介護を手伝っているんだよ」
天野心音「えっ。もしかして介護があるから学校に来れないんですか?」
真崎翔馬「それだけじゃないけどな。それよりお前わざと店長に見つかるように万引きしただろ」
天野心音「万引きなんてしたくなかったから」
真崎翔馬「捕まる方が良いってことか。お前見た目と違って意外と意志が強いんだな」
真崎翔馬「俺の告白もはっきり断ったし」
天野心音「ご、ごめんなさい」
真崎翔馬「なのにどうして、あの二人と付き合い続けているんだ?」
天野心音「それだと別の子があの二人のターゲットになってしまうから」
真崎翔馬「自分が犠牲になればいいってことか」
天野心音「私が悪いんです。遊ぶ約束を断ったりしたから。今回のことも元はといえばあの二人と同じ香水を使っていなかったから」
真崎翔馬「何だよ、そんな理由で万引き強要されたのか」
天野心音「私は大丈夫ですから。お願いですから私に付きまとわないでください」
真崎翔馬「あ、おい待てよ!」
〇街中の階段
彼は宣言した通り、私を付きまとい続けていました。
天野心音「お願いです、私のことは放っておいてください」
真崎翔馬「ひとりで重い荷物を抱えてる奴は放っておけない」
天野心音「えっ」
真崎翔馬「お前の荷物、俺が半分シェアしてやる」
天野心音「・・・」
真崎翔馬「これから毎日、あの二人がお前に近寄らなくなるまで俺はお前に付きまとうから」
天野心音「でも」
真崎翔馬「学校に行くいいきっかけにもなるし、一石二鳥だな」
天野心音「そのせいで私の代わりに他の子があの二人のターゲットになったらどうするんですか」
真崎翔馬「その時はそいつに付きまとってやるよ」
天野心音「えっ」
真崎翔馬「もしかして自分だけが特別扱いされていると思ったか?」
天野心音「そ、そんなことありません」
真崎翔馬「教科書見せたくらいでうぬぼれんな」
天野心音「うぬぼれてなんかいません。わ、わたしは」
真崎翔馬「ま、嬉しかったけど。ありがとな」
天野心音「えっ」
真崎翔馬「何でもいいから、さっさと歩けよ。お前が先歩かないと付きまといにならないだろ」
天野心音「は、はい」
真崎翔馬「好きに歩いていいぞ。なにがあっても俺はお前のことを見失ったりしないから」
天野心音「はい・・・よろしくお願いします」
強引な彼のシェアによって、憂鬱だった私の生活は劇的に変わっていくのでした。
彼女の芯の強さにすごく素敵な感じがしました。
あの二人から逃げない理由が、すごく優しくて…でもそういう子ほどカモになるんですよね。
そんな彼女を守る彼にキュンしました!
彼の言葉がいちいちズルい!一人で背負おうとするヒロインにはまさに「キュン」の台詞でした。
ですが、彼のそれはただの優しさ。恋未満の淡い感情に、切なくなりました。
いつか彼もヒロインもその優しい心で、報われる日が来ますように。
いいお話しでキュンとなりました。誰かは必ず自分をみててくれる、、、幸せですよね。彼の気持ちや行動すべてがかっこよく見えました。