カップル割やってます!(脚本)
〇シックなカフェ
チリンチリン
私「いらっしゃいませ」
私「カフェ店内をご利用ですか?」
男「ああ」
私「ご注文をお伺いいたします」
男「何が飲みたい?」
男「何でも好きな物を頼んで良いぞ」
女「ホント! お客様優しい!」
男「こらこら、お客様じゃないだろ」
女「あ、ごめんなさい」
女「お客様じゃなくて今はタクヤだったね・・・」
男「そうそう!」
男「出来れば「愛(いと)しのタクヤ」って呼ぶんだぞ」
女「はーい!」
女「愛しのタ・ク・ヤ❤️」
男「ふふっ それでよろしい」
私「・・・」
一体何を見せつけられているのだろうか
私「ご注文は何になさいますか?」
女「えーと・・・」
女「じゃあ私はストロベリー&チョコチップフラペチーノ、ラージで!」
男「私はブレンドコーヒーとやらの冷たい方、最も小さいサイズで頼む」
私「承りました」
私「お値段は合計840円になります」
男「840円か・・・」
男「たかがコーヒーにこんな値段を・・・」
男「はい420円」
私「・・・え?」
男「「え?」じゃないよ君」
男「ほら、割引だよ割引」
男「私達二人を見ればわかるだろ?」
私「・・・」
まさかあれの事を言っているんだろうか
男「全く・・・これの事に決まってるだろうに」
スマホの画面を向けられる
【カップル限定!️金曜日に限りドリンク全品半額!️】
私「・・・」
考えるのを止める
私「カップル割のご適用で、合計420円になります」
私「丁度お預かりいたします」
私「ドリンクが出来上がるまで、横でお待ちください」
こういう客は下手に詮索せず、機械的に対処するに限る
手早く会計を済ませて、次の客に目を向けたその時
男「先程から何だね、君のその態度は!!」
私「・・・!?」
突然の男の怒声に体が震える
私「も、申し訳ございません」
男「こっちは客だってのに笑顔の一つも見せない!」
男「カップル割を忘れた癖して「失礼しました」の一言も無い!」
男「一体どういう教育を受けてきたんだ!!」
女「まあまあ、タクヤさん落ち着いて・・・」
男「うるさい!」
男「どいつもこいつも私を馬鹿にしやがって!」
男「この店の責任者を連れて来い!!」
私「は、はい」
そう返事した事をすぐに後悔した
責任者──オーナーは今日はカフェに来ない
私を除いてホールとキッチンに各1名──それが今いる従業員の全てだ
私「も、申し訳ございません」
私「オーナーは本日不在でして・・・」
男「ふざけるな!」
レジカウンターに男の拳が叩きつけられる
男「ええい!オーナーでなくても構わん、お前の上司を連れて来い!」
泣きそうになるのを必死に堪える
私の上司──ホールリーダーの先輩も、まだカフェに来ていない
〇シックなカフェ
私(誰か──)
私(誰か助けて──)
涙が溢れかけたその時
〇シックなカフェ
先輩「おはようございま〜す」
やけに気の抜けた、それでいて優しい声
私「先輩・・・!」
先輩「・・・え? どういう状況・・・?」
先輩は泣いている私と客に目を向ける
男「お前があの女の上司か!?」
先輩「・・・」
先輩「はい、この店のホールリーダーをしております。千賀と申します」
男「あの女が、私に対して生意気な態度を取りやがったんだ!」
男「一体どうしてくれる!」
先輩「それは大変申し訳ございません」
男「今更謝って済むと──」
先輩「──お客様」
男「な、何だ?」
先輩「お連れのお客様とはどのようなご関係で?」
男「は?」
男「・・・見て分からんか! カップルだ!」
先輩「それは失礼いたしました」
先輩「ところで、彼女様が店外へと向かわれているようですが、大丈夫でしょうか?」
男「な!?」
女「店員さん相手にあそこまで怒鳴り散らすなんて、信じらんない!」
女「こんな男と彼女のふりなんてしてらんない!」
女「レンタル彼女代いらないから、私もう帰る!」
男「お、おい!」
男「な、何を言い出すんだ! それは契約違反だぞ!!」
先輩「契約違反・・・ね」
先輩はレジスターから吐き出されたレシートに目を向ける
先輩「お客様──カップルと偽って飲料を半額で購入するのは違反行為です」
先輩「不足分の代金、420円のお支払いをお願い致します」
男「・・・」
男「クソ、だ、誰が払う物か!」
男「二度と来るか、こんな店!」
男「おーい待ってくれ〜」
男はふらつく足取りで女を追いかけていった
そしてそれっきり戻ってくる事は無かった
〇シックなカフェ
私「先輩、今日は本当にありがとうございました!」
先輩「どういたしまして」
先輩「・・・で、本当にカフェ辞めちゃうの?」
私「・・・はい」
私「私上手く笑顔作れないし、接客がとことん苦手だって今日の件で改めて分かりました」
私「先輩やオーナーに申し訳ないですけど、やっぱり辞めようと思います」
先輩「本音を言うと僕は辞めてほしくない」
私「・・・!」
先輩「・・・でも、辞めないでと無理強いする事も出来ない」
私「・・・」
私はこのカフェで働くと決めた日の事を思い出す
〇シックなカフェ
私がここで働く事を決めた理由、それは単純にこのカフェのコーヒーが大好きだったから
バイト上がりには、良く従業員割引を使って定価の半額でコーヒーを飲んだ
〇シックなカフェ
私「・・・もうコーヒー半額で飲めないんですね」
先輩「そう?」
私「・・・え?」
先輩「毎週金曜なら、半額で飲めるでしょ?」
私「・・・」
私「・・・私、彼氏いないですよ」
先輩「金曜日の午後5時──」
先輩「来週からその時間にバイト上がるからカフェに来てよ」
私「・・・どうして?」
先輩「一緒にコーヒーを飲まないかなって? カップル割で」
私「・・・!」
鈍感な私でも、何を言われているのかは分かった
先輩「・・・嫌かな?」
私「・・・カップルを偽るのは違反行為なんですよね?」
先輩「・・・そうだね」
先輩「あいにく、偽るつもりは全く無いけど」
バイトを辞めてしまうとコーヒーが半額で飲めなくなる
でも、それ以上に先輩に会えなくなるのが嫌だって
今初めて気付いた
私「・・・喜んで!」
ヒロインのピンチに現れた彼、とても素敵ですね。デート代ケチッたうえに怒鳴り散らした男が明らかに悪いですが、ヒロインの出勤最後の日、嫌な気持ちで終わらなくて良かったです!
そしてその終わりの日に始まった新たな二人の関係に、ワクワクする素敵な終わり方でした。
今日も半額でコーヒー飲んでるのかなぁ……なんて、ニマニマしてしまいました😊
先輩の登場からが、スカッ○ジャパンを見ているようで、とても爽快感がありました!先輩は、とてもイケメンですね!
告白の仕方も、とても粋で最後の私ちゃんの幸せそうな表情にニコニコしてしまいました!
とても素敵な作品でした!
先輩の登場の仕方かっこいいですね。
困ってる時に助けてくれると、やっぱり嬉しくて、その後の言葉にドキドキしました。
レンタル彼女かぁ…レンタル代金考えてると割高ですよね。笑