35 告白と密告(脚本)
〇空
砦外の村、そこからの帰り道──
砦の真上を避け、迂回して飛ぶ龍は、左の手に珠を掴んでいた──
珠の中には、人の姿が在った──
それは、聖殻の中で斜めに膝を抱えるマリリンだった
マリリン(・・・ミー君はマリリンをそっと掴んでくれたと思うのだが、思わず聖殻を使ってしまった──)
マリリン(それゆえに、今聖殻を解除したら指の隙間から落ちてしまうかもしれんですよ──)
マリリン(あの場に一人取り残される居たたまれなさを考えれば、こっちの方が断然良いんだけども──)
マリリン(あれ? もしかして、帰るまでこのまま?)
そして、龍は思った──
ミスリル(──コレは、凄く掴みやすい)
ミスリル(俺の手に馴染むフィット感 握り直すことすら、楽しくもある──)
ニギ、ニギ
ミスリル(・・・・・・ウム、・・・・・・ウム)
マリリン(厚化粧の樹槍にもビクともしなかった聖殻が、ミシミシ言っとりますぜミスリルの旦那・・・)
彼らの帰路は、実に平和だった
〇基地の広場
砦の迂回を終え、ミスリルのねぐらにたどり着く一行──
アデライーデ「ミスリル、ありがとう──」
ニギ、ニギ──
ミスリル「グゥル(ウゥム)」
アデライーデ「・・・・・・」
マリリン(・・・あれ? ミー君が放してくれない)
アデライーデ「どうしたんだい、ミスリル?」
ミスリル「・・・グゥ、グルウ(・・・イヤ、なんでもない)」
ミスリルはしぶしぶ聖殻を地面に置いた
マリリン「今度から聖殻は慎重に使おうと思う」
ミスリル「グルルゥ(すぐに使っても良いからな)」
アデライーデ「?」
アデライーデ「とにもかくにも、助かったよマリリン あのフリードリヒってヤツに手柄と後始末を押し付ける作戦──」
アデライーデ「それに、ミスリルも打ち合わせ無しで良く合わせてくれたよ」
ミスリル「グルグルウゥ(やっとハンドサインを決めた成果が出たな)」
アデライーデがフリードリヒから半歩後ずさった時──
背に回した方の手で遥か上空にいたミスリルに、急降下、着地とサインを出していたのだ
アデライーデ「だからアンタが帰りに道草ならぬ道石を食って、予定時間より砦に来るのが遅くなったせいで──」
アデライーデ「時間の引き延ばしに手間がかかった事は不問にしてあげよう」
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