最推しアイドルにナンパされたんですがどうも様子がおかしいようです!?(脚本)
〇ライブハウスのステージ
「今日は来てくれてありがとう。最高のライブを届けるから、ちゃんと俺たちについてきてね?」
きゃーーーーーー!
明るいスポットライト、大歓声。
(ミサキくん、今日もすっごくかっこいい・・・!)
5人組アイドルグループ、カレイドスコープ。私の推しはセンターのミサキくん。
圧倒的ルックスと歌唱力、キレッキレのダンスに王子様キャラ。常にキラキラを振りまく人気急上昇中の注目株。
(久しぶりの神席最高! 推しが今日も輝いてる・・・!)
ミサキ「ありがとう。・・・大好きだよ」
(えっウソ! いま目があった!? さすがミサキくんファンサが神! 生きてて良かった!)
そうして、私の最高の1日は過ぎていった。
〇公園のベンチ
~翌日~
(はあ・・・昨日のライブめちゃくちゃ良かったな・・・)
「ねえお姉さん、良かったら俺とお茶しない?」
(なに? 今こっちはミサキくんで頭がいっぱいなんですけど?)
いえ、結構・・・で・・・
な、な、な・・・!
私なんかをナンパする物好きの顔を一目見てやろうと思っただけなのに、それはどこからどう見たって、
ミ、ミサキくん・・・!?
ミサキ「うん、みんなの王子様ミサキくんです」
(ウソ・・・本当に本物? 昨日見たあのミサキくん?)
あ、あの私、ミサキくんの大ファンです!
ミサキ「うん」
昨日のライブもすごく素晴らしくて!
歌もダンスも、あっあとMCも、本当に本当に感動しました!
ミサキ「うん」
特にアンコールのサビ前のミサキくんソロとかビブラートすごくて終わった後の余韻がすごすぎて今もずっと考えてて・・・
ミサキ「・・・ふふ」
えっ、あっ、すみません私、べらべらと・・・!
ミサキ「お姉さん、本当に俺のこと好きなんだね」
はい! 大好きです!
ミサキ「じゃあさ、お姉さん」
ミサキ「・・・俺と、付き合わない?」
は・・・はい?
(い、いまなんて言った?
付き合う? 聞き間違い? 何で?)
(ミサキくんはファンサすごいけど一線はちゃんと守る人だし、信じたいけど、実は遊んでる人だったの・・・?)
そう思ったら、じわっと目に熱いものがこみ上げてきた。
ミサキ「・・・っ、ごめん。泣かせたい訳じゃなかったんだ」
ミサキ「・・・少し、少しだけ僕の昔話を聞いてくれる?」
(・・・・・・?)
(あれ、いまミサキくん・・・
「僕」って・・・?)
ミサキ「僕、小さい頃は身体が弱くてね。 学校も休みがちで、そのせいで性格もどんどん暗くなっちゃって」
ミサキ「勉強も運動も出来ない、友達もいない。 楽しいことなんてひとつもなかったんだ」
ミサキ「・・・ないと、思ってたんだ」
ミサキ「アイドルってすごいよね。 かっこよくて、きらきらしてて」
ミサキ「・・・子供って単純だよね。一目見て、憧れちゃったんだ」
ミサキ「僕も誰かに勇気を与えられる人になりたい。誰かを笑顔に出来る人になりたい」
ミサキ「そうしてアイドルの道に進んだけど、やっぱり僕はダメダメで」
ミサキ「事務所から王子様キャラで、なんて言われた時は本当にどうしていいか分からなくて」
ミサキ「うまくパフォーマンスは出来ないし、頑張っても結果が出ない」
ミサキ「正直、僕には向いてないし、もうやめようかなって何度も心が折れそうになって」
ミサキ「お姉さんがファンレターをくれたのは、ちょうどそんな時」
え・・・?
ミサキ「もう覚えてないと思うけど、僕の好きなところが便箋いっぱいにさ」
ミサキ「ここの歌い方が良かったとか、あそこのダンスがかっこよかったとか」
お・・・覚えてます!
だって、だって私、ファンレターなんて書いたの初めてで・・・
でもミサキくんのパフォーマンスに勇気もらって、それで一生懸命書いたものだから・・・!
ミサキ「・・・そっか。 覚えててくれて、嬉しい」
ミサキ「こんな僕でも好きだって言ってくれる人がいるんだって」
ミサキ「なら僕が僕を諦めたらこの人に顔向けできないなって、それでもう少しだけ頑張ろうって思えたんだ」
ミサキ「握手会とかサイン会とか、ほとんど毎回来てくれてるでしょ? さすがに顔覚えちゃって」
ミサキ「・・・本当はこんな、伝えるつもりなんてなかったんだけど」
ミサキ「昨日目があって、今日たまたま見かけて」
ミサキ「運命だと思ったら、気づいたら声かけちゃってた」
奇跡みたい
自己満足だと思ってた私の応援は、無駄じゃなかった。ちゃんと届いてたんだ。
・・・でも、
ミサキ「え?」
でも、やっぱりミサキくんがすごいのはミサキくんが頑張ったから、だと思います。
ミサキくんのおかげで、私いっぱい幸せなので!
ミサキくんはちゃんと、ミサキくんの憧れたアイドルになれてます!
ミサキ「・・・・・・」
って、すみません。私なんかが偉そうに・・・
ミサキ「・・・好きだなあ」
え?
ミサキ「ううん、なんでもない」
ミサキ「呼び止めちゃってごめん。「俺」、そろそろ行くね」
(あ・・・一人称が・・・)
ミサキ「これからも頑張るから、応援してくれる?」
も、もちろんです! 私はずっとミサキくん推しなので!
ミサキ「・・・そう、嬉しいな」
ミサキ「それで、トップアイドルになったらもう一度会いに来るから」
・・・・・・・・・え?
ミサキ「もう一度、迎えに来るから」
ミサキ「そしたら、付き合って欲しいって言葉の返事、聞かせてね?」
え、あ、え・・・!?
ミサキ「ふふ。じゃあ、またね」
あっという間過ぎてちっとも現実味のない出来事だったけど。
それでもやっぱり、私の推しは今日も最高に格好良かった。
推しに認知されているだけでも嬉しいのに、推しの活動の糧になっていたとは!ヒロインに感情移入してしまいついホロッと来てしまいました( ;;)
こんな嬉しい出来事、次の日になったら夢だったのかな、なんて思ってしまうかもしれないけれど。
ヒロインの想い続ける気持ちと、素直な彼の気持ちが、将来また交わるといいですね!
めっちゃキュンキュンしました~素敵なお話をありがとうございました!
確かに雲の上の存在の人に自分を認識されていただけで嬉しい気持ちがわかります…。
自分ならきょどってしまい会話が成立しないかも笑
こういう出会いって、アイドルやアーティストのファンしてる立場だったら、びっくりしちゃうけどほんっと嬉しいですね。ファンレターがちゃんと読まれていたとか、内容覚えててくれるとか、それが彼のアイドル活動の活力になったとか、嬉しすぎて目眩がします。