カッパ巻き同好会へ、ようこそ!

久望 蜜

カメのような先輩(脚本)

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〇おしゃれな大学
沙羅(サラ)(大学生になって半年、学生生活にも慣れてきたな)
  ドサドサッ。
沙羅(サラ)「すみません! ちゃんと前を見てなくて──」
沙羅(サラ)(うわ、イケメン!)
沙羅(サラ)「あ、ぶつかったせいでバラまいちゃいましたね! 拾います」
沙羅(サラ)(ん? 箱の中に大量のキュウリ?)
河太(カワタ)「拾ってくれて、ありがとう」
沙羅(サラ)「こちらこそ、すみませんでした。 あの、こんなにたくさんのキュウリ、どうするんですか?」
河太(カワタ)「食べる」
沙羅(サラ)「一人でですか?」
河太(カワタ)「拾ってくれたお礼。このキュウリ一本あげる」
沙羅(サラ)(悪い人ではないけど、マイペースな人だなあ)
沙羅(サラ)「あ、ありがとうございます。 キュウリ好きなので、うれしいです」
河太(カワタ)「じゃあ、君も入る?」
  差しだされたビラを受けとった。
沙羅(サラ)「カッパ巻き同好会? お寿司同好会とかじゃなくて?」
河太(カワタ)「魚はもちろん好きだけど、カッパ巻きは別格。メンバー募集中なんだ」
沙羅(サラ)「あの、今メンバーは何人・・・・・・?」
河太(カワタ)「僕一人だけ」
沙羅(サラ)(やっぱり、一人で食べるつもりだったんだ・・・・・・)
河太(カワタ)「君が入ってくれるとうれしいけど・・・・・・ダメ?」
沙羅(サラ)(う、そんなカメのようなつぶらな瞳で見られると・・・・・・)
沙羅(サラ)「じゃあ、ひとまず見学だけ──」
河太(カワタ)「入会してくれて、すごくうれしい。 僕、河太。二年生。よろしく」
沙羅(サラ)「わたしは沙羅といいます。 一年生です・・・・・・じゃなくて! まだ入会すると決めたわけじゃ──」
河太(カワタ)「歓迎会を開く。 僕がこのキュウリで、たくさんカッパ巻きをつくる」
沙羅(サラ)(カッパ巻きばかり、こんなに食べきれない・・・・・・。 それだけは、阻止せねば)
沙羅(サラ)「あの! わたしの歓迎会のために、お手をわずらわせるわけにはいきません。 なにか、別の──」
河太(カワタ)「それなら、水族館に行く?」
沙羅(サラ)(なぜ、水族館? でもまあ、いいか)
沙羅(サラ)「はい、水族館にしましょう!」

〇大水槽の前
沙羅(サラ)(二人で歩いていると、デートみたい)
河太(カワタ)「この水族館のレストランで出るカッパ巻きが、おいしい」
沙羅(サラ)(やっぱり、カッパ巻きが目当てだったのか・・・・・・)
河太(カワタ)「あと、魚がたくさんいて楽しい。 あれは鮎・・・・・・おいしい」
沙羅(サラ)「そういえば、魚も好きだっていっていましたね」
河太(カワタ)「うん、好き。 あれはオオサンショウウオ・・・・・・あれもおいしい」
沙羅(サラ)「え!? いや、特別天然記念物だから、食べちゃダメですからね!?」
河太(カワタ)「わかった。気をつける」
沙羅(サラ)(冗談かと思ったのに、ひどく残念そうなのはなぜ・・・・・・?)
沙羅(サラ)「あ、カメ! わたし、魚も好きですが、カメも好きです。家でも飼っているんですよ。 カメ太といって、かわいいんです」
沙羅(サラ)(河太先輩、カメ太と名前も似ているけど、キュウリが好きなところもそっくり)
河太(カワタ)「僕もカメは好き。親近感湧くから・・・・・・」

〇ショーの水槽
河太(カワタ)「ここのイルカショーはおすすめ」
沙羅(サラ)「あのイルカ、すごい! 人が乗っているのに、あんなにジャンプするなんて!」
河太(カワタ)「うん、すごい」
沙羅(サラ)「わたし、夢があったんです。 浦島太郎みたいに、カメ太に乗って水中を泳いでみたいって」
河太(カワタ)「カメだと、難しいと思う」
沙羅(サラ)「子どもの頃のことですよ」
沙羅(サラ)「それにしても、この席だと迫力がありますが、けっこう水がかかりますね」
河太(カワタ)「うん、渇かなくて、ちょうどいい」

〇テーブル席
河太(カワタ)「ほら、カッパ巻き。 おごるから、いっぱい食べて」
沙羅(サラ)「ありがとうございます。 わあ、おいしそう・・・・・・」
沙羅(サラ)(よかった、お寿司とセットで! 水族館で魚を食べるのも複雑だけど・・・・・・)
河太(カワタ)「ここのカッパ巻きは、キュウリが新鮮でおいしい」
河太(カワタ)「イボがちゃんとあるし、断面もキレイ。 ハリツヤがあって、宝石みたい」
沙羅(サラ)(本当にカッパ巻きが好きなんだなあ。 でも・・・・・・)
沙羅(サラ)「お、おいしいです・・・・・・」
沙羅(サラ)(ダメだ、他のカッパ巻きとの違いがわからない・・・・・・)

〇水族館前
河太(カワタ)「今日はデートみたいで、楽しかった」
沙羅(サラ)「デッ・・・・・・!?」
河太(カワタ)「顔が真っ赤。怒るほどイヤだった?」
沙羅(サラ)「楽しかったです! でも、女の子にそんな・・・・・・デ、デートみたい・・・・・・とか軽々しくいうもんじゃないです!」
河太(カワタ)「そうなの?」
沙羅(サラ)「ヘンに意識しちゃうじゃないですか! 先輩はイケメンだから、デートなんて飽きるくらいしてるのかもしれないですけど!」
河太(カワタ)「僕、デートしたことないよ」
沙羅(サラ)「え!?」
河太(カワタ)「そんなに驚く?」
沙羅(サラ)「だって、先輩はカッコいいし、かわいいのに・・・・・・」
河太(カワタ)「カッコいいとかわいいって、矛盾してない?」
沙羅(サラ)「してません! 先輩は見た目はカッコいいけど、中身はカメみたいでかわいいんですから、自信をもってください!」
河太(カワタ)「カメみたい・・・・・・?」
沙羅(サラ)「わたしにとっては、ほめ言葉ですよ。 わたしの好きなタイプは、カメみたいな人なんですから!」
河太(カワタ)「それはちょっとどうかと思う・・・・・・。 でも、惜しい」
沙羅(サラ)「え?」
河太(カワタ)「僕、本当はカッパなんだ」
沙羅(サラ)「えっ」
河太(カワタ)「君には隠しごとをしたくなかっただけなんだけど、やっぱり怖いよね。ごめん」
河太(カワタ)「同好会の話はなかったことにしよう。 もう君とも会わないようにする」
沙羅(サラ)「そんなことをいわないでください! その甲羅とか、カメみたいでステキです!」
河太(カワタ)「え・・・・・・」
河太(カワタ)「この姿をほめられたのは初めて。 沙羅ちゃんって、変わっているね」
沙羅(サラ)「河太先輩には、いわれたくありません」
河太(カワタ)「今度、故郷の川に帰るときに、一緒に連れていってあげる。水深があるから、泳げるよ」
沙羅(サラ)「もしかして、カメに乗って泳ぐ夢が?」
河太(カワタ)「叶うと思う。カッパだけど」
沙羅(サラ)「わあ、うれしいです」
河太(カワタ)「そのときまでには、好きなタイプをカッパにしてみせるよ!」

コメント

  • コメディ要素満載ながら、2人の可愛い恋愛に心揺すぶられてしまいました。そして何よりも、カッパ巻きが無性に食べたくなる作品ですね

  • 河童…幼い頃から恐ろしい妖怪だと思っていたのですが、もしかしたら私の偏見だったのかも知れません。
    今後はもっと真っ直ぐに河童と向き合ってみようと思います。

  • コメディとキュンが混じり合って溶け込んで、とても面白かったです。今日のお昼ご飯はカッパ巻きにします。

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