ビターモドキ

雨降地固不

ビターモドキ(脚本)

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〇広い改札
  俺は問いたい。全ての女性、全ての男性、老若男女全てに問いたい。
  "オレサマ"って、なんだ
  人の多い改札前。時刻は午前の10時、あー、えっと、今47分になった。
  11時半に集合の約束をして、今俺はここにいる。観察のために。
  沢山のカップルが改札から出てきたり改札に入ったりする。
  みんな笑ってたり顔を赤らめてたり。
  それでも、わからない。
  オレサマって、オレサマって
ユウ「なんなんだよ・・・・・・」
  事の発端は、今から3ヶ月くらい前。

〇映画館のロビー
ユウ「いやぁ〜!やっぱ楽しみっすね!映画館のこの暗いとこ来るだけでテンション上がるっす!」
ユウ「それに俺、恋愛モノって観たこと無いんで、すっげぇ楽しみっす!」
ユウ「え?観たこと無いっすよ?」
ユウ「なんでって・・・・・・『デートで映画行くなら絶対恋愛モノ!』ってネットにあったんで・・・」
ユウ「・・・・・・」
ユウ「今俺めっちゃ恥ずい事言いましたよね? めっちゃ馬鹿みたいなこと言いましたよね?」
ユウ「なんで笑うんすかぁ!」
ユウ「もぉ!ほら、行きますよ!!」
ユウ「あ、爪のやつ・・・・・・なんだっけ?ネイル?でしたっけ??」
ユウ「すっげぇキレー。今日の先輩の服の色だ。俺好きっす。これも、先輩も」
ユウ「俺、やっぱ先輩の彼氏になれてよかったっす」
ユウ「ほらほら、行きますっすよ〜!」

〇映画館のロビー
  映画はまぁまぁフツーに面白かった。
  お金持ちの男が女の子を好きになってってそんな話。
  女の子の方も男も頑固でハチャメチャで、結構コメディだったから笑いながら観てた。
  時々先輩の方も見たけど、やっぱり楽しそうで、そんな顔に俺も安心したりして。
  生まれて初めての彼女だった。
  同じゼミの先輩で、まだ1年でバカな俺に優しくしてくれて、気づいたら告白してた。
  優しい人だから、優しくしたい。そう思ってたし、そうするつもりだった。
「おいお前。 おれのものになれ」
  たかが映画。されど映画。
  ちょっとだけムッとした。いや、俺がガキなのかもしれないけど。
  大切な彼女だろ。俺の物って、"物"って、そんな言い方・・・・・・

〇おしゃれなレストラン
  俺はあの映画にムッとしてた。
  彼女ってトクベツだろって。
  トクベツなんだから、優しくするべきだろって。
  でも、先輩は違った。
  お酒が入って赤くなった先輩の顔はめちゃくちゃかわいくて、抱きしめたいくらいで、
  でも、そんな顔でこう言った。
「あ〜!やっぱりいいなぁ〜!! ああゆうオレサマ系!」
「キュンキュンしちゃったぁ〜!」
ユウ「・・・・・・」
ユウ「喜んでもらえてよかったっす!」
ユウ「俺未成年なんでわかんねぇっすけど、飲みすぎはダメっすからね〜?」
ユウ「・・・・・・ピンクの服にピンクの爪に、ピンクのほっぺ。かわいーから俺は見れてラッキーっすけど」
ユウ「・・・・・・」

〇広い改札
  ____てなワケで、俺は彼女好みの"オレサマ"になるために観察をしてる。
  よく「ワンコ系彼氏」とか言われてたけど、もうそれは今日で卒業。
  服もカッコよくしたし、つーかそもそもワンコじゃねぇし。
  先輩がキュンキュン?するようなオオカミみたいなオレサマに、今日からなるんだ。
  先輩が来たらまずはクールに。
  いつもは可愛いとか好きとか言っちゃうのを今日は我慢。
  あとそれからデートの行先は秘密にしてミステリアスに。
  大丈夫だ。ネットカフェに入り浸って少女漫画を読みまくった俺に抜かりはない。
  先輩の想い描く、"オレサマ"になってやる
ユウ「あれ!?先輩!!?」
ユウ「髪染めたんすね!前のもいいけど、今日のもすっげーかわいい!」
ユウ「緑?なんつーんだろ? とにかく、めっちゃかわいいっす!」
ユウ「髪もだけど、ピアスもすっげー可愛い。 お花っすか?」
ユウ「いつもそーやって頑張ってオシャレして来てくれるの、申し訳ないけど、嬉しいっす」
ユウ「・・・・・・!!」
  やってしまった。
  それも大やらかし。
  オレサマになるって誓ったのに。秒で崩れてんじゃん俺のバカ。
  こうなったら仕方ない。軌道修正はデート中でもできるはず。
  絶対になってやるんだ。彼女好みのオレサマに。
ユウ「ん?あぁ、なんでもないっすよ」
ユウ「今日も俺の彼女がかわいいな〜好きだな〜って思ってただけっす!」
ユウ「そういえば・・・」
ユウ「俺は先輩に好き好きいっぱい言ってるっすけど、先輩あんま言ってくれないっすよね」
ユウ「あ、いや、別に強要とかじゃないんすけど・・・!」
ユウ「聞けたら、嬉しいな〜・・・・・・・・・なんて・・・・・・」
ユウ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ユウ「顔真っ赤。かわいい」
ユウ「かわいいけど、ちゃんと聞きたいっす。 先輩の気持ち」
ユウ「ね?聞かせて? センパイ」

コメント

  • 自分好みの男性になろうとしてくれてる姿が可愛くて仕方がないですね。本当にオレサマの男性よりも、こんなふうに大切に思ってくれる彼を大切にしたほうが、絶対幸せになれると思います。

  • 生まれながらのワンコ系って感じのする彼が、俺様系になれる日は来るのでしょうか?笑
    でも、彼女も彼のそういうところが好きなんじゃないかな?と思ってしまいました。

  • 彼がオレサマになれる日ははるか遠くな気がしました(笑)でも、ワンコ系男子が彼女の好きそうな感じになろうと努力してるのも健気で可愛いですね。

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