読切(脚本)
〇本棚のある部屋
こんなことを書きはじめていいのだろうか。
君の寝息を聞きながら、ふと思い返し、考え始めた。
僕の名前は、坂下 悠(さかした はるか)と言い、
〇大樹の下
晴れた日に隣を歩く浅野 嘉穂(あさの かほ)は、
浅野 嘉穂(あさの かほ)「ピクニックか」
と、周囲を羨む表情をしていた。
〇黒背景
数ヶ月前
二人は仕事終わりに居酒屋で出会い、意気投合した嘉穂と僕の家で話し、関係が始まった。
二人は連絡を取り合い、よく通話をする間柄だった。
そんなある日、嘉穂が家に来た。
〇玄関内
浅野 嘉穂(あさの かほ)「いやすまんな。久しぶりの再会が私の相談に乗ってもらう形になって」
と、頭を人差し指で恥ずかしそうに掻きながら言い、
坂下 悠(さかした はるか)「いいってことよ。それより何?」
坂下 悠(さかした はるか)「ちょっと話したいとは言ってたけど、それどころじゃない位ダメージ受けてそうだけど」
と、嘉穂の頭に軽く触れると人差し指は頭から離れていった。
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
浅野 嘉穂(あさの かほ)「久しぶりに悠の家に来たなぁ」
坂下 悠(さかした はるか)「そうだよな。社会人になればそんな関係性の人も居て当然か」
坂下 悠(さかした はるか)「・・・悪い、悪かったよ。そう言えばこの間のことだけどさ、そんなに興味があるなら僕がレンタル彼氏になるよ」
坂下 悠(さかした はるか)「全く知らない関係から始めるより気が楽だろ。でも、お試しだから料金 デートに掛かる費用、割り勘でどうよ?」
この間から、嘉穂は職場の課題と新しい恋に走る気力がないこと、冗談交じりでレンタル彼氏の利用を考えている話をしていた。
だが、いつも通話や連絡でふざけ合っていた僕からレンタル彼氏の立候補があるとは思っていなかったのだろう。
浅野 嘉穂(あさの かほ)「いやいいけど、いつデートするの?」
坂下 悠(さかした はるか)「デートもするけど、試しに半月、一緒に住んでみないか。もちろん、用事や付き合いもあるだろうから」
坂下 悠(さかした はるか)「帰ってきたい時だけこの家に居てくれたらいいから。で、何て呼んだらいい?」
と、僕は雲りのない顔で話した。二人は頷いて、窓の外の夜空を眺めていた。
それから互いの好きな洋服、趣味、異性に求めることについて話した。
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
住み始めて半月近くなった頃。
浅野 嘉穂(あさの かほ)「前に話したことなんだけどさ。人に合わせ過ぎるからか、周りの人にカメレオンって言われてさ」
浅野 嘉穂(あさの かほ)「悠から私はどう見えてる?」
坂下 悠(さかした はるか)「確かに最近、着ている服も仕草も、僕の好みに寄せてると言われたら、」
坂下 悠(さかした はるか)「嘉穂と、周りにいる人以上に僕が向き合えてないということになるな」
坂下 悠(さかした はるか)「僕にも合わせているって言いたいのかな」
浅野 嘉穂(あさの かほ)「え、何でそんなことになるの?」
坂下 悠(さかした はるか)「いや、嘉穂はありのままで良いんだよ。初めから友達として見ていた僕との関係であれば、」
坂下 悠(さかした はるか)「今より自分らしさを大切にできたかもしれない。悪いけど、外に出るわ」
坂下 悠(さかした はるか)「それともう、レンタル彼氏の関係も終わりにしよう」
〇玄関内
自分を大切にして欲しい。ありのままでいる嘉穂のことが大事だという思いは溢れてる。
でも、今の僕には掛ける言葉すら見つからない。
〇公園のベンチ
数十分後。
ここでよく散歩したな。
浅野 嘉穂(あさの かほ)「悠ってば」
と、後ろを振り返ると嘉穂が居た。
浅野 嘉穂(あさの かほ)「ここに居たんだね。探したんだよ」
坂下 悠(さかした はるか)「・・・」
浅野 嘉穂(あさの かほ)「私はね、悠に三つ言いたいことがあるの」
浅野 嘉穂(あさの かほ)「一つは、悠は私よりも色んな視点で見ることができるし、知っていることもたくさんある」
浅野 嘉穂(あさの かほ)「けどね、自分一人で、全て解決しようとしないで。私だって十三日間」
浅野 嘉穂(あさの かほ)「一緒に過ごした時間は短いけど、悠の器用さと不器用さも、ちょっと憎めない一面も知れたんだよ」
浅野 嘉穂(あさの かほ)「それって悠も私にありのままの姿を見せてくれていたってことだよね。だから、少しは私のことを信じてよ」
浅野 嘉穂(あさの かほ)「二つ目は、カメレオンは見方を変えれば相手を主観的に見る個性を持っていると思う。色を変える時は色を自分が選ぶし、」
浅野 嘉穂(あさの かほ)「ある意味自分らしさを忘れずに生きている人だと私は思うの」
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カメレオン的だとしても、合わせる相手を選び、相手の好みを主体的に理解しようとするので、それはそれで立派な”我”なのかなって思いましたね。
人に合わせることで、自分が何者かわからなくなってしまうのはなんだか悲しいけれど、かほちゃんみたいな考え方は素敵ですね。でもはるかくんの前では、少しくらいわがままになってほしいです。
人に合わせるタイプの人は、私からみたら疲れそうとは思うんですが、本人がいいならそれでいい気もするんです。
好きな人がいたら、その人の好みに合わせたくなるのも女心ですよ。