大好きだった人がコンビニにいる。

りるか

家の近くに新しいコンビニが出来ました(脚本)

大好きだった人がコンビニにいる。

りるか

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〇教室
  学生時代、学校のアイドルがいた
  綺麗で、頭が良くて、優しくて、
  有名な大学に進学が決まって。
  そんなアイドルの将来を、口を揃えて
  みんなはこう言った。
「将来有望だ」

〇黒
  それなのに

〇コンビニのレジ
赤城 走馬「いらっしゃいま・・・」
桃井 真琴「えっ」

〇黒
  『大好きだった人がコンビニにいる』

〇コンビニのレジ
桃井 真琴(走馬くん・・・だよね?)
桃井 真琴(家の近くに新しくコンビニが出来たから来てみたんだけど)
赤城 走馬「あーっ・・・」
赤城 走馬「お決まりでしたらどうぞ」
桃井 真琴「あっ、はい」
桃井 真琴(ヤッバ!仕事帰りだから思いっきり食べ物が恥ずかしいことになってる!)
赤城 走馬「有難うございましたー」
桃井 真琴「あ、ありがとうございます!」
桃井 真琴(ふーっ。何も触れられないで良かった)
桃井 真琴(そもそも私なんて覚えてないか)
桃井 真琴(彼は学校のアイドルだったんだから)

〇黒
  昔からそうだ

〇教室
桃井 真琴(今日もかっこいいな)
桃井 真琴(あっ、筆箱落としちゃった)
赤城 走馬「はい、どうぞ」
桃井 真琴「あっ」
桃井 真琴「有難うございます!」
赤城 走馬「どう致しまして」
赤城 走馬「てか、同級生だから敬語じゃなくて良いのに」
桃井 真琴「あまり話したことないし、何か緊張しちゃって」
赤城 走馬「ははっ。それもそうか」
赤城 走馬「じゃあこれから沢山話したら敬語じゃなくなってくれる?」
桃井 真琴(えっ?)
桃井 真琴「それって」
「おーい!次移動だから早く着替えろよー!」
赤城 走馬「あっ、ごめん。じゃあまたね」

〇コンビニのレジ
桃井 真琴(それ以来、結局あまり話すことはなかったもの)
桃井 真琴(私だけしか覚えてなさそうだし、家から近いからこれからも通おうかな)

〇黒
  それからもほぼ毎日

〇コンビニのレジ
赤城 走馬「いらっしゃいませー」

〇コンビニのレジ
赤城 走馬「いらっしゃいませー」

〇黒
  『大好きだった人がコンビニにいる』

〇コンビニのレジ
赤城 走馬「こちらのレジどうぞー」
桃井 真琴(あれ、今日はメガネだ)
赤城 走馬「有難う御座いました」
桃井 真琴「あっ、有難うございます!」
赤城 走馬「ふぅ」
赤城 走馬(まさかコンタクト無くして眼鏡姿見られちゃうとは)
赤城 走馬(それにしても、誰にでも敬語なの変わらないなぁ)
赤城 走馬(まぁ、相手は覚えてないだろうけど)
赤城 走馬(だって彼女は、学校のアイドルだったから)

〇教室
  学生時代、学校のアイドルがいた
  綺麗で、頭が良くて、優しくて、
  有名な大学に進学が決まって。
  そんなアイドルの将来を、口を揃えて
  みんなはこう言った。
「将来有望だ」

〇コンビニのレジ
赤城 走馬(ほぼ毎日ここに来るけど、何の仕事してるんだろう?)
赤城 走馬(きっと、公務員とか、秘書とか、そういうのなんだろうな)
赤城 走馬(話しかけたいけど、完全に忘れられてたらちょっとショックだったり)
赤城 走馬(筆箱拾った時も、あんな事言っておきながら結局話せなくてダサかったしなぁ)
赤城 走馬(でも今は、こうして彼女に会える)
赤城 走馬「やっぱり、次来たら声をかけてみよう」
赤城 走馬「もしも忘れられてたら、その時はまた1から始めよう」

〇コンビニのレジ
  ──それから数日後
赤城 走馬(前はほぼ毎日来てたのに、最近あまり見ないな)
赤城 走馬(来たっ!!)
赤城 走馬(よし!今日こそ)
赤城 走馬(──って。あれ、いつもより元気が無いような)
赤城 走馬(えっ、これだけ?)
赤城 走馬(しかもコーヒーなんて今まで買ったことなかったのに)
桃井 真琴「──どうかしましたか?」
赤城 走馬「あっ、いえ!すみません」
赤城 走馬「ありがとう・・・ございました」
桃井 真琴「・・・ありがとうございます」
桃井 真琴「えっ?」
赤城 走馬「帰せない」
赤城 走馬「そんな顔のまま、1人に出来ないよ」
赤城 走馬「何かあったの?」

〇公園のベンチ
  ──数分後
赤城 走馬(あれから丁度夜勤の人が来たから代わって、そのまま連れて来ちゃったけど)
赤城 走馬(そもそも俺のこと覚えてなかったら普通にちょっと怖いよな)
赤城 走馬(でもあのまま放っても置けなかったしなー)
桃井 真琴「走馬くん、ですよね」
赤城 走馬「えっ!?」
赤城 走馬「俺のこと、覚えてたの?」
桃井 真琴「勿論です。学校のアイドルだったから」
赤城 走馬(それは俺からしたら貴女の方だけど)
赤城 走馬(嬉しいな)
桃井 真琴「私のことも、覚えててくれたんですか?」
赤城 走馬「勿論だよ、真琴さん」
桃井 真琴「嬉しい」
赤城 走馬「──えっと」
赤城 走馬「連れ出しておいて今更って感じだけど、何があったかは聞いても良いのかな?」
桃井 真琴「話すのも恥ずかしい様な、ただ私が弱い人間だという話なのですが」

〇おしゃれな受付
  一応、卒業後はそれなりに大きい企業に
  就職出来たんです
  だけど

〇オフィスのフロア
  終わりの見えない残業

〇女の子の一人部屋
  休日も関係なく出勤命令

〇公園のベンチ
桃井 真琴「それで今日、ミスしてしまいすごく怒られちゃいまして」
桃井 真琴「明日まで終わらせないといけない仕事があるのに、」
桃井 真琴「走馬くんにまで迷惑かけて何してるんだろう」
赤城 走馬(毎日来る時間が違ったのも、さっきのコーヒーもそういうことか)
桃井 真琴「こんなくだらないことで心配かけちゃってごめんなさい」
桃井 真琴「お話、聞いてくれてありがとうございました」
桃井 真琴「それじゃあ、私はこれで──」

〇教室
赤城 走馬(綺麗に・・・笑う人だなぁ)

〇公園のベンチ
赤城 走馬「俺、将来有望とか言われてたけど、今はコンビニで働いてるよ」
桃井 真琴「えっ?」
赤城 走馬「実は俺も大学卒業して大きい企業にいたけど、合わないなと思ってすぐ辞めちゃった」
赤城 走馬「今はその繋ぎで、とりあえずコンビニで働いてるんだけど」
赤城 走馬「やってみると超大変」

〇コンビニのレジ
  タバコの種類覚えたり

〇コンビニの雑誌コーナー
  バイトにはどうしようにも無いようなクレーム来たり

〇公園のベンチ
赤城 走馬「だけどさ」
赤城 走馬「君に会えた」
赤城 走馬「想いを伝えられずにいた大好きだった人がコンビニに来るなんて」
赤城 走馬「奇跡以外の何者でもなくない?」
桃井 真琴「走馬くん・・・」
赤城 走馬「今の会社に居るのが辛いなら、何か新しいことを始めるのも有りだと思う」
赤城 走馬「何より、君に笑っていてほしい」
赤城 走馬「ただそれだけ。たったそれだけなんだ。今も昔も」
桃井 真琴「ありがとうございます」
桃井 真琴「お陰で私も、大切なことを思い出しました」

〇コンビニのレジ
  ──それから数週間後
赤城 走馬「ありがとうございましたー」
桃井 真琴「有難うございました」
赤城 走馬「よし、じゃあ次はレジ打ち覚えようか」
桃井 真琴「うんっ」
赤城 走馬(まさか、あれから一緒に働くことになるとは思わなかったな)
赤城 走馬(でも)

〇公園のベンチ
桃井 真琴「ずっと、走馬くんと敬語抜きで話せる位仲良くなりたかったんです」

〇コンビニのレジ
赤城 走馬(何て言われたら、ね)
桃井 真琴「走馬くん、聞いてもいい?」
赤城 走馬「うん、勿論」
(今日も)

〇黒
  『大好きな人がコンビニにいる』

コメント

  • このお話を読んで、最近近所のドラッグストアの可愛い店員さんが居なくなってから行く頻度が低くなっていた自分に気付かされましたw
    二人がちゃんと進展出来てホッコリしました。

  • 両片想い、しかも有望株同士。学生の頃と、社会人になってからの変化がリアルで共感できました。だからこそ、思い詰めるヒロインに、自身のことをありのまま話す走馬の気持ちにグッときました。
    彼らの再会は偶然じゃなくて必然だったのかなぁ、なんて思いました(^^)
    一度はすれ違った想いが実って良かったです✨

  • 設定と人間讃歌に、ますキュンとなって、展開とオチにもきゅんとなって、キャラやセリフにもキュンとなって。
    これは、おでんだ、しみるなぁ。感謝。

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