おばあちゃんのハンカチ

深海雪

エピソード4(脚本)

おばあちゃんのハンカチ

深海雪

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〇病室
伊村雅子「お義母さん・・・」
  沙耶が息を切らし、病室に駆け込んできた。
伊村沙耶「お母さん!! おばあちゃんの入院がのびたって、どういうこと!?」
伊村雅子「沙耶ちゃん、学校は!?」
伊村里子「あらあら、大声だして、どうしたの!?」
伊村沙耶「おばあちゃん!!!!!!」
伊村雅子「お義母さん、大丈夫でしたか!?」
伊村里子「大丈夫、大丈夫!! 骨には異常ないって」
伊村沙耶「えっ、どういうこと!?」
伊村雅子「おばあちゃん、ずっと寝たきりだったのに、いつも通り歩いちゃって、足を・・・」
伊村里子「ちょっとくじいちゃっただけだよ。ほら、この通り!!」
  右足首に包帯をまいてる里子が、病室を元気よく歩いて見せる。
伊村里子「あっ、いたっ!!」
伊村雅子「お義母さん、無理しないでください!!」
伊村沙耶「もう!! 学校、早退してきちゃったよ」
伊村里子「ごめん、ごめん」
伊村沙耶「愛理に「大丈夫」って連絡しなきゃ!」
  カバンからスマホを取り出そうとした時、桜の刺繍入りのハンカチが落ちた。
伊村里子「あっ・・・私が刺繍したハンカチ・・・」
伊村里子「気に入らないって言ってたじゃない!?」
伊村沙耶「・・・もったいなくて使えなくて・・・。だってこんなに桜がキレイなんだよ!! 汚したくないじゃん!」
伊村里子「そんなこと言わないで使って!!」
伊村里子「新しいのも、刺繍が終わったんだよ」
  雅子がカバンから緑地に菜の花が刺繍されてるハンカチを出し、里子に渡した。
伊村里子「去年の家族旅行の時、「菜の花がキレイ」って言ってたでしょ。だから・・・」
  里子が沙耶にそのハンカチを渡す。
伊村沙耶「わぁ〜キレイ・・・」
伊村沙耶「さっすが、おばあちゃん! すっごいキレイな菜の花・・・本当にステキ・・・!!」
伊村沙耶「・・・また、もったいなくて使えないよ」

〇病院の廊下
伊村沙耶「いち、に、いち、に・・・」
伊村里子「やっぱり、1週間も寝たきりだと、筋肉が落ちちゃうんだね。歩くだけなのに、こんなにつらいなんて・・・」
伊村沙耶「ほら、しゃべってないで、もう1回!!」
伊村里子「沙耶ちゃん、意外に厳しいのね・・・」
伊村沙耶「がんばろ!! おばあちゃんが退院したら、いろいろ教えてもらいたいんだから・・・」
伊村里子「そうだったね・・・刺繍に、白玉作りだったっけ!?」
伊村沙耶「えっ!? なんで知ってるの!?」
伊村里子「真斗は、片付けをちゃんとして、おばあちゃんを甲子園に連れてってくれるんだよね」
伊村里子「沙耶ちゃんと真斗が話してるのが聞こえて、「あっ、起きなきゃ!!」って思ったのは覚えてるの」
伊村沙耶(本当に聞こえてるものなんだ・・・)
伊村里子「ありがとね。私を目覚めさせてくれて!!」

〇シックなリビング
伊村雅子「真斗も沙耶も、喜びますね!!」
伊村真斗「ただいま〜!! あっ、おばあちゃんだ!!」
伊村里子「おかえり!!」
  ランドセルをソファーに放り投げた真斗は、里子に抱きついた。
伊村里子「おやおや、赤ちゃんみたいだね」
伊村雅子「真斗、またランドセル投げて・・・中身、散らかってるじゃない!」
伊村里子「ちゃんと、お片付けしてくれるんだよね、真斗!!」
伊村真斗「えっ!? する、するよ、ちゃんとする!!」

〇野球のグラウンド
伊村雅子「真斗〜〜〜、がんばれ──!!」
伊村真斗「よし!!」
  「カキーン」という快音とともに、球が外野へと飛んでいく。
伊村里子「えっ!? もしかしてホームラン!?」

〇シックなリビング
伊村沙耶「おばあちゃん、これでいい!?」
伊村里子「あっ、ここはもうちょっと丁寧にね・・・」
伊村沙耶「刺繍って、こんなに難しいの!?」
伊村里子「慣れちゃえば簡単よ!」
  テーブルに置いてあった沙耶のスマホのバイブが鳴った。
伊村沙耶「あっ、誰だろ!?」
伊村里子「もしかして、例のバラのあの人!?」
伊村沙耶「あ・・・うん・・・」

コメント

  • 山あり谷ありで一筋縄では行かないけれど、最後はみんな明るい方へと向かってゆく。これがホームドラマだ!って感じのお話でした。ストレス無く読み進められるのも売り。期待させるラストもこれはこれでいいですね。
    1話ごとの区切り方、続きに引っ張る手法はわたしも出来るようにならないとな~と思いました。この手法が強めに仕掛けられていて、確かに続きが気になります。
    めでたしめでたしで良かった!

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