〇男の子の一人部屋
　　ゆやりゆやりとしたある日
　　2chを見ていると、俺が乗っていた
　　「1000年に一度の隆見つけたったwww」
　　とかいうスレがあったから、なんとなくクリックしたら載っていた。
　　あの写真は確か、中学校卒業した時に友達と撮った写真だ。
　　どっから流れたのかはわからんが確かに俺だ。
　　「1000年に一人の隆だ。すげえ!!」
　　「俺も隆だが、俺は18年に一人の隆だ。」
　　「ああ、ちなみに俺は986年に一人の隆だよ。」
　　「僕はともき。20分に一人のともきだよ。」
　　というようなコメントがバラバラと並んでいる。
　　みんな、何を言っているのかわからない。不思議な世界だ。
　　でも、取り敢えず褒められている。
　　誰だってインターネットで有名になれる時代だ。
　　ちょっと不思議だが、嬉しくなった。
　　バタッ!!
母親「たかしぃ!!勉強してるの??」
　　急にドアを開けて母さんが入ってきた。デリカシーのない親だ。
たかし「うるせーなあ!!どっか行ってろ!!」
母親「全く。親に向かってなんなのよ。もうちょっとでご飯だからね」
たかし「はいはい」
　　バタッ!!
　　出てったか。うるせー親だ。
　　ポチッ
　　テレビをつける

〇テレビスタジオ
　　いつものように夕方のニュースがやっている。
　　コメンテーターが隅の机に座り、司会の男女二人がモニター近くに立っている。
ニュースキャスター1「続いてのニュースです。1000年に一人の隆が発見されました」
　　ババーン!!
　　派手な効果音と共に私の写真が映し出される。
　　さっきと同じ写真だ。
　　なんなんだ、これは。
ニュースキャスター2「本日未明、インターネット上で1000年に一人の隆が見つかりました。人類史上初の快挙です」
ニュースキャスター2「続いて、人類学教授の村田さんのインタビューです」

〇研究所の中
村田教授「はい。これはねえ、もう間違いなく1000年に一人の隆ですよ」
村田教授「感動しました。一人で泣いてしまいましたよ。もう、ははははは」

〇テレビスタジオ
ニュースキャスター1「いやあ、素晴らしいことですね。千年に一人の隆が見つかりました」
ニュースキャスター2「ほんとですねぇ。すごいことです。ちなみに私は３年に一度の幸子ですわ。うふふふふ」
ニュースキャスター2「あ、隆さんは隆ですけど、この件についてどう思いますか？」
たかしコメンテーター「いやあ、私なんて356年に一度の隆ですからね」
たかしコメンテーター「ケラケラケラ」
たかしコメンテーター「敵わないですよ。。お手上げ、お手上げ」
たかしコメンテーター「ケラケラ」
ニュースキャスター2「はははは。そうでしたかー」
ニュースキャスター1「現在身元の特定が進められているそうです」
　　ピンポーン
　　チャイムが鳴った。

〇綺麗な一戸建て
　　嫌な予感がする.....
　　は〜い!!
　　母さんの声だ
　　ガチャ
「あ、夜分遅くにすみません。あの、こちらに隆という方はいらっしゃいませんでしょうか」
「え、、あ、いや、居ませんけど」
　　嘘をつく母。
「いやあ、おかしいなあ。ちょっと中に入らせて頂いてもいいですか？」
「え、ちょっと待ってください」
「すみませんねえ」
　　ガラガラガラ
「ちょっと、だめっていっ、！、、たかしぃ!!逃げてえ!!」
　　ダダダダダッ!!ダダダダダダッ!!
　　こっちに、来る！
　　とにかく、ここに居てはいけないことだけは確かだった。
　　バリーンッ!!

〇通学路
　　窓を突き破り外に出る。
　　裸足だ。
　　よくわからない。
　　とにかく逃げなければいけない。
　　裏庭の塀を越える。
　　後ろから追ってくる音がする。振り向く。
　　なんだあいつ.....
　　こっちにむかって早歩きのように向かってくるが、すごい速さだ.....
　　タッタッタッタッタッタッタッ
　　足がすくむ...前を向いて逃げなければ.....
　　すぐに商店街に出る。
　　生まれ育った商店街だ。

〇商店街
近所のおじさん「おい、隆がいるぞ」
近所のおばさん「ほんとだわ!!まさか、あの隆が」
　　パシャッ!!パシャッ!!
　　仲良しの近所のおばさんやおじさんが、僕にカメラを向けてくる。
　　なんだかわからない。
　　昨日までの俺が生まれ育った街ではない。
　　街全体がぬめっとした赤色に侵略されてしまったみたいだ。
　　みんな好奇の目でこっちを見てくる。
　　助けてくれる感じはしない。誰も宛にしてはいけない気がする。
　　後ろからはあの機械人形みたいなやつらがスタスタスタスタ追ってくる。
　　捕まったら終わりだ。とにかく逃げる。
　　ダダダダダダダダッ!!

〇学校脇の道
　　裏道に出る。
　　人通りが少ない。
　　とにかく遠くへ行かなければいけない。
　　奴らを巻かなければいけない。
　　それからどうするかはそれから考えるんだ。
　　この辺の道はあいつらよりは詳しいはずだ。
　　あそこの角を曲がると河原に出る。
　　そしたら闇に紛れ逃げきれるかも知れない。
　　角を曲がる。
　　ドンッ!!
　　何かにぶつかって尻餅をつく。
　　見上げると人が立っている。なんだか、見覚えがある。
智「隆、お前、すげえな」
　　これは、智の声だ。
　　中学の時、部活もクラスも同じだった親友。
　　あの写真に一緒に写っていたやつだ。
誰か「すごいね、隆くん!!」
誰か2「やるじゃないかあ、隆」
　　いつの間にか人だかりが出来ていた。
　　顔なじみの人ばかりだ。
　　高校の担任の先生、いとこ、隣に住んでるおじいちゃんもいる。
母親「隆、やったじゃない」
　　母さんまで....。
　　みんな、蝋人形みたいにニコニコニコニコ笑っている。
　　みんな違う。
　　後ろを向くと、あの人形みたいなやつが、すぐ近くに立っている。
　　終わりだ。
　　パチパチパチパチ
　　パチパチパチパチパチパチパチパチ
　　パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
　　パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
　　みんな、拍手をしている。
　　よくわからないが。
　　なにがなんだかわからないが、みんな拍手をしていて、俺はもう終わりだ。
　　ああああああ
　　その時
　　ピロリリーン、ピロリリーン
　　スマートホンが一斉に声を上げた。
　　ニュース速報 ニュース速報
　　1006年に一人の隆、見つかる。
　　画面を開くと、さっきニュースで356年に一度の隆とか言ってたおじさんが、
　　顔を真っ赤にしながら、ずりずり引っ張られていく様子が映し出されていた。