夢を、人を、おもうこと(脚本)
〇開けた交差点
陽菜「はぁ・・・」
旭「よ、どした?」
陽菜「・・・」
陽菜「はぁ・・・」
旭「無視すんなよ!」
陽菜「旭なんかに話してもね・・・」
旭「久々に会う幼馴染みに対して ひどくない?」
陽菜「とにかく、消えて」
旭「待て待て、俺泣いちゃう」
旭「本当に何があったんだよ?」
陽菜「だから、旭には」
ポツリ
〇開けた交差点
陽菜(イケボ)「関係な──」
「!」
旭「今の声って──?」
旭「おい、なんで黙ってるんだよ」
陽菜(イケボ)「・・・」
旭「じゃあ、これでどうだ?」
旭「じゃじゃーん! 陽菜の好きなバンドの限定ストラップ!」
陽菜(イケボ)「え!すごい!・・・あっ」
旭「そ、その声」
旭「めちゃめちゃイケボじゃん! どした!?」
陽菜(イケボ)「・・・知られたからには話すわ」
陽菜(イケボ)「うちに来てくれる?」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
陽菜(イケボ)「・・・三日前、激しめの筋トレをしてたの」
陽菜(イケボ)「で、ふと手が当たって 私の宝物を少し破いちゃって」
旭「宝物?」
陽菜(イケボ)「これ──」
てるお「貴様は何者てる~!?」
旭「うわぁ! なっ、何こいつ?」
陽菜(イケボ)「てるてる坊主の、てるお」
てるお「貴様よく見たら旭てる! 旭は嫌いてる~!」
旭「俺のこと知ってるの?」
てるお「陽菜ちゃんのことは何でも知ってるてる!」
陽菜(イケボ)「旭がうちに来てた頃は まだ普通のてるてる坊主だったからね」
旭「まだってどういうこと!? こわっ!」
旭「てるてる坊主ってことは吊るすの? よく通報されないな」
陽菜(イケボ)「全然されてるけど?」
陽菜(イケボ)「私の大切なてるおに 難癖つける奴がおかしいのよ」
旭「メンタルつよ!」
旭「で、そのてるおがなんで話してるの?」
てるお「大切にされたものには魂が宿るんだてる~」
陽菜(イケボ)「でも、私がてるおを破いちゃったから・・・」
てるお「僕は陽菜ちゃんのことを 呪ってしまったてる!」
旭「じゃあ、陽菜の声は・・・」
陽菜(イケボ)「てるおの呪いで 雨が降るとイケボになっちゃうの」
てるお「てるてる~!」
旭「はは、なんだそれ」
陽菜(イケボ)「笑い事じゃないの! 見てよ、これ」
旭「イベント? 音楽ステージ出演者ハルナ・・・って」
陽菜(イケボ)「私!」
陽菜(イケボ)「ずっと夢だった野外ライブに 出られるの!」
旭「すげーじゃん!」
陽菜(イケボ)「で、筋肉から見直して 鍛えてたらこんなことに・・・」
旭「いーじゃん、イケボだし むしろファンが増えるかも」
陽菜(イケボ)「私の歌は私の声じゃないと歌えないの!」
陽菜(イケボ)「夢だったんだよ? それなのに・・・」
旭「ご、ごめん」
陽菜(イケボ)「もういい 夢を諦めた旭にはわからないよね」
陽菜(イケボ)「私、今日から会場近くに泊まるから もう行くね」
陽菜(イケボ)「旭も適当に帰って」
旭「・・・」
〇大きな公園のステージ
陽菜(とうとう本番だ)
陽菜(天気は曇り・・・)
陽菜(きっと大丈夫・・・ 雨なんて降らない)
〇大きな公園のステージ
陽菜「~♪」
陽菜(晴れてきた!)
ポツリ
〇大きな公園のステージ
陽菜(お天気雨──!)
陽菜(どうしよう、声が・・・)
陽菜(ん? あれは──)
陽菜(旭と、てるお!)
陽菜(周りからすごい目で見られてるけど・・・)
陽菜(なにか書いてある・・・ ご、め、ん、ね・・・?)
陽菜(てるお・・・ それは私の方だよ)
旭「陽菜! 全力で歌え!」
陽菜(うん・・・!)
〇空
〇公園のベンチ
陽菜「旭、てるお!」
旭「よっ 歌めちゃくちゃよかったな!」
てるお「陽菜ちゃん・・・」
陽菜「てるお 破れたところ直ってるけど もしかして──」
旭「ああ、俺だよ」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
旭「なんで呪ったりしたんだよ?」
てるお「だって、悲しかったてる!」
てるお「陽菜ちゃんは僕を置いて 一人で頑張っちゃうんだてる・・・」
旭「だからって 夢の邪魔するなんて──」
てるお「旭なんかに言われたくないてる!」
てるお「旭こそ 昔、夢を馬鹿にしてたてる!」
旭「あれは──」
〇女の子の部屋
陽菜「カラオケコンテストで 大賞とれたんだよ」
旭「でも、所詮カラオケだろ?」
陽菜「なんでそんなこと言うの?」
陽菜「旭だって夢のために頑張ってるじゃん!」
旭「いつの話だよ」
旭「男が裁縫とか、だっせーし 服を作るのなんてとっくにやめたよ」
陽菜「そう、なんだ・・・」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
旭「あれは、強がってただけだよ 周りの奴らにとやかく言われて 嫌になってたんだ」
旭「でも、今は違う」
旭「陽菜のことは応援したいし 自分の夢も叶えたいんだ」
旭「この服だって自分で作ったんだ」
てるお「・・・」
旭「てるお、お前も陽菜のこと応援したいだろ?」
旭「俺がお前を直すから もう呪いなんて──」
てるお「うわーーん!」
てるお「本当はずっと呪いなんて ときたかったてる~!」
てるお「でも、引っ込みがつかなくて・・・」
旭「じゃ、今やるしかないな?」
てるお「わかったてる、旭~!」
てるお「でも陽菜ちゃんは渡さないてる~!」
旭「は、陽菜とは、そんなんじゃ・・・」
てるお「そんなんじゃないてる?」
旭「・・・ほら、さっさと直すぞ」
〇公園のベンチ
旭「直したのは俺だけど 呪いをといたのはてるおだ」
陽菜「てるお、ありがとう!」
陽菜「あと、ごめんね」
てるお「僕こそ ごめんてる~!」
陽菜「ううん 綺麗に直してもらってよかった!」
陽菜「旭も、ありがとう」
旭「いや、それより──ごめん」
旭「夢を馬鹿にしたようなこと言って」
陽菜「・・・私もごめんね」
陽菜「本当は気づいてたんだ 旭が夢を諦めてないってこと」
陽菜「その服だって 旭のデザインってすぐわかった」
旭「そっか ・・・俺のこと、よく見てるな」
陽菜「お、幼馴染みだから気づいただけよ」
旭「はは、そっか」
旭「これからも俺のこと見ててくれよ」
旭「俺も陽菜のこと ずっと見てるからさ」
陽菜「し、仕方ないなぁ、もう」
旭「今度のライブでは俺の服着てよ」
陽菜「楽しみ!」
てるお「てるてる~!」
陽菜「わっ!」
旭「どうした、てるお?」
てるお「旭! 陽菜ちゃんは渡さないと言ったてる~!」
旭「バ、バカ! そんなんじゃないって──」
陽菜「安心して、てるお 私の宝物はてるおだよ」
旭「お、おい! ずるいぞ、てるお!」
てるお「ずるい? やっぱりそんなんてる~!」
陽菜「仕方ないなぁ、ほら旭も」
旭「え・・・」
旭「今のって・・・」
旭「どういう意味のやつ?」
陽菜「・・・さあね?」
てるお「は、は、陽菜ちゃーん!」
このお話、個人的にすごく好きてる〜♪
ありがとうございまてる?
てるおの呪い、おそろしや……(笑)
素直になれない3人(?)がてるおの呪いを通して素直になれたラストに、微笑ましく思いました(^^)
てるお、登場は衝撃的でしたが、その人間的なキャラクターに、なんだかとても気に入ってしまいました!
きっとてるおは、いい感じになる2人の邪魔をしまくる……そんな未来を想像してしまいました(笑)
雨が降ると声が変わってしまうという呪いが、上手く主人公達の奮闘を盛り上げてますね。
一度物語を見終わった後に、登場人物紹介を見て「こんなイメージの声なのかw」とジワジワ来ますね。