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赤井景

第6話 「真犯人」(脚本)

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〇異世界のオフィスフロア
アキロー「アイリちゃん殺しの黒幕は、オモカネ室長・・・」
アキロー「本当に・・・そんなことありえるのかな・・・?」
銀次「んー、実際に黒幕なのかはさておき、オモカネさんなら余裕でやれるってのは確かッスねぇ」
銀次「なんせ、今のアイリさんを殺すのって、相当難しいはずッスからね」
  そうなのだ。
  僕はアイリちゃん殺害を防ぐために、いろんな商品を送った。
  防弾防刃ベストに、毒無効化アンプル、炎除けのアミュレット、なんて具合に。
  それにも関わらず、アイリちゃんは「呪殺」された。
  対策の穴を的確に突かれた形だ。
銀次「そんなの、いろんな商品を熟知してないとできることじゃないッスよ」
テンシエル「そこいくと、オモカネ室長なら余裕よね~」
テンシエル「商品知識ハンパないし、相手の購買意欲をくすぐるトークは神レベル」
テンシエル「オペレーターやってたころはぶっちぎりの営業記録たたき出してたみたい」
テンシエル「ヤマトタケルが女装に目覚めたのも、オモカネ室長がコスメを薦めたのがきっかけって聞いたなぁ~」
銀次「自分も色々と伝説は聞いてるッスよ」
銀次「《世界樹の大蛇》に限定モデルのスニーカーを売った、とか」
銀次「蛇に靴売るくらいなんだから、暗殺グッズを買わせてその気にさせる、なんてことは朝飯前ッスよね~」
  考えれば考えるほど、『オモカネ室長=アイリちゃん殺しの黒幕説』は間違いないように思える。
  僕の販売履歴を見れば、アイリちゃんがどこに転生したかも、僕がどんな対策を講じているのかも、簡単にわかる。
  そして、上司であるオモカネ室長には、僕の販売履歴を見る権限があるのだ。
アキロー「問題は、どうやってオモカネ室長が関与している証拠をつかむか、かぁ・・・」
アキロー「オモカネ室長の販売履歴を見ることができれば一発だけど・・・」
テンシエル「それはムリ~。 上司には部下の販売履歴を見る権限があるけど、逆はナシだしぃ~」
アキロー「ですよね・・・。 あと一歩なのに・・・なにか手はないのかな・・・」
  RRRRRRRRRRRRRRR
  注文の通話。
  打開策は見つからないけど、ひとまず仕事に戻らないと。
アキロー「・・はい、『まるちばドットコム』です」
アイリ「あ、もしもし? アキローくん?」
アキロー「アイリちゃん・・・もう次の世界に転生してたんだね」
アイリ「うん。ついさっき。 今度は『天才ウィザード』ってやつみたい」
アキロー「ごめんね。 僕はまた・・・力になれなかった」
アイリ「そんなことないよー。 むしろいつも助けてもらってばかりだし」
アイリ「それに、どの世界に行っても、アキローくんとおしゃべりできるっていうのは、かなり安心するんだよ」
アイリ「私はひとりじゃないんだーって思えるから」
アキロー「・・・それならよかった。 僕でよければ、いくらでも話し相手になるよ」
アイリ「そう? じゃあお言葉に甘えて・・・」
  それからしばらく、僕らは他愛もない話をした。
  これまでの渡り歩いた世界で印象に残ったこと。もうずいぶんと昔に思える、地球での思い出。
  他の転生者はどうしてるのかな、なんて話。
  そして今度の世界のこと──。
アキロー「・・・そうか! それだ!」
アイリ「え? え? 急にどうかしたの?」
アキロー「アイリちゃん・・・キミに大事な話があるんだ。聞いてもらえるかい?」

〇異世界のオフィスフロア
ユーリ「なぬ! 貴様、なんだその口の利き方は!」
ユーリ「・・・はぁ? お客様は神様? バカめ! 神を恐れる魔王がいるか!」
テンシエル「ちょっと~、オモカネ室長~」
テンシエル「またユーリくんがお客様ともめてるんですけど~」
オモカネ「やれやれ、またかい? はいはい、今代わるよ」

〇異世界のオフィス
  うまい具合に、ユーリたちが騒ぎを起こしてくれた。
  彼らがオモカネ室長を引きつけてくれている間に、僕が室長室に忍び込むという手はずになっている。
  前世での仇敵であるアイリちゃんを助けるのが目的だというのに、ユーリは喜んで協力を約束してくれた。
  「前世での出来事を気にするほど、我は器の小さい魔王ではないぞ」とのことらしい。
アキロー「・・・アイリちゃん、準備はいい?」
アイリ「うん、まかせて」
  お目当ては、オモカネ室長の営業端末。
  そこに『オモカネ室長』としてアクセスすることで、彼の営業履歴を閲覧しようというのだ。
  もちろん、それにはセキュリティを突破する必要がある。
  そしてそのためには、アイリちゃんの協力が不可欠だった。
アイリ「でもうれしいな」
アイリ「私がアキローくんの役に立てるなんて、これが初めてだし」
  アイリちゃんが今回転生したのは、「ネオニューロ」というサイバーパンク世界だった。
  その世界でのアイリちゃんは、AIによる支配に立ち向かう、「天才ウィザード」。
  ・・・つまりは凄腕のハッカーだ。

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