コンテスト応募作品(脚本)
〇繁華な通り
佐久間 珠美「やばい、時間ギリギリじゃん! せっかく指定席の前売り券買ったのに無駄になる! やばい!とにかくやばい!!」
キキーッ!
「危ないだろ、気を付けろ!」
佐久間 珠美「すみませぇん!」
佐久間 珠美「開場まであと5分 間に合う!間に合え私!」
〇映画館の座席
映画館に到着して、指定席のチケットと引き換える
場内は既に予告編が流れているようだ
佐久間 珠美「はぁはぁ、間に合ったぁ・・・」
佐久間 珠美「あれ?」
佐久間 珠美「あのぉ」
中森 時生「はい?」
佐久間 珠美「そこ、私が買った席なんですけど! どいてくれます?」
中森 時生「え?で、でも僕はちゃんと・・・」
佐久間 珠美「つべこべ言わない! ほらどいてどいて」
中森 時生「あ、あの」
ヒラリ
青年のポケットから半券が落ちた
佐久間 珠美「あ、落ちたよ」
拾い上げた珠美はその半券に書かれている座席番号を見て困惑する
そこに書かれていたのは、確かにその座席の番号だったのだ
佐久間 珠美「え?なんで?だって私もこの席を」
佐久間 珠美「・・・これ 次の回のチケット買っちゃってるじゃん」
〇映画館の座席
ちょうどその時
開演を知らせるベルが響き
室内が暗くなり始めた
佐久間 珠美「あ、ど、どうしよう でももう千切られちゃってるし・・・」
中森 時生「あの、とりあえず隣で見ます? 一応席空いてるし」
佐久間 珠美「あ、ありがとうございます!」
〇映画館の座席
佐久間 珠美「面白かったぁ」
中森 時生「うっ・・・グスッ・・・」
佐久間 珠美「あの・・・?」
中森 時生「あ、ご、ごめんなさいちょっと感動しちゃって」
佐久間 珠美「あー!あのラストでしょ? ハチが走ってきてくれる・・・」
中森 時生「はい、もうそこで涙腺が」
佐久間 珠美「うんうん、私もグッときちゃった!」
佐久間 珠美「あ、ねぇ良かったら ちょっとカフェ行きません? もっと映画の話したいです!」
〇テーブル席
中森 時生「・・・それで、この間は「湖にて」っていう映画を観て」
佐久間 珠美「それ私も観ました! 映像が超キレイな奴ですよね」
中森 時生「知ってるの?」
佐久間 珠美「もちろん! 私何回も観に行きましたから」
中森 時生「嬉しいなぁ こんな単館上映の作品まで通じるなんて そんな人に会ったこと無いよ」
佐久間 珠美「私も! すごく楽しい」
佐久間 珠美「ねぇ、名前聞いてもいい? 私、佐久間珠美」
中森 時生「中森時生です」
佐久間 珠美「中森君、他に観たい映画ある? 良かったら今度は一緒に行こうよ」
中森 時生「いいの? 僕と一緒に行っても」
佐久間 珠美「もちろんだよ 私が誘ってるんだもん」
中森 時生「彼氏とか、怒らない?」
佐久間 珠美「あはは、私彼氏いたことないから 心配しないで! ね、一緒に行こう?」
中森 時生「・・・うん!行こう」
〇映画館の入場口
その後
珠美と時生は何度か二人で
映画を観に行った
最初は珠美の勢いに
押されるばかりの時生だったが
回を重ねるにつれて
エスコートできるようになっていった
佐久間 珠美「今日のも良かったね」
中森 時生「あの伏線は気付かなかったなぁ」
佐久間 珠美「私は気付いたよ? 時生くんまだまだだなぁ」
中森 時生「さすがだね、佐久間さんは」
???「あれ? 佐久間じゃん」
佐久間 珠美「あー、山田かぁ」
山田「何してんのこんなとこで」
佐久間 珠美「映画鑑賞」
山田「えーお前が? 似合わねー」
佐久間 珠美「何よぉ 失礼だなー」
〇映画館の入場口
山田「じゃあまた、明日ゼミでな」
佐久間 珠美「うん、またね」
佐久間 珠美「ごめんね時生くん お待たせ 同じゼミの友達だったんだ」
中森 時生「・・・そっか」
佐久間 珠美「さ、カフェ行こうカフェ! 気になってるお店あるんだよね」
中森 時生「あー・・・ごめんね、佐久間さん 僕今日は用事があって 帰るわ」
佐久間 珠美「え?そうなの・・・ わかった」
中森 時生「うん ごめんね」
佐久間 珠美「じゃあ、また連絡するね バイバイ」
中森 時生「・・・じゃあね」
時生が去っていく
その背中が元気がないように思えて
珠美は少し気になった
〇女の子の一人部屋
あの日から一週間
時生からの連絡はない
それまではどちらからともなく
何気ないメッセージのやり取りを
していたのに
彼からの返信がパッタリと来なくなった
佐久間 珠美(既読にはなってるけど どうしたのかな)
佐久間 珠美(私、何か悪いことしちゃったかな?)
佐久間 珠美(あの時の時生くん、 なんか怒ってた・・・?)
佐久間 珠美「今日の映画、一緒に観たかったな」
〇映画館の入場口
佐久間 珠美(一人でここに来るの久しぶりだな)
佐久間 珠美(なんか淋しい)
〇映画館の座席
佐久間 珠美「えっと、私の席は・・・あった!」
中森 時生「あ」
佐久間 珠美「あ」
中森 時生「ま、待って!」
〇映画館のロビー
中森 時生「はぁはぁ、 佐久間さん、足早い・・・」
佐久間 珠美「なんで追いかけてくるの 避けてたのそっちじゃん」
中森 時生「うん ごめん 謝りたくて」
佐久間 珠美「謝るって?」
中森 時生「あの日、君の友達に会っただろ? ゼミの友達って言ってた子」
佐久間 珠美「ああ、山田のこと?」
中森 時生「うん 君がその山田くんと 仲良く話してるの見てて すごく楽しそうに話してるなって 思ったら」
中森 時生「すごく、嫌な気持ちになったんだ」
佐久間 珠美「えっ」
中森 時生「ごめん、言ってること変だよね でも、本当なんだ 君が誰か男の人と仲良くしてるの見たら それだけでモヤモヤして」
中森 時生「君にもひどいこと言ってしまいそうだったから 連絡スルーしてた ・・・ごめん」
佐久間 珠美「嫉妬、してくれてたの?」
中森 時生「嫉妬・・・」
中森 時生「あぁ、これが嫉妬って奴なんだね」
中森 時生「映画ではたくさん観たことあるのに 自分で体験するとどうしていいか全然わからなくなっちゃった」
中森 時生「君と会ってから 誰かと一緒に映画観るとか カフェで語り合うとか 夜中までメッセージするとか」
中森 時生「笑顔にドキドキするとか 癒されるとか 嫉妬するとか とにかく色んな初めての体験をしたよ」
中森 時生「佐久間さん」
佐久間 珠美「は、はい」
中森 時生「俺に、こんなにたくさんの 『初めて』をくれたのは 貴女が初めてなんだ」
中森 時生「貴女が、好きです。 この気持ちも初めてだよ」
佐久間 珠美「時生くん・・・!」
〇映画館の座席
席の照明が落ち
大画面に鮮やかな色が映し出される
珠美と時生は
互いに手を握ったまま
映画の世界に入り込んでいった
本編が終わり
スタッフロールが流れる
中森 時生「佐久間さん」
佐久間 珠美「なに?」
中森 時生「(チュッ)」
同じ映画を好きで語れる相手ってすごく特別に感じてしまうんですよね。
初々しい二人にキュンとしました。
可愛らしいボーイミーツガールですね😊
同じ趣味に運命を感じ、まだ恋と気付いていない彼の嫉妬心がまた可愛かったです!
ひとつの言動に一喜一憂したり、本来恋ってこういうものだよなぁと思い出させてもらった感じです。
楽しく拝読させていただきました、ありがとうございました!
「初めて」のことが多くて、彼もとまどってたんですね。
でも、少しずつ近くなる距離感がすごく素敵です。
ラストのシーンではキュンキュンしました!