読切(脚本)
〇古い大学
シーン28
テイク99
ヨーイ
アクション!
〇古い大学
瀬下「俺 卒業する前に どうしても言いたいことがあって」
瀬下「初めて会った時から・・・ ずっと お前のこと・・・」
園田「───プッ」
園田「アハハ」
はい とめてー
〇古い大学
園田「ごめん! ほんと ごめん!」
瀬下「お前なぁ いい加減にしろよ!」
園田「だって マジな顔するんだもん」
瀬下「何度も言わせんなって!」
瀬下「これは4年間片想いしてた男が 卒業前に告白する大事なシーンなんだよ!」
園田「わかってるわよ」
園田「ていうか 恥ずかしいのよ そもそも(・・・)みたいな 間は何なのよ」
瀬下「行間だよ あんだろ そういう雰囲気」
園田「だからぁ 恋愛映画のそういうとこが苦手なのよ」
園田「女々しいっていうか むず痒くなっちゃう」
瀬下「お前には一生わからねぇよ」
瀬下「頭も心も使わないアクション映画好きの お前にはな」
園田「は!? 私がバカって言いたいわけ!?」
瀬下「アクション映画バカって言ってんだよ!」
「@#☆¥&%〆!」
また喧嘩っす
助監督「あのー もうそろそろ」
下がってろ
こうやって止めんだ
監督「カァーット!」
「監督」
監督「馬鹿野郎 進まねぇだろが」
「こいつが 恋愛(アクション)映画バカにするから」
監督「園田」
監督「役に向き合え 映画が泣いてんぞ」
園田「はい」
監督「瀬下」
監督「お前のホンだろ 役者のせいにすんな」
瀬下「すんません」
監督「とにかく 今日は撤収」
監督「二人とも頭冷やせ いいな」
〇川に架かる橋
園田!
瀬下「ちょっといいか」
瀬下「俺ら今年卒業だろ 就職だってバラバラだし」
瀬下「多分これがみんなで作る 最後の映画になると思う」
瀬下「だからさ もっと真剣にやってくれよ」
園田「ごめん」
瀬下「いや・・・ こっちこそ言い過ぎた ごめん」
園田「私ね 心残りがあって」
園田「本当は瀬下君が主人公の アクション映画撮りたかったんだ」
瀬下「えっ」
園田「瀬下君 カッコいいし 汗とか泥とか すごく画になると思う」
園田「実はホンも書いてたんだ でも採用されなくて」
瀬下「監督 なんて?」
園田「血と火薬が多すぎるって」
瀬下「・・・ダメだろ」
園田「私は やっちゃいけないことをやるのが 映画だと思う」
園田「ドキドキするじゃん」
瀬下「俺は その・・・」
瀬下「園田で恋愛映画撮りたいって 思ってたから このホン書いたんだ」
園田「瀬下君」
瀬下「園田」
園田「私」
園田「恋愛映画は嫌い」
園田「じゃ 明日ね」
瀬下(はぁー・・・)
〇大衆居酒屋
瀬下
瀬下「監督」
監督「ここだろうと思ってな」
監督「ホン直してんのか 見せてみろ」
監督「───」
監督「何だこりゃ」
瀬下「アクション要素 足してみたんですけど」
監督「瀬下」
監督「お前の撮りたい映画は何だ」
瀬下「恋愛 映画です」
監督「じゃあ それを貫けよ」
監督「あいつのこと好きなんだろ」
瀬下「わかるんですか!?」
監督「フッ カメラは嘘つかねぇ」
瀬下「俺」
瀬下「大学受かって 映画サークル入って あいつに一目惚れして」
瀬下「それ以来 ずっと撮りたかったんです」
瀬下「あいつがヒロインの 恋愛映画」
監督「いいじゃねぇか その気持ちぶつけてみろよ」
瀬下「伝わるんですかね」
監督「わからねぇ」
監督「でもな ぶつかった先にドラマがある」
監督「俺たちはその一瞬のために 映画を撮ってきたんじゃねぇのか」
瀬下「ぶつかった先に───」
監督「そうだろ?」
瀬下「───はい!」
監督「その顔だ」
瀬下「俺 帰ります! 明日あるんで」
監督「フッ いい映画ができそうだぜ」
店員「お客さん そろそろ閉店ですけど お勘定一緒でええですか」
監督「・・・フッ そいつはNGだ」
〇古い大学
シーン28
テイク99? ん? 100・・・
何でもいい!
ヨォーイ!
アクションッ!!
〇古い大学
瀬下「俺 卒業する前に どうしても言いたいことがあって」
瀬下「俺さ───」
瀬下「やっぱりアクション映画は 好きじゃないんだ」
園田「・・・は?」
ん? ホンにないっすよ
アドリブか?
瀬下「すぐ爆発したり 銃で撃ち合ったり」
瀬下「わかりやす過ぎてさ ずっと観てこなかったんだ」
園田「ねぇ 何言ってんの?」
瀬下「でも それがいけなかったんだ」
瀬下「恋愛にもアクションが必要だったんだ」
園田「瀬下君?」
瀬下「俺 ぶつかってなかったんだ お前に」
瀬下「園田」
あ 近付いてくっす
園田「ちょっと」
瀬下「やっちゃいけないことするのが 映画なんだよな」
園田「あ・・・」
あ───
あーーーーーッ!!
キス しちゃったっす・・・
フッ これは確かに恋愛映画だぜ!
瀬下「───アクション映画にだって キスシーンくらいあるだろ」
園田「な 何すんのよ・・・!」
いや! アクション映画か!?
瀬下「園田」
瀬下「園田!」
すごい展開っす・・・
追うぞ
カメラ止めんなよ!
〇学校の部室
ん? 部室!?
あ! 小道具の!
園田「何であんなことしたのよ 答えて!」
瀬下「ずっと そうしたかったから」
園田「来ないで 撃つわよ!」
瀬下「撃てよ」
園田「・・・甘くみないで」
もう展開メチャクチャっす
馬鹿野郎
カメラが回ってるうちはなぁ
狂ってていいんだよ!
瀬下「園田」
園田「撃ったんだから倒れなさいよ!」
瀬下「倒れない 絶対に」
銃声 血しぶき
後で入れとけよ
瀬下「恋に落ちたらな 無敵になるんだよ」
瀬下「恋愛映画が教えてくれたんだ」
園田「私は・・・」
───あ
ピストルが
落ちた───
瀬下「抱きしめるぞ」
園田「あ・・・」
瀬下「わかるだろ」
瀬下「恋愛映画だって ドキドキするんだ」
瀬下「俺はずっとドキドキしてた」
瀬下「4年間 ずっと」
園田「瀬下君・・・」
瀬下「俺 お前のことが好きだ」
瀬下「卒業しても ずっと俺のヒロインでいてほしい」
瀬下「いいか?」
園田「・・・」
瀬下「園田?」
園田「答える 答えるから カメラ止めて」
園田「ふたりきりになりたい」
瀬下「あ ごめん」
瀬下「監督」
まだ止めんなよ
瀬下「監督!」
監督「・・・・・・ハイ OK〜!」
瀬下「ふたりきりにしてもらえませんか」
監督「・・・この後のラブシーン 撮っちゃダメ?」
「ダメです!」
〇明るい廊下
監督「ちっ クライマックスだってのに」
助監督「でも なんか羨ましいっすね・・・」
「──────」
助監督「この後 どうなっちゃうんすかね」
監督「フッ そりゃ決まってんだろ」
監督「ハッピーエンドロールさ」
〇黒
アクションガール × ロマンスボーイ
END
フィクションであるはずの恋愛映画がノンフィクションのアクションラブコメデイーになりましたね。でも映画に情熱を燃やす2人の若者の素敵な瞬間でした。
映画の趣味が合わないっていうのはよくありますよね。
でもそういった事の、意見の擦り合わせが大切だと思うんですよ。
最後はハッピーエンドですごくよかったです!
彼の恋愛映画と彼女のアクション映画がぶつかりなかなか撮影が進みません。監督もイライラするでしょう。しかし、最終的にはハッピーエンドで良かった。