重心を見失うな(脚本)
〇スーパーの店内
客「買い物に来るだけなのにオシャレしちゃってぇ」
客「バレちゃいました?」
客「イケメンさんに会うかもしれないものねぇ」
白浪「軽蔑とは、女の男に対する永遠の批評である。と言われても、人に軽蔑されたことなんてないですよね。軽蔑したことがあるだけで」
客「? ウフフ」
客「? アハハ」
白浪「──!」
白浪「お野菜高いので買わない方がいいですよ それでは」
客「親切ねえ」
〇スーパーマーケット
あなた(チンゲンサイの高騰甚だし。されど八宝菜に不可欠ゆえ、泣く泣くの購入なり)
白浪「Hey you」
あなた「What!?」
〇店の休憩室
白浪「盗ったものを出しなさい」
あなた「全品を購入すればすなわちこれ誤認逮捕なり まさに裁判すべし」
白浪「ニュートンがリンゴの落下で重力に気付いたということは、それまでのあらゆるものは見逃されてきたんです。さあ出してみなさい」
あなた(腹立たしき限りなり── ん? なにかしらこの固いもの)
白浪「爆弾魔──!!」
あなた「だだ、断じて否」
白浪「流石に言い逃れできないのでは」
あなた「・・・」
白浪「なんてね。万引きGメンが捕まえる相手のこと見てないと思いますか?」
あなた「なんぞ爆弾紛れ込まんや?」
白浪「テロの類ですね」
あなた「て、テロ!?」
白浪「失礼ですがご職業は? 迎えに来れる人はいますか? 動機は?」
あなた「動揺を誘い万引き犯に仕立て上げるなど笑止千万! 引っかけること能わず!」
白浪「チッ ちなみに爆弾は私の仕業じゃありませんよ」
あなた「さすれば我がチンゲンサイいずこへ」
白浪「あなたの重心、重力の源はチンゲンサイですか。大切にしてください、必ず取り戻します」
あなた「否。我が重心いまは冤罪を晴らすことなり」
白浪「店内、不穏ですね」
〇スーパーの店内
客「キャアアア」
敵「チンゲンサイを買うブルジョワジーは許さない!」
〇店の休憩室
あなた「不審者おるなり」
白浪「ちょっと、行ってきます」
カサ・・・
あなた「?」
キャアアア「キャアアア!!」
白浪「犯人がここにも!?」
白浪「なァんだGか」
あなた(彼、早業にてG確保す 目にも止まらぬ万引きの如し)
白浪「安心してくださいな。この部屋にいる限り、あなたの安全は私が守ります」
あなた「あに爆弾ありてこの部屋安全たらんや・・・」
キャアアア「二匹目!? こんな奴らと同じ部屋にいられるかッ!! 俺は売り場に戻るぜ!!」
〇スーパーの店内
敵「な、何が言いたい」
白浪「ですから、コロンブスの卵も割れているように、冴えたやり方に思えてもその実最初から破綻しているんです。諦めなさい」
客「その前の三本の矢の話は結局どういうことなのかしらねぇ」
敵「う〜ん」
あなた(来てみれば緊張を欠く現場かな)
敵「お、お前!! チンゲンサイを買っていた奴! いま緊張感がないと思ったな、人質交換だ!」
白浪「いいでしょう」
あなた「ええええ・・・」
あなた(我もまた一般客なれば、なんぞ人質交換を許可する・・・)
白浪「交換条件です、時限爆弾の解除方法を教えなさい」
敵「後出しじゃないか 大体、そんなこと俺に何の得もない!! 高価な野菜を買えるブルジョワジーに罰を!!」
あなた「教えずんば汝、我と共に木っ端微塵──」
白浪「持ってきちゃった〜!!」
敵「なん・・・なんで?」
あなた「・・・ごめん」
白浪「ごめんで済んだら警察はいらないという言葉がありますが、既に警察は呼んだので謝って済む問題としましょう」
敵「呼んだのか!? 約束が違う!」
白浪「あっ てへへ」
あなた「てへへで済めば万引きGメン要らず」
白浪「さあもう解除法を教えるか木っ端かです。二兎追うものは一兎をも得ずという言葉、一兎追って一兎も得られなかった人に残酷ですね」
敵「解除法を教えて木っ端にもなりそうな引用はやめろ!」
敵「これを見ろ、この店から万引きしたくだものナイフだ! 警察が来ても人質がいる限り無敵なんだぞ」
白浪「私がいる店で、万引き・・・だと・・・?(膝から崩れ落ちる)」
敵(想像の百倍ショック受けてる・・・)
敵「わかったらこの爆弾をどこかに持ち去れ」
白浪「あ、あああ・・・」
敵「動かなくなっちゃった!!」
あなた「今にも爆発す! み、みんな、彼を応援してPOWER与えるべし!!」
「いつもの変な話はどうしたの」
あなた「自分の重心を思い出すべし!!」
白浪「重心──」
白浪「私は──万引きGメン! 東に病気の万引きあれば行って看病してやり! 西に疲れた万引きあれば行ってその罪の束を負い!」
白浪「もういいや以下略。 私は万引き型テロを防ぐため、店の客に扮し日々潜伏してきたんだ──ッ!!」
〇地球
あなた(我Gを警戒するが故にGメンの俊敏なる動き捉えたり)
あなた(その間僅か0.18秒。 地球≪ガイア≫の自転速度に如かず)
あなた(彼、ナイフを奪い爆弾をかっ飛ばすにとどまらず我と犯人を抱き寄せ──)
〇スーパーの店内
白浪「間一髪── かつて万引きに手を染めて得た早業、やっと人のために活かせましたかね」
〇スーパーマーケット
ピーポーピーポー
白浪「あなたをこんな目に遭わせたくはなかった」
あなた「真偽甚だ疑わし」
白浪「それでは、さよなら」
あなた「君いればこそ我このスーパーを使うこと辞するなり」
白浪「いえ、私はこのお店を去ります 素性を知られたら、もうGメンではいられないでしょう?」
あなた「!!」
白浪「世間を欺くには、世間と同じ顔色をなさらなくては。世間とちがう色を出して成功を万引きしてみましたが、Gメンは警備員ですから」
あなた「目立たざること万引きGメンの宿命なれば、我止めること能わず・・・」
〇スーパーの店内
後日
あなた(スーパーに来れば、意識の外にてかのGメンを探す我を見つけたり)
あなた(野菜棚、生鮮食品、飲料 彼いればこそ活気あふれて見える)
〇コンビニのレジ
店員「132円が1点、324円が1点──」
あなた(今にして思えば事件も日常の華なり ん? 妙によき声の店員・・・)
白浪「以上8点で、2386円になります」
あなた「いや店員さんになってる!!!!」
白浪「来ちゃった💕」
イニシャルGをふんだんに取り込んでとても楽しいお話でした。彼はGメンの職務を全うし、それでもこのスーパーに愛着を感じてしまっているところが好感もてました。
熱量溢れる愉快なテンションで最後まで突っ走る物語、圧倒されっぱなしです。様々なGが関わるG話を楽しませてもらいました。黒いアンチクショウは苦手ですがw
こんなイケメンが万引きGメンだと目立ってしょうがない気もします。笑
最近野菜が高いなぁとたしかに読んでてうなずきました。
主人公のキャラが濃くておもしろかったです!