雨宿り(脚本)
〇教室の教壇
ザァザァ────
酷い雨だな・・・
放課後、図書室で本を読んでいて帰ろうとしていたら突然の雨が降ってきた。
教室に折りたたみ傘を置いていた様な気がして戻って来たが、どうやら俺の勘違いだったようだ
まあそのうち止むだろ。
宮澤カナ「あ」
あ
なんでコイツがいるんだよ
教室に入って来たのは昔から知っている宮澤カナだった。
家が隣近所で年も近く、小さい頃はよく遊んでいた。
いわゆる幼馴染という奴だ。
宮澤カナ「・・・・・・」
・・・・・・
ただ大きくなるにつれて一緒に遊ぶ事は少なくなり、今ではあまり話す事も無くなってしまった
気まずい・・・
俺はこの空気に耐えられなくなり、雨の降る窓の外へと視線を移した
ザァザァ────
宮澤カナ「それまだ持ってたんだね」
え!?
俺は素っ頓狂な声を上げる。
なんのことだ?
宮澤カナ「鞄についてる「それ」」
あ、ああ・・・コレか
俺の鞄についている古ぼけたキーホルダー。これは昔、カナにもらったものだった。
人からもらった物だからな、捨てられないだろう。
宮澤カナ「ふーん、ホントにそれだけ?」
・・・・・・
俺はカナから視線を逸らす。
実はそれだけではない。これはカナに「ずっと友達の証」としてもらったものだった。
だからなんとなくそれを捨ててしまえば、カナとの繋がりをすべて捨ててしまう様で俺には出来なかった。
本当の事を言ったらなんか気持ち悪いし、言えるわけないよなぁ・・・
ザァザァ────
宮澤カナ「ねぇ」
ん?
窓の方から視線を移すと、カナは自分の鞄の中を漁って何かを探していた
そして探していた何かを見つけると口元を綻ばせる。
宮澤カナ「ほら」
宮澤カナ「私もまだ持ってるよ?」
え、ああ・・・
宮澤カナ「なに、その反応と顔──ウケる」
いや、驚くだろ。だいぶ昔のモノだろ?
宮澤カナ「それを言ったらこっちだって驚いたわよ。まだ大事に持ってたんだって」
ザァザァ────
宮澤カナ「──ねぇ、なんで私たち話さなくなったんだろうね」
なんでってそれは・・・・・・大人になったから?
宮澤カナ「何それ、私たちまだ子供じゃん」
宮澤カナ「でもまあ学校に入ってからはなんか男の子は男の子、女の子は女の子で遊ぶ様になっちゃったからかなー」
そうだな。昔は気にしなかったけどなんかこう・・・女の子と遊んだりするのが恥ずかしいというかなんというか
宮澤カナ「うえー、そうなの。意識し過ぎでしょう。モテなさそう」
う、うるさいなぁ・・・どうせ俺はモテないよ
宮澤カナ「まあでもそれはアンタらしいけどね」
ザァザァ──
宮澤カナ「久しぶりに話したけど、なんだか昔と変わらないね」
そうだな。なんかカナはだいぶ変わったなって思ってたけど、そうでもないみたいだな
宮澤カナ「そう?全然変わってないけどね」
宮澤カナ「てゆーか、変わったのはそっちでしょ?なんか私の事避けてたでしょー」
いや、避けてたわけじゃないよ。ただなんか俺みたいな奴がカナの幼馴染じゃ迷惑かなと思って・・・
宮澤カナ「はぁ?何それ?」
・・・カナは気づいてないかもしれないけど、オマエ結構男子に人気あるんだぞ。
宮澤カナ「ええ、私が!?」
宮澤カナ「んーでも、そんな理由で私と距離取るなんて変。絶対変!」
いや、変じゃないだろ。俺みたいな陰の者が側にいたら──
宮澤カナ「あのさぁ、それってアンタが勝手にそう思ってるだけだよね?」
宮澤カナ「アンタの事友達だって思ってる私の気持ちはどこにあるわけ?」
ザァザァ
確かにそうだな。俺は友達なのにカナから逃げてたのかも知れない。
男だ女だ、陰だ陽だ、合うだ合わないだ、カテゴライズして枠にハマっていたのは自分の方だったのかもしれない
小さい時はそんなものはなかったのに、俺はいつからそんなつまらない枠にハマってしまったんだろうか
俺とカナは昔からの友達だもんな
宮澤カナ「そうよ。友達なんだから」
────
〇教室の教壇
宮澤カナ「雨、止んだみたいだねー」
そうだな──じゃあ一緒に帰るか
宮澤カナ「うん!」
宮澤カナ「あ、そうだ」
うん、どうした?
宮澤カナ「私もあのキーホルダー、鞄の外につけようかなーって」
カナがそうしたいならそうすればいいとは思うけど・・・
宮澤カナ「恥ずかしい?」
──知らん
宮澤カナ「あれあれ、やっぱり恥ずかしいんだー。意識しちゃうー?」
くだらない冗談言ってると置いてくぞー
宮澤カナ「あ、ちょっと待ってよー」
雨 宿 り
fin
思春期男女の心情を優しく描いた、とっても魅力的な作品ですね。親しみや照れなどがごちゃ混ぜで未整理な様は、まさに青春ですね!
2人とも思春期を迎え、以前のように屈託なく接することが難しくなったのは、ある意味成長している証拠なのかもしれませんね。色々な事を意識してしまうのもこの年ごろならではで、その繊細さが羨ましい大人です。
雨が二人のためにチャンスをくれたんでせすね、きれいなストーリーですね。思春期になると急に気恥しくなってしまって本音が出せなくなってしまう、、でも昔のようにまた戻れてよかったです。