夢から始まる冒険譚

行季流伽

プロローグ(脚本)

夢から始まる冒険譚

行季流伽

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〇殺風景な部屋
結叶「・・・れが・・・・・・!」
結叶「俺が・・・・・・るから・・・・・・!」

〇大教室
  キーン、コーン、カーン、コーン。
  聞き慣れたチャイムの音で、はっと目が覚める。
教授「はい、じゃあ今日はここまで」
  その言葉を合図に、教室の空気がふっと緩んだ。
友人「いや~、疲れたぁ~~」
友人2「あんた、がっつり寝てたねぇ」
「あれ・・・、夢・・・?」
友人2「なんだよ、どうした?」
友人2「まだ夢の中か?」
「あ、あはは・・・」
  笑ってごまかしたけど、気持ちがついていっていない。
  ただの夢だ。そう思おうとしても、跳ねる心臓が現実をあたえてくる。
  あの光景は、一体・・・。
友人「ねぇ、それよりさぁ」
友人「あんた、行かなくていいの?」
「え・・・?」
友人「ほら、呼ばれてるんでしょ」
友人「『エクリプス』に」
  彼女たちは笑っている。
  口元だけで。
  私をみる目に、さっきまでの光はなかった。
友人2「ほら、早く」
友人2「いってらっしゃい」
友人2「精々、いい生け贄になることね」
  彼女たちは、偽者だ。
  そう気づいたときにはもう遅くて。
  私の視界は歪み、潰れ。
  そして、意識を失った。

〇殺風景な部屋
  再び目が覚めると、そこは見覚えのない場所だった。
「ここ、は・・・?」
  不安に駆られて、辺りを見回す。
  すると、
  私以外にも、人がいた。
「え、誰・・・?」
  ぽそりと呟いた声は、思っていたより大きかった。
  部屋にどんどん反響して、そのせいか、眠っていたその人は目を覚ました。
結叶「ここは・・・」
  起き上がった彼と目が合う。
結叶「あんた・・・」
  じっ、と彼の両目が私を捕らえる。
結叶「・・・!」
結叶「あなたは・・・!」
  何かに気づいた彼は
  私を、抱き締めた。
結叶「ご無礼をお許しください、姫」
結叶「こんなに立派になられたあなたとお会いできて」
結叶「私はとても・・・嬉しく、思います」
  彼の声が、少しだけ涙混じりのもののように聞こえたので、無下に突き放すことができなかった。
結叶「・・・すみません姫、取り乱してしまいました」
「いえ、そんな・・・」
「ところで、」
「姫って、どなたですか?」
「たぶん、人違いをされていらっしゃるのだと思うのですが」
結叶「いいえ!」
結叶「間違いなく、あなたは私の支える姫です!」
結叶「私があなたを間違えることなど、万に1つもございません!」
「そ、そんなことを言われても・・・」
結叶「そういえば!」
結叶「転送装置を通った人間は、記憶が書き変わってしまう」
結叶「そう聞いたことがあります」
結叶「あなた様はあの事件の時、お逃げになる際に」
結叶「どうしても転送装置を使わなければならず」
結叶「無理矢理、転送装置を潜られた、と聞きました・・・」
結叶「そのときの、後遺症なのかもしれません・・・」
  ・・・彼の言葉が本当かどうか、判断する術がない。
  でも、少しだけ彼のことは、信用してもいい気がした。
「・・・あの」
  そう、声をかけたとき。
結叶「危ない!!」
  飛んできた複雑な紋様から私を庇うように、彼は上へと覆い被さった。
結叶「怪我はありませんか、姫」
「あ、ありません・・・」
結叶「そうですか・・・良かった」
  そう言うと、彼は紋様が飛んできた方向に視線を向ける。
  私もそちらに視線を向けると、
  もう1人、男が立っていた。
エクリプス団員「避けやがったな・・・!」
エクリプス団員「十数年振りに戻ってきた生け贄だ、返せよ!!」
結叶「誰が貴様なんぞに渡すか!!」
  光と闇がぶつかり合う。
エクリプス団員「ぐっ・・・」
  どうやら、私を助けてくれた人の方が、優勢だ。
エクリプス団員「あああああああああ!!!」
  男の闇が一瞬で強くなる。
結叶「負け、ねぇ・・・!!!」
  一際強い光が、男を弾き飛ばした。
結叶「俺が・・・」
結叶「俺が、君を守るから・・・!」
結叶「2度と離さない・・・!」
  再び、彼の腕に私は抱き締められる。
  スッと息を吸ったときに感じた彼の香りは
  なんだか懐かしい香りだと感じて、自然と緊張が緩んだ。
結叶「・・・失礼しました、姫」
「こ、こちらこそ・・・」
結叶「少し、取り乱してしまいました」
結叶「申し訳ございません」
「いえ、本当にいいんです」
「助けてくれて、ありがとうございます」
  そう告げると、彼は嬉しそうに微笑んだ。
  しかし、それも束の間。
結叶「姫、こうしてはいられません」
結叶「早く、安全な郊外にまで逃げましょう」
「まって!」
「私、何もわかってないし」
「そもそも、姫ですらないと思うんですけ・・・」
  ふに、と何かが唇に触れる。
  彼の人差し指で、しーっ、と口を押さえられてるのだ。
結叶「いずれ、お話しします」
結叶「今は俺を・・・、私を信じて、一緒に逃げてください」
  真剣な眼差しにコクンとうなずいて、私は彼と走り出した。

〇ビルの地下通路
「そういえば・・・」
結叶「どうしました、姫」
「あなたの、名前を聞いていない・・・」
  走りながら、気になっていたことを聞いてみた。
結叶「私の、名前ですか・・・」
結叶「結叶、です」
結叶「あなたが、名付けてくださったんですよ」
  彼のその表情をみて、確かに大切な何かを私は忘れているような気がして。
  胸をぎゅっと締め付けられる思いだった。
結叶「続きの思い出話は、ここを出てからにいたしましょう」
  彼は表情を戻して、走り続ける。
「あの、もう1つだけいいですか」
結叶「なんでしょう?」
「言葉遣い、無理しなくていいですよ」
「俺って言ってるときのほうが、あぁ本心なんだなって思えて」
「信じられるような気がしました」
結叶「・・・姫の前では、紳士的にと教わりましたので」
結叶「善処、いたします」
  先ほどまでのかっこいい姿はどこへやら。
  私は、クスクスと笑いながら、結叶の後に着いていった。

コメント

  • 記憶にはなくても、会ったことがある…って感じる人っていますよね。
    彼女の場合は本当に会っていたようですが。
    彼の正体は何者なのか、すごく気になります。

  • 没入感があって面白かったです。自分が本当に「私」になったり、バトルシーンでは結叶さんを操作したりして、プレイしているような感じがありました。(操作って失礼かと思いますが、すみません)
    結叶さんは強そうで頼もしいのに、姫の前だと取り乱しがちですね。愛着の持てるキャラクターでいいな〜と思いました。

  • 不思議な感覚に陥りました、夢と現実の境界線って意外とぼやけてるものかもしれませんね、彼の存在はどこにあるのだろうと気になりました。

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