紘都くんはケダモノ、しかもモフモフ

高山殘照

月が綺麗な夜に(脚本)

紘都くんはケダモノ、しかもモフモフ

高山殘照

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〇住宅地の坂道
座古井「だからさ、 バッテリー貸してくんねーかな」
美冬「イヤよ なんで見ず知らずのアンタに」
座古井「俺のスマホ あと2%で死ぬんだよ」
座古井「聖也くんに連絡しなきゃ いけねーのによ」
美冬「知らない!」
座古井「いいから、貸せよ!」
美冬「このっ・・・・・・!」
紘都「待て」
紘都「止めとけよ 今どきカツアゲなんて」
座古井「カツアゲじゃねーよ 緊急事態なんだって!」
紘都「とにかく このまま見過ごせねーな」
座古井「お? やるってのか」
紘都「ああ、やるさ 今日は満月だし、な」
座古井「あ?」
紘都「知ってるか 満月の夜に変身する モノの話を」
紘都「丸い月を見ると 狼に変わる 男の話を」
座古井「お、おまえまさか」
紘都「まあ実際は 満月じゃなくても 変身できるんだけどな」
紘都「こんなふうに!」
美冬「か」
座古井「か」
「か わ い い」
ヒロト「さあ! どこからでもかかってこい!」
座古井「いやいやいや ポメラニアン殴るって シンプルにダメでしょ」
ヒロト「ただのポメじゃない ウェアポメラニアン (ポメラニアン男)だ!」
座古井「だとしても うわー、気が引けるー」
ヒロト「ならば こちらから行くぞ!」
座古井「ぐあーっ!」
美冬「あ、逃げた」
ヒロト「無理もない このポメキックは無敵だ」
ヒロト「熊以外なら!」
美冬(熊には負けるんだ)
紘都「怪我はない?」
美冬「怪我はないというか 怪我させなくてよかったというか」
紘都「ん?」

〇公園の入り口
紘都「実戦空手の有段者?」
美冬「いや、よかったです 文字通り 手が出そうになってたんで」
美冬「試合や練習だと 顔を殴っちゃダメなんですけど」
美冬「でも正当防衛ならいいかなって 魔が差しかけてました」
美冬「止めてくれなかったら どうなってたか あなたは、恩人です!」
紘都(あぶねーお嬢さんだ)
美冬「私は立花 美冬 (たちばな・みふゆ)って言います」
紘都「俺は石月 紘都 (いしづき・ひろと)だ」
紘都「最近、越してきたばっかりでね スマホ片手に コンビニ探してたんだけど」
美冬「いや、全然方向違いますよ むしろ遠ざかってるっていうか」
紘都「だよなー 地図アプリ、分かりにくくって」
美冬「方角、固定したらどうでしょう やってみましょうか?」
座古井「見つけた! 聖也くん、あいつだ!」

〇広い公園
聖也「おい、聞きたいことがある」
紘都「なんだ?」
聖也「こいつが言うには おまえ、めちゃめちゃ強いポメに 変身できるって話だが」
聖也「本当か?」
聖也「本当に本当なのか?」
紘都「ああ、その通りだ」
聖也「信じられないな」
聖也「俺たちはこれから 病院なり警察なり 行こうと思ってたんだが」
座古井「クスリなんてやってねーってば!」
紘都「安心しろ そんなところ行かなくていい」
紘都「見せてやる」
ヒロト「これが、俺の力だ!」
聖也「き、奇怪至極! しかし・・・・・・」
聖也「プリティーなポメとはいえ ダチを蹴られちゃあ 黙ってられねえ」
ヒロト「あ、そう来るんだ ケンカ、するの?」
聖也「ケンカじゃねー 組手、だ」
ヒロト「好戦的だな この街って・・・・・・」
座古井「聖也くんは 昔から拳法習ってんだぞ!」
座古井「この辺じゃ ドニー・イェンの生まれ変わり って言われてるんだからなあ!」
「ドニー・イェンは死んでねえ!」
聖也「ふん、気が合うな」
ヒロト「あー、それでどうする 組手、やるの?」
聖也「当然だ、いくぞ!」

〇広い公園
聖也「なんて重い蹴りだ!」
ヒロト「鍛えてるからな」
ヒロト「もちろん」
ヒロト「素早いぞ、犬だからな」
聖也「むむむ まさに疾風迅雷! ただのポメではないな!」
美冬「確かに、なんて身のこなし!」
座古井「だけど、なあ」
美冬「ええ」

〇水玉2
美冬「完全に 飼い主とじゃれてる犬!」
美冬「いやいや、本人たちは いたって真剣なのよね」
美冬「ああ、笑ってる 楽しいのね 遊んでもらって、楽しいのね!」
聖也(落ち着け チャンスは必ず来る)
聖也「むぅん!」
ヒロト「おっと」
聖也「スキあり!」
座古井「聖也くんが ポメをがっちり捕まえた!」
ヒロト「し、しまった」
座古井「そしてそのまま」
座古井「モフモフな胸に 顔を埋めたー!」
聖也「すぅーーーーーーっ」
座古井「『犬吸い』を決めたぁー!!」
美冬「『犬吸い』 聞いたことがあるわ」
美冬「犬のモフモフに 顔を深く埋めて 存分に香りを楽しむ」
美冬「愛犬家にとって 至高の嗜好であり 同時に祈りの場でもあると」
美冬「感染症には注意しましょうね」
ヒロト「移すもんなんて なんもねーからな!」
ヒロト「というか、 いい加減、離せ! 男だぞ、俺は!」
聖也「オスだろうとメスだろうと 犬は尊きもの! これぞ博愛精神!」
ヒロト「違うと思う!!」
座古井「そういえば聖也くん 無類の犬好きだったな」
美冬「幸せそうだね」
ヒロト「誰か、止めろー!」

〇公園のベンチ
紘都「・・・・・・ひどい目に遭った」
美冬「悪い人たちじゃなかったね」
紘都「アレ見てそう思えるなら あんた、大物だよ」
美冬「はい、これ」
美冬「あげる お礼もまだだったし」
紘都「ん、ありがとう」
紘都「はぁ」
美冬「あれ、それ嫌い?」
紘都「いやいや、そうじゃなくて 俺、 この街でやってけるかなって」
美冬「大丈夫よ 私たちがついてるって」
美冬「さっきみんなで 連絡先交換したし」
紘都「だから心配なんだよ」
美冬「どういう意味よ」
美冬「あ、スマホ鳴ってる」
紘都「俺もだ」
美冬「聖也くんからだ」
  『是非、週に一度
  全員で組手を行いませんか?
  恐々謹言』
美冬「だって」
紘都「絶対やらねー」
美冬「えー きっと、楽しいよ」
美冬「そして 空手と拳法とポメを組み合わせた まったく新しい格闘術の夜明けが」
紘都「来なくていい」
美冬「やろうよー」
紘都「興味ねーって じゃあな、気をつけて帰れよ」
美冬「待ってよ こんな時間に 女の子1人で帰らせる気?」
紘都「男と2人っきりのほうが マズいんじゃないのか?」
美冬「じゃあポメになって! 夜のお散歩に見えるでしょ」
紘都「しょーがねーな」
美冬「あー、やっぱかわいい モフモフだー」
ヒロト「ほら、さっさと帰るぞ」
美冬「ねえ 1つだけお願い、いい?」
ヒロト「なんだ」
美冬「また、会ってくれる?」
ヒロト「もちろん」
美冬「じゃあ、そのとき 人間の姿のまま 耳だけポメになってくれる?」
ヒロト「さあ帰ろう、すぐ帰ろう!!」
美冬「あ、待ってよー!」
  1回だけ、1回だけでいいから
  ポメ耳ー!

コメント

  • ポメラニアンが幅を利かせていると聴いて…

    やはり流石の防御力よ……

  • そのキュン、確かにいただきました。

  • イケポメ、流行ってんの? まだかー。(CM風)
    モフモフ最強に考えがいたらなかったあ。変身シーンで、声が漏れました。

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