キミトココロの物語~バーチャルiTuberの日常~

泡沫彷徨

第18話 【光の中へ】(脚本)

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泡沫彷徨

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〇VR施設のロビー
MC「優勝チームの皆さんです! どうぞー!」
  MCの紹介で、優勝したバーチャル
  iTuberのチームメンバーたちが
  配信画面上に現れ、挨拶をしている。
希美都ココロ「・・・・・・」
  ココロはその様子を、
  無言で見つめている。
紺野正樹(僕たちは、優勝を逃した)

〇黒
  壮絶なココロと蒔苗の一騎打ちの後。
  生き残った正樹とことり、それと
  蒔苗チームの二人は、いったん別れ、
  それぞれ通常のゲームへと戻っていった。
  一騎打ちの勢いのまま、あの場で二チームとも投降しても良かったのだけれど・・・
  相打ちという結果になった以上、両方の
  チームが投降という形は、大会として興醒めの展開になりかねないと判断を下した。
  戦線に復帰した正樹とことりは
  健闘したものの・・・
  ろくに装備を回収できていなかった
  こともあり、やがてあっさりと倒され、
  全滅してしまった。

〇VR施設のロビー
紺野正樹(優勝を逃したことで、ココロちゃんは、 大きなチャンスを失ったと思ってる)
紺野正樹(だけど)
紺野正樹「・・・ココロちゃん。 見せたいものがあるんだ」
  そう言ってココロに近づくと、
  彼女は顔を上げて正樹を見た。
紺野正樹「試合中に、僕が何て言ったか、覚えてる?」
希美都ココロ「え?」
紺野正樹「この大会で勝つことが、 ココロちゃんのすべてじゃない」
  正樹は宙にウィンドウを開いた。
希美都ココロ「これ・・・」
  ココロが驚きの声を上げる。
  正樹は静かに頷いた。
希美都ココロ「チャンネル登録者が・・・増えてく」
  ――487,121。
  ウィンドウに表示されたのは、凄まじい
  勢いで、リアルタイムにどんどん増加
  していくココロのチャンネル登録者数。
希美都ココロ「どうして? 私、早い段階で敗退 しちゃったのに、どうして、こんな・・・」
紺野正樹「たくさんの人が、心を打たれたからだよ。ココロちゃんと蒔苗ちゃんの、真剣勝負に」
  彼女たちの一騎打ちの様子は、
  「歴史に残るガチバトル」などとして、
  SNS上で拡散され、大会中、
  瞬く間に話題となった。
  ――489,983。
  ――493,377。
  ――497,642。
  表示を更新するたび、
  チャンネル登録者数が、
  みるみるうちに増えていく。
  その光景を、
  ココロは呆然と見つめている。
小鳥遊ことり「視聴者にとっては 唐突な展開だったかもしれないが・・・」
小鳥遊ことり「それはそれで、二人の関係について、 色々な憶測を呼んでいるようだな」
  横にいたことりが補足する。
  憶測が独り歩きして、
  さらにココロたちの認知度が
  上がるという効果をもたらしている。
  ――499,832。
  ――499,999。
  ――500,000。
  表示が切り替わった、そのときだった。
***「監査対象=〈ココロ〉」
  ココロの頭上にウィンドウが開かれ、
  テキストが表示されるとともに、
  機械音声が聞こえてくる。
***「観測者数の増加が一定のレベルに 到達しました」
***「ラベル:グリーン」
***「よって権限の拡張を適用します」

〇VR施設のロビー
  直後、ココロの背後に、
  光の筋がいくつも浮かび上がった。
  それらは縦に連なり、束となって、
  まるで柱のようにそびえ立つ。
小鳥遊ことり「これ・・・何だ? 何が起こってる!?」
  突如として現れた光を見つめて、
  ことりが困惑した声を上げる。
  出現した光の柱は、波打つように脈動し、
  何かを待っている。
希美都ココロ「あ・・・」
  振り向いたココロは、信じられない
  というように光の束を見つめる。
希美都ココロ「辿り、着いたんだ」
紺野正樹「じゃあ、これが・・・?」
紺野正樹(ココロちゃんの、夢が叶う場所)

〇可愛い部屋
希美都ココロ「バーチャル世界のシステムに、 干渉できるチャンスが与えられるんだ」
希美都ココロ「私は、アイリスを再生してもらえるよう、 管理者に頼むつもり」
希美都ココロ「それが、どうしても叶えたい、 私の願いなんだ」

〇メイド喫茶
蒔苗「アイリスが再生するということは、 蒔苗とココロという人格が消えて、 アイリスに統合されることに他なりません」
蒔苗「先輩は蒔苗に言いました。 消えるのは自分だけで大丈夫だって」
蒔苗「先輩一人分の情報があれば、 後は補完できるだろうって」
蒔苗「どうして・・・ 自分だけが消えるから大丈夫なんて、 何でそんなこと言えるんですかっ!」

〇VR施設のロビー
紺野正樹「ココロちゃん・・・」
  声をかけると、彼女はピクリと
  肩を震わせた。迷いは、ないのだろうか。
  本当に彼女は、行ってしまうのか。
  彼女にとって、この時この瞬間は、
  ずっと願ってきたことのはず。
  いつか辿り着いたときに
  自分がどうするか、
  誰よりも悩み、考えてきただろう。
  だから本来、誰にも、
  彼女の意思を邪魔する権利なんて、
  無いのかもしれない。
紺野正樹(けれど、僕は・・・)
希美都ココロ「正樹くん」
  正樹のほうを振り返った彼女は、
  すぐに目を伏せる。
希美都ココロ「私・・・行くね」
  それが、彼女の答えだった。
  この土壇場で示した、彼女の意思。
希美都ココロ「今まで・・・本当に、ありがとう。 色々、手伝ってくれて」
希美都ココロ「一緒にいて、励ましてくれて。 すごく・・・本当に、すごく、楽しかった」
希美都ココロ「正樹くんは、たぶん・・・ 知ってるんだよね? 私が・・・きっと消えちゃうってこと」
紺野正樹「・・・・・・」
  正樹は頷いた。
希美都ココロ「ごめんね。黙ってて。 卑怯、だったかもしれないよね」
希美都ココロ「最初は、こんなつもりじゃなかった。 ただちょっと、正樹くんとお話がして みたかった。一緒に活動してみたかった」
希美都ココロ「だから正樹くんが募集してきてくれて、 嬉しかった」
希美都ココロ「最初から、採用するなら 正樹くんしかいないって思ってた」
希美都ココロ「正樹くんは・・・とてもとても特別で、 大切な人だから」
  どういう意味だろう。
  正樹には、彼女の言葉が理解できない。
  動揺する正樹に、ココロは続ける。
希美都ココロ「でも、正樹くんと・・・ 君と過ごす時間は、思った以上に特別で、 すっごく輝いていて・・・」
希美都ココロ「だから私・・・少しだけ、怖くなった」
希美都ココロ「このまま正樹くんと一緒に、 この世界で・・・ それでもいいんじゃないかって思った」

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