エピソード1(脚本)
〇通学路
木田健志「あれ、上村って栗田と同じ帰り道だっけ?」
木田健志「寮生だろ、上村は」
栗田しのぶ「今日は千尋のバースデー祝いなの!」
上村千尋「駅前の茶店の新しいスイーツ、大人気なんだって!」
木田健志「食い意地張ってるもんな、おまえら」
上村千尋「あんだって?」
栗田しのぶ「ちょっと千尋。 いるわよ、あいつ」
舞坂飛浪人!
いまは限りなくストーカーに近い、あたしの幼馴染
気がつけばいつも、行く先々に現れる
木田健志「おい舞坂!」
木田健志「上村のことなら諦めろ! 俺と付き合ってるんだからな」
上村千尋「付き合ってないわよ!」
木田健志「こ、これは舞坂を諦めさせるための設定だよ、設定・・ホントにしてもいいけど」
舞坂飛浪人「木田、おまえには関係ない」
木田健志「なんだと!」
飛浪人は吹っ飛んだ
上村千尋「ちょっと! やり過ぎよ」
木田健志「ほとんど触ってないのに・・吹っ飛んだ?」
舞坂飛浪人「気は済んだか?」
飛浪人が言った直後、ビルの看板が落ちた!
木田健志「危ねえ!」
栗田しのぶ「立ち止まらずに、そのまま進んでたら潰れてたよ、あたしたち」
木田健志「さすが悪運女王! 不死身だよな、上村は」
上村千尋「はあ?」
・・でも、あたしは確かに運が強い
〇駅のホーム
駅のホームから落ちかけても
誰かに引っ張られて助かったり
〇裏通りの階段
階段で滑っても
通りかかったひとに支えられたり
〇市街地の交差点
車道に突き飛ばされても
自転車に接触するだけで済んだり
2年前もそうだった
〇一戸建て
2年前、実家が火事になった
寮から帰る予定だったのに、間違った伝言で呼び戻された
代わりに両親には二度と逢えなかった
〇通学路
いつも不思議な偶然で
え? 待って! 偶然?
急停車した2台の車から、ふたりが現れた
刑事「おい! ちょっと警察まで来てもらおうか」
上村謙次郎「そのストーカーを早く、大切な姪から引き離してくれ!」
上村千尋「叔父さん!」
製薬会社社長の叔父だった
舞坂飛浪人「千尋・・お父さんを信じろ」
上村千尋「え?」
飛浪人は刑事と去った
上村謙次郎「千尋、今日こそ将来のことについて話そうじゃないか」
両親の死後、親族は叔父夫婦だけとなった
けれどあたしは叔父のことが好きになれず、そのまま寮生活を続けていたのだ
上村千尋「しのぶ、ごめん! スイーツはまた今度ね」
〇車内
押し切られて、叔父の車に乗った
上村謙次郎「兄貴の研究所で話そう」
上村千尋「遺産はいりません。 大学を出たら自活しますから、それまでの学費と生活費だけで十分です」
上村謙次郎「誤解してるな。欲しいのは”違う遺産”だよ」
〇車内
刑事「相手が嫌がることは犯罪だぞ」
舞坂飛浪人「運転、気をつけた方がいいですよ。 次の交差点、見通し悪いから」
刑事「真面目に聞け。いまは君の」
刑事「わっ! なんで横から・・って、左からも!」
舞坂飛浪人「じゃ、刑事さん。僕はここで」
刑事「ちょっと待て!」
わかっていた。
この車が事故に遭うと、最初から
〇繁華街の大通り
時間がない!
道路脇の自転車に飛び乗って走り出した
もちろん盗んだんじゃない。
僕の自転車だ。
”最初からそこに”置いておいたのだ
未来が見える、僕には
木田のパンチだって、最初から知っていて、吹っ飛ぶ芝居をしただけだ
いま千尋に危険が迫っている。
分岐する未来図の”どのゴールにも”彼女の死が待っている
ただひとつの選択肢を除いて
〇森の中のオフィス(看板無し)
上村謙次郎「聞いていないか、兄貴から? 2つの研究のことを」
父の研究所はその死後、叔父が管理していた
上村謙次郎「ひとつは大量のデータを圧縮・暗号化して、脳に封印記憶させる技術だ」
上村謙次郎「これがあれば、絶対に秘密を漏らさないスパイを実現できる」
上村千尋「もうひとつは?」
上村謙次郎「予知能力を覚醒させる薬とか・・ま、兄貴の妄想だろうな」
〇魔法陣のある研究室
上村謙次郎「重要なのは暗号記憶化技術だ。 しかし、研究所の資料からは何もみつからなかった」
上村謙次郎「だが気づいた。 最高の隠し場所があったことに」
上村謙次郎「千尋、おまえの頭の中だ」
上村謙次郎「暗号記憶化技術を使って、その情報を保存する・・考えてみれば単純な話だ」
上村千尋「お父さんの日記帳・・ 火事で燃えたんじゃ?」
上村謙次郎「ここに書かれていた。千尋の18歳の誕生日に、投与すべき薬のことが」
上村謙次郎「それがトリガーだ。経過時間と薬剤。 2つ揃ったとき、封印された記憶が開放される」
上村千尋「あの日、叔父さんはうちにいたの? 父さんと一緒に」
上村謙次郎「R国が高値のオファーをくれたのに、兄貴は最後まで口を割らなかった」
上村千尋「まさか、叔父さんが・・」
上村謙次郎「これを注射すれば、封印が解かれる」
舞坂飛浪人「秘密を奪ったら同じように、千尋のことも消すつもりだろ」
上村千尋「飛浪人!」
上村謙次郎「ど、どうやって? もう邪魔できないように警察に捕まえさせたのに」
舞坂飛浪人「見えるからだ、未来が」
上村謙次郎「予知能力覚醒薬は、完成してたのか?」
真実に気がついた!
〇駅のホーム
上村千尋「ホームで”叔父に”突き飛ばされたとき」
〇裏通りの階段
上村千尋「階段を落ちかけたとき、 ”叔父さん”に車道に突き飛ばされたとき、」
上村千尋「いつも助けてくれたのは、飛浪人!」
いま、封印されていた記憶が甦った!
〇魔法陣のある研究室
舞坂飛浪人「遺産を奪うつもりだったあんたは、日記の秘密に気づいて、改めて研究技術に狙いを戻した」
上村謙次郎「これ以上、邪魔させるか! 世界の諜報機関からの報酬があれば、会社を立て直せるんだ!!」
上村千尋「飛浪人!」
飛浪人が撃たれた!
刑事「上村謙次郎、傷害の現行犯で逮捕する!」
上村謙次郎「もう少しだったのに・・」
〇病室のベッド
上村千尋「最初から言ってよ 防弾チョッキ着てたなら!」
舞坂飛浪人「ごめん。 でも、言っちゃうと未来が変わって、千尋を助けられなくなる危険性があったから」
舞坂飛浪人「あの場で僕が撃たれるのが、たったひとつの選択肢だったんだ」
舞坂飛浪人「千尋を救うための」
舞坂飛浪人「悪かったよ。 でも、僕みたいなストーカーのことなんて、気にしなくても良かったのに」
上村千尋「ばか、何言ってるのよ!」
上村千尋「でも・・・ありがとうね、飛浪人」
~ おわり ~
未来視の能力を活用したら、周囲の人間に奇妙な行動だと見られてしまうでしょうね。にもかかわらず、千尋のために能力を使い続ける飛浪人ってステキですよね!
健気な彼ですよね、彼女のために一生懸命で素敵ですね、きゅんとしました。未来がわかるって嬉しいような悲しいような、、、複雑な心境ですよね。
いつも守ってくれる彼…って、なんだかキュンとしますね。
未来がわかると色々といいことがあるとは思いますが、わからないほうがいいこともたくさんある気がするんですよ。
知っていたら楽しみが減るというか。