読み切り(脚本)
〇幻想
暁月シュン「ミルクが美味しくなって新登場。 この思い──君に届け」
〇渋谷駅前
藍崎つぐみ「あーもう、顔が良い! ねえ今の、ひよりも見た!?」
星乃ひより「暁月シュンのCM? 見た見た。 ほんとつぐみは、あの俳優好きだよね」
藍崎つぐみ「だって演技上手いし? 王道イケメンって感じがするし? 好きにならない方がおかしくない?」
星乃ひより「・・・そっかなあ」
藍崎つぐみ「え、なにその微妙な顔」
星乃ひより「なんでもないよ。それより、早く行こ」
藍崎つぐみ「ふーん? ま、いっか」
星乃ひより「・・・」
〇システムキッチン
星乃ひより「暁月シュン、か」
夕飯のシチューを作りながら、昼間の事を思い出す。
私だってイケメンは好きだ。人より面食いという自覚もある。
星乃ひより(でも、あの人だけはいくらかっこよくても駄目なんだよね)
その時、インターホンが鳴る音がした。
星乃ひより「ん、誰だろ」
星乃ひより「──うわ」
モニターに映った相手に頭を抱えつつ、私は玄関へと向かった。
〇玄関内
???「やっほー、来ちゃった!」
やってきたのは、CMで見た暁月シュンと瓜二つ──いや、同一人物としか思えない男だった。
星乃ひより「来ちゃった、じゃないでしょ。仕事はどうしたの」
???「もちろん終わらせてる。それに明日はオフだし、問題ない!」
星乃ひより「え。明日って、もしかして泊まる気!?」
星乃ひより「こら! 勝手に入らないで!」
星乃ひより「・・・はぁ」
そう。これが、暁月シュンに夢中になりきれない理由。
人気俳優・暁月シュン──本名・暁 隼人は、
私の、幼馴染みなのだ。
〇システムキッチン
隼人とは実家が隣同士で、幼稚園の頃からずっと一緒に過ごしてきた。
高校を卒業後、隼人は芸能界へ、私は大学入学と同時に1人暮らしをすることになり、道が分かれたと思ったけれど。
なんだかんだで、隼人は毎週私の家に入り浸っている。
・・・芸能人が一般人の、しかも女の家に出入りしてるなんて、さすがにどうかと思うけど。
暁 隼人「おっ、クリームシチューじゃん! 俺の好きなやつ!」
星乃ひより「私の夜ご飯。隼人のはないから」
暁 隼人「そんな悲しいこと言うなよ」
暁 隼人「──ね、味見してもいい?」
星乃ひより「したいならどうぞ」
星乃ひより「って、なに? そんなに口開けて」
暁 隼人「ひよりに食べさせてほしいなーって」
星乃ひより「もう・・・」
仕方なく、シチューをスプーンですくって隼人の口元に運ぶ。
けれど隼人はそれを口にせず、私の顔をじっと見つめた。
星乃ひより「食べないの? 自分から言ったくせに」
暁 隼人「いやその。ひよりってさ、ほんとあっさりしてるよな」
暁 隼人「こういうことする時って、普通少しは照れるものだろ?」
暁 隼人「それに俺、一応俳優なんだけど」
星乃ひより「どうして今更照れなきゃいけないの。これくらい、昔から何度もやってるじゃない」
暁 隼人「・・・はあああ~」
星乃ひより「なによ、そのため息」
暁 隼人「お前の鈍さに呆れたの」
暁 隼人「あっ、俺、少し電話かけてくるわ」
星乃ひより「えっ!? ちょっと、味見は!?」
星乃ひより「もう。なんなの・・・」
〇大教室
──1週間後。
星乃ひより「あれ、隼人からメッセージ?」
『夜7時半ごろ、3チャンネル』
星乃ひより(テレビ番組? 出てるから見ろって事かな?)
星乃ひより(まあ今日は用事もないし。せっかくだから見てあげよっか)
〇ファンシーな部屋
そして、夜の7時半。
星乃ひより「さてと。隼人は何を見せたいのやら」
ドキドキしつつ、私はテレビのリモコンを押した。
〇テレビスタジオ
司会者「──ところで、シュンくん。最近出演したCM、テーマが「思いを伝える」らしいですけど」
司会者「シュンくんには、何かを伝えたい人っていたりします?」
暁月シュン「ええ、いますよ」
暁月シュン「ぶっちゃけ言うと──片想い相手ですね」
〇ファンシーな部屋
星乃ひより「ええええっ!?!?」
星乃ひより「隼人、好きな人なんていたの!?」
星乃ひより(でも年齢的にも環境的にも、恋くらいしてておかしくはないか)
星乃ひより(なんだかちょっと、寂しいけど)
〇テレビスタジオ
暁月シュン「結構長いことアピールしてるんですけど、全然伝わらないんですよね」
司会者「へえ。シュンくんで駄目なんて、その人、相当強敵ですね」
暁月シュン「そうなんですよ~。正直俳優になったのも面食いだったその子がきっかけなのに、人気になっても態度を変えてくれなくて」
暁月シュン「他にも、毎週家に行ってみたり甘えてみたり、色々やってるんですが全敗なんです」
〇ファンシーな部屋
星乃ひより「──あれ?」
星乃ひより(今の話、なんか引っかかるような)
〇テレビスタジオ
暁月シュン「まあその子、いわゆる幼馴染みってやつなので。意識してくれないのも仕方ないんですけどね」
暁月シュン「でもそろそろ前進したいんで、今回話してみたんです」
暁月シュン「多分、見てくれると思うので──」
〇ファンシーな部屋
星乃ひより「えっ!? ええっ!?」
星乃ひより(なら、もしかしなくても、隼人の好きな人って──)
そして、図ったかのようにインターホンが鳴る。
〇玄関内
星乃ひより「は、隼人!?」
星乃ひより「番組に出てるんじゃ・・・」
暁 隼人「それ、収録」
暁 隼人「・・・ちゃんと、見てくれたんだな」
〇ファンシーな部屋
暁 隼人「なら、分かっただろ?」
暁 隼人「俺は小さいときから、ひよりのことが好きだった。1人の女の子として、ずっとずっと想ってたんだ」
暁 隼人「お前のために、俳優になれるくらいかっこよくなった。それでもまだ、ひよりは俺のこと好きになってくれない?」
星乃ひより「──ッ! そんな急に言われても・・・ それに、ファンは大丈夫なの!?」
暁 隼人「大丈夫だって。ほら」
見せられたSNSの画面は、暁月シュンの片想いを応援するコメントで埋まっていた。
暁 隼人「マネージャーにも許可は貰ってる。ファンからの応援もある。俺たちを阻むものは何もない」
暁 隼人「だから、さ」
暁 隼人「俺のこと「幼馴染み」じゃなくて「男」として見て欲しい。それで俺とのこと、考えてみて」
暁 隼人「返事はすぐじゃなくていい。でも、あんまり遅くなるようだったら──」
目の前の隼人と、テレビの「暁月シュン」の声が重なる。
強引に、認めさせちゃうかもしれないけどな?
END
惚れました。
彼女の為に、俳優になってまで振り向かせようとする彼の一途さに、あっぱれと思いました!
最後の言葉が重なる所で、きゅん!となりました!
素敵な物語ありがとうございました!
隼人君イケメンすぎる...!!
夢中になってタップしておりました!
素敵なお話でした!