〇バスの中
　　聖ブリリアント女学院。
　　生粋のお嬢様学校、そこに通う私、優奈は言うまでもなくお嬢様だ。
優奈「はぁ〜、どこかにいい出会い、落ちてないかなぁ」
　　そう、お嬢さまといえども女の子。
　　恋に恋する乙女なのです。
優奈「恋といえば、 恋に落ちるには３秒あれば十分だっていうよね」
優奈「つまり、美少女の私が３秒目を合わせれば その人が運命の相手か分かるのでは？」
優奈「私って天才！」
　　ぶっちゃけ美少女は関係ないが、優奈が可愛いのは事実である。
　　目を合わせて３秒。
　　優奈はともかく、相手が優奈に恋に落ちるには、十分すぎる時間だ。
優奈「よしっ！せっかくだから試してみよう・・・」
　　バスの中に一人の男が入ってくる。
優奈（よーし、この人と目を合わせて、３秒！）
　　1、
　　2、
　　3！
モブＡ「あのっ、もしかして君、俺に気がある？」
優奈「えっ!?ち、ちがう！」
モブＡ「違うのか・・・熱烈な視線を感じたからつい勘違いしてしまった・・・」
優奈「ご、ごめんなさい！」
　　可愛すぎるというのも大変だ。
　　うっかり一人の男の人を惚れさせて、勘違いさせてしまった・・・
優奈「次はもうちょっと慎重にいこう」
優奈（うっ・・・あれはどう見てもなしよりのなしだけど、人を見た目で判断するのはよくないよね）
優奈（よーし、今度はこの人と、目を合わせて・・・）
　　1、
　　2、
　　3！
モブＢ「アメ食べる!?」
優奈「なんでそうなるの!?」
優奈「発想がこわすぎるんだけど!?」
優奈「しかもそのアメ、食べかけじゃない!?」
モブＢ「君が僕のことうっとりした目で見てたから、てっきりアメが食べたいのかと思って・・・」
優奈「違うわよ！失礼しちゃうわ！」
　　テストはまた失敗。
　　次こそは、と思っていると、三人目の男が乗車してくる。
優奈（なんていうか・・・・・・地味？）
優奈（人は見た目である程度判断した方がいいってさっきの男が教えてくれたのよね）
モブＣ「あの・・・」
優奈「えっ？私？」
モブＣ「ず、ずっと前からこのバスで見てて・・・・・・その、す、好きです」
　　1、
　　2、
　　3！
優奈（あ、なんか嫌じゃないかも。もしかしてこの人が運命の人？）
モブＣ「あの、す、好きです」
優奈「それはさっき聞きました」
モブＣ「好きなんです」
優奈「えーっと、」
優奈（なんかこっちの話聞いてなくない？）
優奈（どうしようちょっとこわいかも）
モブＣ「あの、ずっと前からかわいいなと思ってて、今日は一段とかわいくて、その、やっぱり好きだなって思って」
優奈（だ、だれか助けて・・・！）
謎の男「よっす、お待たせ〜」
優奈（え、だ、だれ!? こんな知り合いいないよ!?）
優奈（めっちゃ頭軽そうなバンドマンみたいな見た目してるんですけど!?）
謎の男「雪乃ちゃんそんなに拗ねんなよ、ちょっと待ち合わせに遅れただけじゃん」
優奈（雪乃ちゃんって誰よ!?）
モブＣ「お、おい、あんた雪乃さんの何だよ 急に割って入って来やがって」
優奈（いやだから雪乃ちゃんって誰！）
謎の男「俺は雪乃ちゃんの彼氏ですけど・・・アンタは雪乃に何の用？」
モブＣ「か、彼氏・・・・・・!?」
モブＣ「純潔無垢な雪乃さんに、か、かれ、かれし・・・」
優奈（やべぇやつじゃん、というか雪乃って誰だよマジで）
謎の男「まぁそういうことだから、雪乃ちゃんに今後一切関わらないでね」
モブＣ「そ、そんな・・・・・・僕の雪乃さんが・・・・・・」
　　変な男は、バンドマン風の男に背中を押されて、バスを降りて行った。
謎の男「で？さっきから見てたけど、雪乃ちゃんは何してんの？」
優奈「ゆ、雪乃じゃなくて優奈だし！」
謎の男「ふぅん？優奈？で、優奈は適当な男と目を合わせては期待させて、何やってるわけ？」
　　笑顔がこわい。
　　完全に怒っている人のそれだ。
優奈「運命の人に、出会えるかなって」
優奈「悪気はなかったんです」
優奈「目が合って３秒もあれば恋に落ちるって、どこかで聞いたから・・・目を合わせて３秒待てば運命の人が分かるかなって」
優奈「ごめんなさい」
謎の男「ふーん、運命の人ねぇ」
　　次からはもうちょっと慎重に行こう。
　　この人に助けてもらってなければ、あのちょっとこわい人に何をされていたか分からない。
謎の男「まぁ反省してるならいいんじゃない？」
優奈「えっ、でも・・・迷惑かけちゃったし」
謎の男「あー、それじゃあさ、俺とも３秒、目を合わせてみてよ」
「1、」
「2、」
「3！」
謎の男「どう？俺は雪乃ちゃんのこと、結構嫌いじゃないんだけど」
優奈「雪乃じゃなくて優奈だってば！」
優奈「でも、私もあなたのこと、結構嫌いじゃないかも」
優奈「もしかしたら、運命の人かもね」
謎の男「それは光栄だね」
優奈「ねぇ、あなたの名前、教えてくれる？」
謎の男「俺の名前は・・・・・・」
　　おしまい。