恋人になるまでの話(脚本)
〇シックなカフェ
閉店後のカフェの店内。
琉珈くんが新作のブレンドコーヒーを淹れ終わったようで、目の前にとても良い香りのコーヒーが置かれた。
水谷 琉珈「はい。これが僕の新作のコーヒーです。どうぞ召し上がってくださいね」
貴方「・・・ありがとう。わぁ!!凄く美味しい!!」
水谷 琉珈「僕の淹れた新作ブレンドコーヒーの味・・・気に入りましたか?」
貴方「それはもちろん!香りもいいし、コクもあって、酸味は控えめで私好み・・・」
貴方「・・・じゃなくて!えーっと、琉珈くん?」
水谷 琉珈「・・・なんですか?」
私は椅子に座った琉珈くんの膝の間に座らされており、
いわゆるバックハグのような形になりながら、コーヒーを飲まされていた。
貴方「ち・・・近くないかな!?」
貴方「しかも!!自分で飲めるのになんで琉珈くんがカップ持って飲ませてくれてるの?」
すぐ耳元でイケメンボイスが響いてくるし、背中は温かい体温に包まれてる。
抱き締められてるようで、心臓に悪い。
水谷 琉珈「・・・僕からしたら、貴方と向かい合って脚の上にのせた状態にしたいんですけどね」
水谷 琉珈「それだと正面から飲んだ時の表情も見えますし♡」
貴方「そ・・・それはもっと恥ずかしすぎるから!!む・・・無理!!」
水谷 琉珈「そうですか。それじゃあこのままで。僕も我慢しますから」
貴方「ううー」
私は真っ赤になってうつむくことしかできなかった。
水谷 琉珈「あーたまんない!なんなんだ!?すっごい可愛すぎなんだけど!!」
水谷 琉珈「このままギューってして一生離したくない!!」
貴方「えっ・・・?」
琉珈くんが何か喋ったけど、早口で聞き取れなかった。
最近そのようなことが度々あるのだ。そしてそんな時は決まってこう返されるのだ。
水谷 琉珈「何でもないですよ」
〇店の入口
ことの発端は数ヶ月前。
オシャレで落ち着いた雰囲気と、とても良いコーヒーの香りに誘われて、私はこのカフェに入店した。
彼の名前は水谷 琉珈(みずたに るか)
この素敵なカフェのオーナーさん。
私はここのカフェで資格のための勉強をよくすることになる。
迷惑かからない程度の時間で。コーヒーとロールケーキを必ず頼んで。
そして、めでたく資格試験に合格。
初めて勉強をしない状態でコーヒーを飲んでいたところ、琉珈くんに声をかけられたのだ。
〇シックなカフェ
水谷 琉珈「いつも、美味しそうにコーヒー飲んでますよね」
水谷 琉珈「良かったら、僕の入れる新作コーヒーのモニターをお願いしてもいいですか?」
貴方「モニターですか?」
貴方「私で良かったら、喜んで引き受けます!」
水谷 琉珈「ありがとうございます!とっても助かります!」
水谷 琉珈「そしたら明日から週一回お願いします」
貴方「わかりました!」
貴方「よろしくお願いします!」
〇シックなカフェ
それ以来、閉店後に何回も琉珈くんの淹れてくれた新作のコーヒーを飲んで感想を伝えていたのだけれど・・・
何度も回数を重ねていくうちに、琉珈くんとの距離が近づいて行き、
数回前から今のバックハグのような姿勢が定着してしまった。
琉珈くんいわく『一番近くで飲んだ時のリアルな反応を見たいんです』ってことらしいけれど・・・
貴方「恥ずかしいよ〜!!」
水谷 琉珈「今度は新作スイーツです」
水谷 琉珈「・・・はい。あーん」
貴方「うぅ・・・あーん」
私は恥ずかしすぎてほっぺが熱くなっていた。
水谷 琉珈「あぁー!たまんない!!めっちゃ可愛いし、愛おしいし、もう結婚したい!!」
水谷 琉珈「いや、落ち着け。まずは付き合うことからだ」
貴方「琉珈くん?」
水谷 琉珈(どうすれば、付き合えるんだ・・・ あれ、ほっぺにクリームついてる)
また早口で聞き取れなかった言葉の後に、琉珈くんは考え込む様子をしていた。
『どうしたの?』と聞こうと思った瞬間──
ペロッと琉珈くんにほっぺを舐められた。
貴方「るかくん!?!?」
水谷 琉珈「ごめんなさい。貴方の頬についているクリームを舐めてしまいました」
水谷 琉珈「・・・嫌でしたか?」
貴方「嫌じゃない・・・ただ、ドキドキしちゃうから・・・」
水谷 琉珈「・・・嫌じゃないのか!!ドキドキしてる姿がまた可愛すぎる!!!!」
水谷 琉珈「だめだ!!そんなこと言われたら歯止めが効かなくなる!!」
私がドキドキしながら、固まったままでいると──
ペロッと反対側のほっぺも舐められた。
貴方「琉珈くん!!」
貴方「こういうことは、琉珈くんが心から好きって思う人以外にはやっちゃダメだよ!!」
私が慌てて離れようとすると
後ろからギューって抱きしめられて耳元でゆっくり呟かれた。
水谷 琉珈「歯止めが効かなくて、ごめんなさい」
水谷 琉珈「これから、きちんと言わせてください」
水谷 琉珈「僕が心から好きな人は貴方なんです」
貴方「えっ?」
水谷 琉珈「最初から一目惚れでした」
水谷 琉珈「今は前以上に貴方のことが大好きなんです」
貴方「琉珈くん・・・」
水谷 琉珈「貴方の大好きな、美味しいコーヒーも、ロールケーキもこれから僕が一生作り続けます」
水谷 琉珈「だからどうか、僕と付き合ってください」
心臓の音がうるさい。緊張で身体が震える。だけど、どうしても今、琉珈くんの表情が見たかった。
ゆっくり後ろを見る
そこには、私と同じように全身茹で蛸のように真っ赤になっている琉珈くんがいた。
次の瞬間、私の身体は勝手に動いて、琉珈くんのことを正面からぎゅーっと抱きしめていた。
貴方「私も琉珈くんのこと、大好きです」
貴方「こんな私で良ければ、よろしくお願いします」
水谷 琉珈「あー!!!!もう!!!!最高に幸せだ!!」
水谷 琉珈「大好きだ!!愛してるよ!!!!」
水谷 琉珈「一生大切にするから!!!!」
fin♡
あとがきを読んで、ずっと話しかけるタイミングをうかがっていたのか、と思いながら作品を思い返すと、とてもきゅんとなりました!
素敵な物語ありがとうございました!
とても甘々な冒頭から、終盤に向かいさらに甘くなっていく激甘スイーツな物語ですね。
無性に苦みとコクが強いブラックコーヒーを頂きたくなりますね。
付き合ってないのにバカップルぶりにギャーーと胸が騒いでしまいました(褒めてます)
むしろここまでしているのに、なぜ付き合っていないのか……このまま言葉にせずダラダラと今のような時間が続くのかと思いきや、ちゃんとお互い言葉で伝えることができて良かったです!