トウモロコシの妖精と出逢って

72

読切(脚本)

トウモロコシの妖精と出逢って

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〇菜の花畑
  僕は子供の頃、トウモロコシが食べれなかった。初めてトウモロコシを見たのは幼稚園の時。家族での夕食の時だった

〇おしゃれなリビングダイニング
  じっと見ているとトウモロコシの粒達が、「わーい、わーい」と喜んでいるように見え、なんだかニコニコしてしまった

〇おしゃれなリビングダイニング
  トウモロコシ達の会話を想像し、僕もその中に加わりながら、楽しい時間を過ごしていた

〇おしゃれなリビングダイニング
  「いただきます」のかけ声が聞こえると、すぐに父さんがトウモロコシを手に取り、かじりついた

〇おしゃれなリビングダイニング
  かじられたところは、荒れ地へと変わった。残された粒達は消えた仲間に動揺し、泣しているようだった

〇おしゃれなリビングダイニング
  さっきまであんなに元気だったのに。トウモロコシと一緒に、僕も涙を流した。その日から、僕はトウモロコシが食べれなくなった

〇教室
  小学生に入ってから、給食が始まったが、僕の学校では食べ物の好き嫌いを柔軟に受け入れてくれたので、困る事は無かった

〇公園の入り口
  小学校三年生の秋の事。僕は友達と公園で遊んでいたが、夕暮れになったため、家へ帰る事にした

〇公園の入り口
  知らないお姉さんが、自転車のところで、ウロウロしながら、何か困っているようだった。そして目が合うと、すぐに呼ばれた

〇公園の入り口
女子高生「ねぇ助けて。これ私の自転車なんだけど、大きな幼虫がくっついてて。お姉ちゃん虫が怖いから。お願いだから、とって!!」

〇公園の入り口
  僕は綺麗なお姉さんにいいところを見せたいと思い、木の枝を使って、幼虫を取り除いてあげた

〇公園の入り口
  お姉さんは安心したようで、とっても喜び、お礼をすると言って近くの自動販売機へ向かった

〇公園の入り口
  しかしお姉さんは、「あっ」と大きな声を出し、しばらくその場にいた後、何か不安そうな顔をしながら戻ってきた

〇公園の入り口
女子高生「ごめんね。寒いから、ココアでも買ってあげようと思ったのに、間違えてコーンスープ押しちゃったの」

〇公園の入り口
女子高生「私が好きだから、つい、いつものクセでボタン押しちゃって。ちなみにコーンスープは好き?」

〇公園の入り口
  僕はコーンとトウモロコシが一緒のものだと、この時はまだ知らなかった。それよりも、お姉さんが好きなスープの事が気になった

〇公園の入り口
  優しそうで、綺麗なお姉さん。つい買ってしまった程、いつも飲んでいるコーンスープって、どんな飲み物なんたろうと

〇公園の入り口
南「お姉さん、僕もコーンスープは好きだよ。ありがとう」

〇公園の入り口
  お姉さんは、コーンスープを僕に渡すと、自転車に乗って、すぐにその場から去って行った

〇公園の入り口
  僕はすぐにカシュッと缶を開け、クンクンと匂いを嗅いでから、お姉さんを想像しながら口に含んだ

〇ゆめかわ
  シチューを想像していたが、それよりも少し甘く、優しい味。僕はお姉さんの思い出と共に、コーンスープが好きになった。

〇クリーム
  その後しばらくして、トウモロコシとコーンが同じものだと知ったが、粒だけのトウモロコシは、食べれないままだった。

〇黄緑(ライト)
  コーンスープにも粒は入っていたが、お姉さんに対する思いが、それを特別なものにした。僕は年上の女性に憧れるようになった

〇学校の校舎
  高校に進学し16歳になると、すぐにアルバイトを探した。お金も欲しかったが、年上の女性と恋をするために

〇ファストフード店
  僕はハンバーガーを売ってるお店で働くことになった。そこでは、年上の綺麗なお姉さんも働いていたが、彼氏のいる人が多かった

〇ファストフード店
  彼氏はいても、年上のお姉さんとの会話は楽しかった。何より異姓として、先輩として、学ぶ事が沢山あり、毎日が勉強となった

〇ファストフード店
  一年が過ぎた頃、一つ年下の女性がアルバイトに加わった。名前はハルメ。二番目に年が若い僕が、仕事を教える事になった

〇ファストフード店
  ハルメはとにかく一生懸命だった。僕の言う事はメモをとり、すぐに戦力となった。とは言え高校一年生、勉強の心配を度々していた

〇ファストフード店
  いつからか僕は、勉強の相談にも乗るようになった。よく仕事終わりにファミリーレストラン寄って、勉強を教えていた

〇テーブル席
  勉強を学ぶハルメは、パクパクとエサを食べるヒナ鳥のように、可愛らしく、知識を吸収していった

〇テーブル席
  ある時不意に質問を受けた

〇テーブル席
ハルメ「南先輩トウモロコシは食べないのに、コーンスープは飲むんですね。何か違いってあるんですか?」

〇テーブル席
  僕は特に隠す事なく、トウモロコシが食べれない理由、コーンスープが飲める理由を伝えた

〇テーブル席
  するとハルメは、急にトウモロコシを食べるよう勧めてきた

〇テーブル席
ハルメ「南先輩、甘くて美味しいですよ。いっそ食べちゃいましょう」

〇テーブル席
  僕は何度も食べたくないと伝えたが、ハルメは何故か真剣に迫ってきた。そしてそんなやりとりを、何度か繰り返した

〇テーブル席
  ふと気がつくと、ハルメは泣いていた。僕はガサツに、「何で?」と聴いてしまった

〇テーブル席
ハルメ「南先輩は、知らない女の人からもらったコーンスープは飲めて、私が勧めたトウモロコシはまったく食べない。それって悔しいよ」

〇テーブル席
  泣いているハルメが、子供の頃一緒に泣いた、トウモロコシの粒達と重なった

〇テーブル席
南「ゴメン」

〇テーブル席
  僕はコーンを食べ、何度も謝り、格好悪く動揺しながらも、とにかく仲直りをしたいと思い、必死になった

〇テーブル席
  その後、ダメ出しを言いながらも、少しずつ笑顔を見せるハルメに、僕はようやくホッとした

〇結婚式場のレストラン
  数年後、友人がスピーチでその事をのろけ話にしたものだから、僕達は二人で照れてしまい、それがまた会場の笑いを誘ってしまった

コメント

  • 子供の頃、理由もなく食べれないものってありましたよね。
    これだけ食べれない理由があったとしても、それ以上にハルメさんとの関係が大事になったってことなんですね。
    とうもろこしのように甘い甘いお話しでした。

  • 『トウモロコシを食べて』っていうのは『私の事すきになって!』というはるめちゃんなりの告白だったんですね。人の食べ物の好みって、想像もつかない所から変わるんですよね。すごい愛を感じました。

  • ハルメちゃんの涙をみて、トウモロコシを食べられたということで、主人公がハルメちゃんをどのくらい大切に想っていたかがよく伝わってきました。この日の想い出は、結婚式だけでなく、将来子どもができて孫ができても、一生涯語り続けられるほっこりエピソードになりましたね。

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